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1.始まりの7月9日

 目を覚ますと、時計は午前6時を表示していた。起きる時間がいつもより早い。早く目を覚ました割には、目はさえていて、すっきりとした目覚めだ。カレンダーに目を移した。今日は7月9日月曜日。1週間の始まりの日。憂鬱すぎる。

 学校になんか行きたくはないけれど、いかないことにはどうにもならない。俺は、ゆっくりとベッドから起き上がり、伸びをした。

「雄介?起きたの?」

 俺が支度を始めた音に気づいて、母が声をかけてきた。

「起きてるよ」

「今日は早いのね。じゃあ美鈴ちゃん待たせないように早く行きなさいよ」

「はいはい」

 俺は、幼馴染の美鈴と今でも一緒に学校に行っている。きっと、美鈴は俺がサボらないように見張っているのだと思う。そんなことしなくてもサボったりしないけどな。

 リビングに行くと、朝ごはんが用意されていた。今日は食パンに目玉焼き、洋食メニューだった。いつもは和食が多いので、洋食は珍しい。こういう時は、たいてい母は朝早く出かけるときだったりする。母の動きを見ていると、バタバタと家事をこなしているのでおそらくどこかに出かけるのであろう。

 そんなことを考えながら支度をしていると、家を出る時間になっていた。

「いってきまーす」

「気をつけてね。最近、轢き逃げ事件とか多いから」

「はいはい、お母さんも出かけるなら気を付けてね」

「あら、珍しい」

 轢き逃げ事件か。確かに最近多い。こんな普通の住宅地でもこの1週間の内に2件ほど起きた。共に犯人は捕まっていない。警察は連続轢き逃げ事件としてみているようだ。連続轢き逃げ事件ってなんだろう。そんなもの聞いたことがない。

「少し気をつけるか」

 車道をなんとなく見ながら歩いていると、正面から迫ってくる真っ黒い影にぶつかりそうになった。

「うわっ、なんだ、美鈴か」

「わっ、なんだ、雄介か」

 真っ黒い影の正体は美鈴だった。

「何だとは何だ」

「それはこっちの台詞よ。それにしても今日は早いね。どうしたの?」

 美鈴が不思議そうな顔をして俺のことを見る。

「早起きしただけだよ」

「ふ~ん。めっずらしい~」

「俺だって早起きくらいするからな!」

 俺がそう叫ぶと、美鈴は耳に手を当て『うるさい』というジェスチャーをした。そして、そのジェスチャーを止め、ケラケラ笑いながら、俺の前を歩いていった。美鈴は楽しそうに歩いている。月曜日だというのに陽気な奴だ。

 朝、母に轢き逃げ事件のことを言われたせいか無意識に車道ばかり見てしまう。今日は妙に交通量が少ない気がする。いつもより時間が早いからだろうか。

「早く~」

「お前歩くの早くないか?」

 気づくと美鈴は、横断歩道の向こう側で手を振りながら呼んでいる。信号は青。周りに車がいる様子も無いので、俺は道路を渡る。

「雄介!危ない!」

 俺が道路を半分くらい渡ったところで美鈴が叫んだ。何が危ないのか分からず、ふっと横を見た。そこには、猛スピードで俺に向かってくるトラックがいた。運転手の姿は見えない。

「どういうことだよ…」

 突然のことに俺の体は少しも動かない。目の前にトラックが迫り、トラックの近すぎる距離のせいで視界が闇に包まれる。

 ポーンっとボールが弾け飛ぶように、俺は飛ばされた。

 人間って、こんなに飛ぶのか…。

 なんてことを、俺は最後に思った。

 落下に身を任せていると、ついに、地面が目の前に迫ってきた。

 ガンッと鈍い音が脳内に響いた。

 そして、痛みを感じる前に俺の意識は暗闇の中に消えた。


                            GAME OVER


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