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英雄と戦犯は紙一重  作者: DISHONORED
第一章-西バルティカ編-
14/32

#13 VSバルトロマイII

前話を編集しました。先にもう一度前話を読み直してもらえれば嬉しいです。

「ひぎゃあああああああ!!」


頭がキンキンと痛くなるような奇声をあげるのは、先程まで地上代行者という肩書きを思うのまま振るっていた男バルトロマイ。


今となっては右腕の半分が消えて、無様に地をのたうちまわっている。


さしずめ隻腕のバルトロマイとでも言っておこうか。


「き、ききき、貴様何をした!?」


「お前があらゆるものを浄化できるのなら、俺はあらゆるものを分解することができる」


手足を自由に扱うかのように体中から暗黒物質をうにょうにょと放出させる凌雅の姿は、メデューサの親戚か何かを彷彿させる。


その禍々しさと、自分の腕が消え去った現実に直面して、バルトロマイは石のように固まった。


「そして、再構成もできる」


凌雅の右腕に握られた一本の腕。


「ぼ、僕の腕ええええ!!」


「返さねえよ」


シュウウウゥゥ


砂が風になびかれて飛んでいくように、バルトロマイの腕もサラサラと消えていった。


解析(アナリス)――――ある物質を暗黒物質を用いて分解・再構成を行って構成要素を調べる作業だ。


だが、コイツの腕など再構成する必要もないだろう。


分解するだけで十分だ。


「ただ、貴様の無敵の盾とやらが厄介だったがな」


「そのためだけに毒ガス放出したの?」


すでにガスマスクを外してある沙耶がいつもどおりの変わらない声で聞いてきた。


「いや、毒ガスで死んでくれればそれで十分。これはあくまでスペア作戦だけど」


「動きを止めて欲しければ私の重力で止めたのに」


「いや、お前のアレは克服されただろう。とまあ、首絞められるは予想外だった。でも、そのおかげで、俺とバルトロマイの間に無敵の盾という障壁が無くなった」


とは言え、俺にしては珍しく博打を打ったことに変わりはない。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


「あれだけ血を流してまだ立つか」


消え去った右腕からは今もなお大量の血が噴き出している。腕の真ん中には骨が見え、血と肉が普通の人間と変わらずにあることがわかる。


「―――――治癒(ヒール)!!」


バルトロマイはそんな自分の右腕に治癒術を施す。


とは言え、


「傷口を塞ぐだけか・・・」


いくら神と人間の中間種と言ったところで、ベースは人間。無くなった腕を戻すことは不可能か。


「貴様ら異聖人は僕が必ず潰す。地の果てまで、追いかけてやる」


フラフラとおぼつかない足で歩き出したバルトロマイは置き土産としての遅い宣戦布告をしていくと倒れるように空へと飛び立っていった。


「大した相手でもなかったな」


「いや、それはバルトロマイが貴殿たちに対して無知なだけだった。だが、次は最初から本気でかかってくるぞ」


「そうね。私たちのことを甘く見ていたから、まともな攻撃を彼は仕掛けてきていない」


沙耶の言葉にバルトロマイとの戦闘を振り返る。


「・・・あいつの攻撃は二回だけだ」


それに比べて俺たちは何度攻撃したかわからない。

そしてそのほとんどが無力化された。


「悔しいが・・・今回はまぐれ勝ちに近いな」


空からの急降下攻撃と、俺に対する絞首。たった二つ。


「ああ。おそらく、貴殿たちはこの西バルティカ連合帝国で逃亡生活を送る羽目になるだろう」


「まじかよ」


「せっかく安定できると思ったのに」


はぁ、と仲良くため息をつく二人。

そして、少し難しい顔のアルフレート・シュクラバル。


「それは、すまない。殿下だけでなく、我らの命までも救ってくれた恩人に対し、何もできない自分が不甲斐ない」


なんと声をかければいいやら。


「だが、貴殿らを脱出させる準備ぐらいは整えたぞ」


「脱出?」


「ああ。ここから、遥か西、バルティカ大陸最西端に亜人の国“インフェリア劣島国(れっとうこく)”という国がある」


「亜人にも国はあったのね」


沙耶がさりげなく亜人を馬鹿にしたが、そこはあえてスルー。


「旧カスティリア王国現西バルティカ連合帝国とインフェリア劣島国の国境沿いにあるロスガという山岳都市に我の知人がいる。そこなら、死刑囚だろうと異聖人だろうと受け入れてくれるはずだ」


「成程。で、そこまで行くのに陸路を使えとは言わんだろうな?」


バルグラードの特別な市場を見せてもらった時、アルフレート将軍に渡された地図にはカスティリアという国はバルティカ大陸のほぼ最西端に位置していた。


イベリア半島みたいな形の地形だったが、4つほどの国をまたがないと、俺たちはインフェリア劣島国行くことができない。


それまでに俺たちは何度襲われなければならないのだ?


「安心してくれ。ガルツィの港に貿易船が停泊してある。バルバロス帝国の都市バルダス行きだが、そこで、インフェリア劣島国の港湾都市レスティア行きの船に乗り換えられる」


「で、レスティアからは、徒歩なの?」


「ああ。おそらく、一週間ぐらいは」


アルフレート将軍は難しい顔をして答えた。


「長いな。まあ贅沢は言ってられないか。恩に着る!!」


凌雅と沙耶はアルフレート将軍に案内されて、ガルツィ港に向かった。


*2014年9/28 インフェリア共和国→インフェリア劣島国

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