第五話 ロゼと女王
いつも通りの朝の事。
ロゼは朝から会議があるらしく、美空が起きた頃にはいなかった。朝食を作っているイヴから、野菜を買うように頼まれた美空は、近くの八百屋にいた。
「よいしょ……。以外と重い……」
袋の中の野菜が思いの外重い。左右にふらふらとふらつきながら、美空は歩く。
「ミソラ、大丈夫?」
たまたま、ロゼが近くを通った。
「大丈夫……じゃない、かも……」
腕が震え、限界が近い美空だったが、力尽きて袋を落とす。袋から飛び出した、リンゴが数個ほど散らばりながら、転がる。
「あれって……まさか?」
リンゴが転がっていく先に立っていた少女を見て、ロゼが何かを呟く。
ころころと転がるリンゴを、その少女がすべて取る。紫がかった青色のロングヘアーに、白を貴重としたドレス姿の同じ年齢か年下に見える少女は、早足でこちらに向かってくる。
「これはこれは女王様……。こんなところでお会いするとは……」
……女王様!?
「うん?なんだ、ロゼか。そこまで緊張する必要はないのだぞ?」
「あ、いえ、まさかここにいらっしゃるとは思わなくて……」
いつも通りの口調になるところだった。危ない、危ない。とロゼは慌てていた。
そんなロゼを見て、はぁ、とため息をつく少女。
「ところで、そちらは?」
なぜか少々、恐ろしい顔をしているような気がした。
「あ、青木美空です。少し前にラグニクス騎士団に入隊しました」
「ただいま、イヴ」
「お帰りなさい、兄さ……え!?」
ロゼの言葉を聞いて、ドタドタと玄関にやって来たイヴだったが、紫がかった青色のロングヘアーの白を貴重としたドレス姿の少女を見て、慌て出す。
「いきなり、大声をあげるな。驚くではないか」
「いや、でもいきなり家にリトニス様が来たら驚きますよ!?」
状況が把握しきれないイヴに昼食を食べながら事情を説明し、一旦落ち着いたイヴとロゼ。
「次期王女として選ばれた時以来か、この家に来るのは」
「そうだと思うけど」
「ここだと気楽に話せていいね」
「そうだな。他の場所だと、周りを気にしないといけないからな」
家に来てからはずっと、ロゼはタメ口で女王と気軽に話している。
「二人は、どんな関係ですか」
王女相手におどおどする美空。
「僕とリトニスは幼馴染みだよ」
「女王様と幼馴染み……なんだ」
美空が今まで生きてきた中で一度も見たことない関係だった。
「一応、名乗っておこう。私はリトニス・ラグニクス。この国の女王だ」
「リトニスは『予言』の力を持ってる」
リトニスは名乗ったあとすぐに時計を見た。ロゼは一言だけ付け加えた。
「そろそろ、戻らないとな。他の者が心配するだろうし」
「送ろうか?」
「すまないな。私一人では大変なことになりそうだ」
そういう会話をしながら二人は玄関を出た。
ロゼとリトニスは豪華な椅子が並ぶ王室についた。
「なぁ、ロゼ。何か感じたか?」
不安そうな表情を浮かべるリトニスはロゼに尋ねた。
「聞き取れる範囲内に、何か大きな足音が一つ聞けたくらいですよ」
なるほど、と呟き、顎にてを当てる。
「明日、緊急で会議を開く。ロゼ、そのときにイヴも連れてきてくれ」
「了解です」
そう言って
ロゼは、王室から出た。