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英雄と戦犯は紙一重  作者: DISHONORED
第二章-ロスガ再興-
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#29 ロスガの復興I

「トランス!!」


凌雅のたった一言で、崩れていた石畳の街道は帝国のようなアスファルトで舗装された街道へとビフォーアフターする。


その光景を好奇なまなざしで見ている住人。


「この光景はいつ見ても慣れないな」


「次はどこを直してほしい?」


「あ、ああ。ロスガのゴミや、排せつ物を流す下水道を道路の端に整備してほしい」


凌雅の隣で東ロスガの整備を指示するのは、ロスガを支配する組織≪無法金有≫のボスであるガルトマン・スパルナ。


「了解!!」


再びトランスと唱え、地面に手をつく凌雅。


街道の端にはきれいな溝が一直線に出来上がり、山岳から流れる川の水が、水を伝ってロスガ全体を潤していく。


「とりあえず、形上だけのロスガの復興は終わったな」


「ああ」


ガルトマンと共にロスガを守ると誓った凌雅はガルトマンと共に、ロスガ全体のインフラ整備を始めた。


「トランス!!」


凌雅の一言で崩れかけた街道は地球のようなアスファルトの真っ平らな道路へ。


「この荒れた農地はどうすればいい?」


「この農業用水は現在使われていないから、ロスガ全体に回してくれ」


「わかった。トランス!!」


今となっては使われなくなった農地への農業用水をロスガへ流すための上下水道の整備。


「このボロ小屋も直してやろう」


「ロスガの戦禍を残しておくにはいいんだがな…」


「見栄えはいいほうがいいだろう。ディダックが、ロスガが復興したって言いふらしてるんだからな。トランス!!」


ディダックがロスガに人を集めるため、かつてロスガから離散した周辺住民を再び集めようとしている。


なら、中心となる建物は見栄えがいいほうがいいだろう。


≪無法金有≫改め、ロスガ新政庁府の庁舎の新築。


「ここらへんのゴミはいらないな?」


「ああ。存分に片づけてくれ」


「トランス!!!」


瓦礫、無人の住居の撤去。


そして、撤去してあいた土地には…


「トランス!!!!」


浮浪者の住居、薬物中毒者の病棟。


そして軍事基地。


「さ、沙耶さん…こ、こうかしら?」


フィリアが難しい顔で沙耶を見つめる。


「ちがうわ。肩に銃床を当てて、照星と目的を合わせるの」


“パパパパパ”


乾いた連続射撃音がそこから聞こえてくる。


≪無法金有≫の構成員改め、ロスガ新政庁府軍の近代化指導。

ここは、軍隊として専門的な知識を学んだ沙耶の適任だろう。


本人は戦場において、魔法で暴れただけだがな。


まあ、治すべきところは、数え上げるとキリがない。


1週間程で、ある程度の問題は解決したが、解決していないことは多々ある。


前回のレコンキスタから今までの5年間で都市人口の極端な減少を始めた。


人口の回復は俺の魔法でどうにかなるようなものではない。

人口の減少は軍人の減少、経済力の減少、労働力の減少、都市においてはデメリットでしかない。


「こうも短時間に復興が進むとは…お前たちとはもっと早く出会いたかった」


初めて顔を合わした時は、手を握って協力し合う関係になるなんて思いもしなかった。


今となってはガルトマンにとって凌雅と沙耶は無くてはならない存在だ。


「この都市は、さまざまな病に侵されている。麻薬、疫病、戦災、そして人々の心にある絶望だ。お前たちは病に侵された都市への特効薬だ」


「まあ、どんな例えでもいい。だが、一つだけ言えることは、この都市の住人は早く自立することだな。俺ばかりに頼らずに…」


あくまで、俺ができるのは手助けだ。

金を与えるわけでもなければ、作物を渡すわけでも、商品を作り出すわけでもない。


この都市で働くことのできる、戦うことのできる環境を整える。


そして、俺たちを襲うであろう神教の西バルティカ連合帝国の軍との戦い。略してユニオン軍とでも呼ぶべきであろうか。


おそらく、俺たちがいるということがばれたのならあの規格外の化け物、地上代行者を惜しみなく投入してくるに違いない。


それまでには大戦力を整えておかなければ…


「ああ。勿論だ。恥を忍んで、インフェリア列島国にも軍隊の派遣を要請した」


フィリアは異聖人発見の報告と最低でもエルフ族の軍隊の派遣要請をしに護衛として沙耶をお供に故郷へと戻った。


「次は何をするべきだ?」


「そうだな」


ガルトマンは、ユニオン軍が攻めてくるであろう東ロスガの崩れた城壁のほうに目を向ける。


「この都市の防御力の向上だ」


「了解した」


凌雅とガルトマンは東ロスガの城壁へと向かい歩いていく。


並んで歩くガルトマンは俺と沙耶を崇拝まではいかずとも尊敬と感謝の念を持っている。


だが、俺も同じだ。


俺の忘れた物を呼び起こさせてくれた。

俺の夢でしかなかったものを目標にしてくれた。


俺は、このロスガを救い、この世界の歴史に名を残そう。


俺は―――――


―――――英雄になる。


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