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現実…恋…  作者: 奏眼
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序章


貴方が流す涙なら

あたしが流すわ。


だから、

ずっと一緒よ?




あたしは

昔、になってしまうのだろうか。

日にちにすればまだ満たないが過去に彼にこう言った事があった。



彼は笑って

当たり前だ、と言った。



あぁ

これは夢だ。



この夢が何回も何回も繰り返される。




気がおかしくなりそう。



夢だって解りつつも、夢の貴方に甘える。



枕を濡らして

朝に持ち帰る。


あたしはそれを涙だと認めない。




ほら、

今日もまた始まる。



通わなきゃ、

起きなきゃ、


学校に。




―――……


気が付けば授業、

いつも同じように繰り返される。


今日もぼーっとしていた。



もし、

あたしがあと二年早く産まれてたらどうだったのか。


あなたは今だに

あたしを好きでいてくれてるのか。



勉強以外に考える事なら沢山、山ほどある。


















彼とは二歳違いで出会った。


そもそも此処から間違いだったのだろうか、



あたしは高校一年生

彼は高校三年生



部活は同じ軽音部



彼はあたしの歌を

人声聞いて誉めてくれた。

綺麗だと言って笑った。



逆にあたしは彼の歌声が大好きで、いつまでも聞いていたかった。



歌にもギターにも夢中になった。


彼はあたしが上達する度に頭を撫でて誉めて、

これからも頑張ろう

応援するから、

と言った。




まだ恋人じゃないあたしたちが電話を何時間もするなんて尋常じゃなかったのか。



けど関係がどうのじゃないこと、分かってた。


自然と引き合っていたなんて、

二人共心の隅に感じていた。



ある時あなたは

ギターを練習していたあたしに言った。




――結婚してほしい




高校生の約束。




あたしは本気かと天邪鬼に笑って返した。



彼は少し切なそうに


駄目かな?


と聞いた。



―駄目な訳ないです




彼はあたしを抱き締め

ありがとうと言った。


苦しいくらいに力がこもっていた。




―…一生俺に守らせてください




あたしは半泣きの目を固く閉じた。






それからの日々は

今まで曇っていたのが嘘の様に晴れて、

どれもこれも素晴らしく感じた。



苦手だった早起きも好きになって、

早く学校に着けばあなたはあたしの教室で待っていてくれた。


ギター弾いて、

解らない所を丁寧に教えて貰ってあたし自身、上達していった。



音楽が好きで、

どんどんのめりこんでいった。



誉めてくれたあの優しさが


あたしには堪らなく嬉しかった。




ある日

暗くなった道を手を繋いで帰っていた。


それさえが嬉しくて、

この日々の情景が嬉しくて

あたしは笑ってばっかりだった。



あなたは聞いた。



―良いことでもあった?



あたしは隠して笑った。

あなたの前なら笑うことに屈託は無い。



あなたは

顔に出るから嘘は向いてないなと言った。



そうして

そんな訳ないとうつ向くあたしの顔を手で支え直して、

あたしたちは初めてのキスをした。



優しい優しいキスだった。



あたしが彼の顔を見ながらぽーっとしていると彼は慌てたように表情を曇らせた。



―嫌だった!?…ごめん



そんな彼が愛しくてあたしはいつも彼がそうするように、頭を撫でた。



―嬉しかったですよ



彼は良かったと照れると、もう一度あたしにキスをした。







毎朝ギターを弾いて、

放課後は一緒に帰った。



その時から彼は

塾だからと早く帰るようにはなっていた。


あたしも合わせた。

少しでも一緒に居たかった。




あたしはあの約束を信じていた。



約束?


結婚の事だ。



バイトをしながら、

接客の合間に未来を見る。


子連れが来れば

いつか来たいな、


カップルが来れば

今度来よう。



あたしの生活の中心は彼で、

生きる元力になっていた。


帰り道が怖いと言えば、

電話をしてくれて

あたしはありがとうと伝えた。




まだ

現実を知らなかった?




あたしは甘えすぎていた?



彼はいつでも優しかった。


いつだか、

彼のバンドの都合で彼が他の女子と食事に行くとあたしに言った時。


本当に辛そうに、

ごめん、と繰り返した。










―――!

気付いたらチャイムは鳴り、授業が終わった仲間が近くまで来ていた。



また、こんな時間に費やしてしまった。



過去を振り返り悔やむ、愛しむだけで一時間なんて凄く早く過ぎる。



ほら、声がかかった、

立たなきゃ。


頑張れ、


誰も痛みは解ってくれないんだから。


あたしは立って、

また教室を後にする。



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