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英雄と戦犯は紙一重  作者: DISHONORED
第一章-西バルティカ編-
12/32

#11 地上代行者

神法――――――

それは神に使える神官のみ扱うことができる法術。基本治癒(ヒール)浄化(パージ)加護(プロヴィデンス)強化(レインフォース)の4つ。この一つ一つが、さらに何個にも分類される。


伝統派(トラディスタント)革命派(レジスタント)北方正教派(ノースドックス)、宗派は違えど同じ唯一絶対である“神”を崇める神教すべての宗派共通である。


「いや、実に素晴らしい。これだけの神法を使える君は正しく神に見初められているよ」


アキレウス117世は教皇らしい聖職者の服装をしているが、その重そうな服からでもわかる肉体に、少女は違和感を感じた。


そして、なによりその内に秘めた野望と、果てなく、尽きることのない野心で輝いた目はたとえ口に出さずとも、少女には読み取れた。


この男神教教皇アキレウス117世は聖職者ではなく、皇としての器を。

宗教だけの皇ではない。この世界を統べる皇として器を。


「君は異聖人を知っているか?」


「神教を3つに分裂させた者。神教に禍をもたらす悪魔です」


ご名答。アキレウス117世は少し間を空けて、再び少女に語りかけた。


「異聖人。それも二人。東のブカレスト王国に出現した」


「!!」


普段無口であまり表情に感情を出さない少女が目を丸くして驚いた。

それほどまでに異聖人は神教に禍をもたらすという印象が強いのである。


「あぁ、これから長い戦いが始まる。その前兆なのだろうな」


「長い戦い?」


少女は首をかしげた。


「どちらが倒れるまで、互の正義を掲げて戦う時代だ。我が国から東方の位置にあるラウレノヴァ合州国。君は知っているかな?」


「少し・・・は」


「―――――自由!!平等!!博愛!!」


アキレウス117世は突然声高らかに叫んだ。


「彼らの謳う得意な言葉だ。そして南のバルバロス帝国。彼らもまた、平等を謳い、階級社会を破壊しようと試みている。彼らはその主義・思想で、神教国家に対し思想的侵略を繰り返している。我々西バルティカは神教国家として統一され、ラウレノヴァ合州国と雌雄を決する時が来た!!」


拳を握りしめた彼は堂々たる姿で拳を振り上げ、宣言した。


「我が神教の下、西バルティカ諸国による、西バルティカ連合帝国(ユニオン)の建国を宣言した」


「に、西バルティカ連合帝国(ユニオン)・・・」


神教世界の皇アキレウス117世。

その彼の西バルティカに対する影響力は果てしない。


一国の王よりも、彼の方がその国での影響力があると言われるほど。


その彼アキレウス117世のこの言葉は、争いに明け暮れていた西バルティカを統一させる影響力がある。


「我が国には戦力が必要だ。これほどまでの実力の君なら、この奥の秘境に入ってみるのも、神の御導きだ」


「この奥の秘境・・・ま、まさか!?」


アキレウス117世が奥指差す扉の向こう。


神教の聖地であるナポリ。だが、本当の聖地はナポリにあるハギア・アキレウス大聖堂の中にある庭園


「エデンの園だ」


少女は喉をゴクリと鳴らし、今自分が直面した状況に震えた。


「エデンの園。エデンズ・マテリアルが・・・地上代行者になるためのものが、こ、ここにある。のですね」


少女は扉をそっと触れた。


「少女よ。このまま優秀な神官で終わるか、それとも、これから起こる長い大戦争の英雄になる“地上代行者”として生まれ変わるか。どちらを選ぶか?」


「私は――――――」


そして扉は開かれた。


「ふ、ふふふ、フハハハハ。今を持って汝の名はシエナ。11人目の地上代行者よ」







―――――――――ブカレスト王国ガルツィ

「大変だ!!」


「「ん?」」


突然部屋に飛び込んできたアルフレート将軍を見る二人。


「し、神教の教皇が西バルティカ諸国を統一させる西バルティカ連合帝国(ユニオン)を発足させた」


「に、西なんだそりゃ?」


「神聖ローマ帝国みたいなものじゃないの?」


成程。沙耶の補足で納得した凌雅はアルフレート将軍の話の続きを聞く。


「そして、神教教皇、いや、西バルティカ連合帝国(ユニオン)の皇帝がブカレスト王国に二人の異聖人がいるとし、貴殿ら二人に異聖人認定と莫大な懸賞金をかけた」


「「なんで?」」


異星人って、レジスタントを発足させた人だろ?なんで俺たちが懸賞金かけられるのか、まったくもって理解できない。


「神教伝統派からしたら、異聖人は神教を分裂させた神教に禍をもたらす悪魔とされている。恩人である貴殿らには申し訳ないが、即刻我が国から出たほうが安全であろう」


「安全?」


「俺らに喧嘩売って勝てる奴いるとでも?」


ハッハッハと笑う凌雅に一言、アルフレート将軍は言った。


「地上代行者はそなたたちでも勝てる相手ではない」


「地上代行者?」


「ああ。神に変わってこの地上で神の力の片鱗を振るう者。貴殿らの実力はそれなりに理解したつもりだ。だが、おそらくは勝てないだろう」


「聞き捨てならない言葉だな」


「ええ。人間核兵器呼ばわりされた私に勝てる相手なんているのかしら?」


「確かに貴殿達の手品は恐ろしいものだ。だが、貴殿らと地上代行者には確固たる壁がある!!貴殿らには死なれて欲しくない!!だから――――――」


アルフレート将軍の言葉は遮られた。


壁を破壊する轟音。吹き込む風。そして、一人の男。


背中に生えた白い翼。そして太陽の光ですら消えさせるほどの眩しい光。

男なのか、女なのか、判断しかねる中性的な顔に長く伸びた黒い髪。


「アルフレート将軍。それは、つまり、西バルティカ連合帝国(ユニオン)に対する反抗―――――と見ていいかな?」


「6人目の地上代行者―――――――バルトロマイ!!」


そこには天使が立っていた。


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