ミル
俺は仰向けに倒れた。開始5秒で。いや、魔法ってせこくない?氷だよね氷。地面が気づいたら氷になってるとかどこのファンタジーだよせこくね?そりゃ転ぶわ。と、言うわけで簡単に負けました。はい。あんな事言ったのにこんな簡単に負けてかっこ悪いな。
「まぁ、最初はこんなもんだろう。魔法の存在、分かっただろ?」と松平先生は言った。1つ疑問が浮かんだ。
「魔法、俺も使えますか?」
「調べてみるか。この剣でも、お前には重いみたいだしな」
こうして、剣はお前には無理だなという判断になり、魔法に手段がうつることとなった。
そりゃ剣なんて運動して無い人には持つので精一杯だよ。まったく…筋トレ今度からしよ。
「魔法、使えるか調べるか」と松平先生は言い、俺を赤い扉の前に立たせた。この中には精霊がいるらしく、魔法が使えるかどうかなど、様々な事を教えてくれるらしい。精霊とかファンタジーかよマジで。1人で行ってこいということなので、行くことにした。扉を開けた瞬間、白色の光に包まれた。
「あなた、新顔ね。弱そうねとても。」と手のひらサイズの妖精は言った。いきなりディスったなこのやろう。
「事実を言っただけよ。心がよめるから変な事考えないでね」 マジかよ。心読んでるだろとか昔やったな。通り過ぎる人に向かって心読めてるの知ってるんだぜってひたすら言ってくの楽しかったな。てことで、妖精よ。心読めてるの知ってるんだぜ?
「言ったからね。頭の中まで弱そうよとても。それと私の名前は妖精じゃなくて、ミルよ」いや、名前聞いてないし…
「今初めてあなたに言ったもの」
「で、魔法はあなた、あまり使えないわ」
唐突に言われた。やる気になったのに適正職業無し。剣士も魔法士も…これ詰みじゃね?
「あなた、小さなサイズのナイフなら使えるのじゃないかしら。いつも使っているでしょ?」 確かに…料理する時に…ってまじか。料理に使う包丁で、怪物も料理してやるぜってつまんな。
「あなた、本当に頭の中、空なのね」 酷い。ここまで言うなんて。
「あなた。この世界に立ち向かう気があるなら。ナイフを何本か持っておきなさい。魔法はそのうち使えるようになるわ」 そうなのか。ありがとうミル。
「気にしなくていいわ。あなたはまだ、戦っちゃダメよ。毎日、強くなるために努力する事。そして、戦わなくちゃいけなくなるまで、ナイフを振っちゃダメよ。料理以外にね。」 あぁ、分かった。努力する。頑張る。ここに、また来ても良いかな?
「いつでも良いわよ。好きにしなさい」
ありがとうミル。また来るよ。
ミルは白い光の世界でこう呟いた。
「大宮…あの人の息子なのね。息子を残してあなたは……だからダメだって言ったのに…」
扉を閉めて、俺は今日から努力をしようと考えていた。そうしたら、後ろから声をかけられた。
「ここまで来たんだね。和」
笑顔が似合う少女、冬島 遙が立っていた。