第二話 能力と仕事
美空の入団が決まった次の日。とある武器保管庫にて。
「この中で使えるものある?」
机にならんだ武器。左から刀、ライフル、短剣が置かれている。
「この中にはないけど……」
「え?」
ロゼは動揺する。この中に無いとなると話にならない。
「……弓……ある?」
「弓……ねぇ……。ああ、確かあったと思う」
と言ってロゼは、倉庫の武器を見て回る。
「あったよ、弓」
ロゼが見つけた弓は白色だが、他の武器より目立っていた。
「ところで、何で弓なの?」
「六年くらい使い続けてたから。動かない的相手だけど」
少し期待の表情を浮かべるロゼ。
「じゃあ、ちょっとしたテストをしようかな」
「テスト?」
「その武器がミソラに適正かどうか調べるためだよ」
倉庫から移動し、訓練施設に来た二人。
「さて……ミソラ。今から出てくる的をその弓で打ち落としてみて」
「合格点とかあるの?」
「的に当たるかどうかで変わるよ」
「分かった」
ロゼはイヴに指示をだし、美空は弓を構える。
勢いよく出てきた的に狙いを定める。
───速い。
四方八方に高速で動く的。失敗しないように、集中する。目で軌道を読み、弓を引く。そして、的の動きを感覚つかみ、矢を放つ。
放たれた矢は、見事に的の真ん中を撃ち抜いた。
「やった!」
美空は思わず小さなガッツポーズをする。
「おお……!」
ロゼは驚いていた。上の方で機械を動かしていたイヴも同じ反応をしていた。
「すごいね。まさか、あの速度で当てれるとは」
「動きが見えたと言うか……なんと言うか……」
無我夢中になっていた美空は、言葉を失う。
「ともあれ、合格だよミソラ」
微笑みながら、ロゼが言う。
「おめでとうございます美空さん」
ぱちぱちと、手を叩きながら、ロゼの横まで歩み寄るイヴ。
「さてミソラ、早速だけど仕事だよ」
美空は、首をかしげる。
「少し遠くで何かあったみたいだよ」
武器保管庫から少し離れた街で、事件が起きていた。
ナイフを持った男が人質を連れて、家に立てこもったようだ。
「困ったね。僕が近づいたら刺激しちゃうだろうし」
「どうします?近づかずに捕まえるのは難しいですよ」
少し三人は考える。ロゼとイヴは同時に、そうだと呟く。
「ミソラ。足を狙って」
ロゼに言われ、慌てて弓を構える。今回の標的は、あまり動かないため狙いやすく、当てやすい。ただし姿勢が低くて、弓が引きずらい。
深呼吸をして呼吸を整えた美空は、弓を引き絞り、男の足に狙いを定める。その作業はゆっくりと静かに行った。
ある程度矢の先が狙い通りの位置に来たら、矢を放つ。
放たれた矢は、風を切り男の足に見事に命中。男はバランスを崩し、その場で膝をつく。
「大人しくついてきてくれるよね?」
いつの間にか、男の前に立ったイヴ(恐らくリブ)は、笑みを浮かべ、低い声で、言い放つ。
「お手柄だね~。ミソラ。君がいなかったらどうしようかと思ったけど」
ロゼは笑顔で、楽しそうに言う。
「そう……かな?」
「失敗しないか心配だったけどね」
と言ったロゼに美空は自分が、弓を使ったことがあると改めて説明した。流鏑馬のことや、弓道部だったときの成績などを今度は詳しく説明した。