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ピザ

 

 俺たちがこれから住むことになる店舗兼住宅は二階建てで元はパン屋だったそうで石窯付きで一階が店舗で二階が居住スペースとなる。家賃は半年分先払いしたそうだ。このおかげで俺は持ってきたビー玉すべて売り払った。それぞれがお金を出し合ったので皆ほとんど手持ちのお金が無くなった。荷物も大してないが、宿からこれから住む家に引っ越しをする。必要最低限の家具しかないが、これから住む家だ。


「私はここでピザ屋でも開いたらどうかと思うんだ」


 凛が家の中を案内しながら言った。


「ピザなんて作れるの」


 俺は作ったことはないし、作り方も全く知らない。


「作ったことはないけど、料理本に載っていたし、材料は全部市場に売っていたわ。せっかく石窯があるわけだしやってみる価値はあると思う。ほかに何か売りたいものや作りたいものないかしら」


 結局できるのか、よくわからないがやってみる価値はあるだろう。ピザは好きだし、この町は日本の食材とほぼ同じものが売っている。米も売っていたが、パンの方があちこちで売っていた。ピザはこの町では見かけなかったし、生地を作り、具を乗せ、焼くだけだろう。


「僕はピザに賛成です。ついでにトマトソースやケチャップ、マヨネーズとかの調味料も売ってみたらいいと思う」


 そういえば、塩やコショウ、トウガラシといった香辛料は街で見かけたがマヨネーズなどの液体の調味料は見かけなかった。


「でも、マヨネーズはすぐ腐ってしまうのではないのですか」


 そうだ、この世界には保存料などの食品添加物は存在しない。その分健康には良いのだろうが、消費期限は短くなるはずだ。


「じゃあ、冷蔵庫を作って売ったらどうかな。電気冷蔵庫は無理でも、氷で中のものを冷やす木製冷蔵庫くらいならそれなりのものが作れそうだし、俺は魔法で氷ぐらいならいくらでも作れる」


 一つアイデアが出ればみんないろいろと意見が出てくるようになった。とりあえず、ピザが作れるのかやってみようということで市場に買い物に行くことになった。


          *          *          *


 手分けをし、ピザに必要なものを市場で買い集める。野菜、チーズ、ベーコン、小麦粉、その他もろもろを買い、家に戻ると早速凛と詩乃でピザを作ることになった。俺と平野は料理経験ほぼ無しなので出来上がりを待つ。生地をこね、具を乗せと手際よく凛が調理を進めていく。詩乃は凛の指示に従い、手伝っている。かまどや石窯はガスではなく薪なので火加減に多少手間取りながらもピザを焼いていく。やがて台所からいいにおいが漂ってくる。そうこうしているうちにそれなりに時間がかかったが、ピザが完成した。と言っても俺たちはなにも手伝ってはいないが。さっそく凛がピザを切り分け食べ始める。


「美味い」

「美味しい」

「すげえ」

「美味しいです」


 出来上がったピザはところどころ焦げたりしている部分はあるものの美味い。これなら十分売れる。そう確信をもって俺は次のように言った。


「これならいける。明日から売っていこう」

「そうだね。めちゃくちゃ美味しいよ、これ。凛さんたちすごいね」


 凛はまんざらでもなさそうな顔を浮かべている。

 よし、明日からピザを売って売って売りまくるぞ。そう気合を入れつつ、ピザを食べた俺と平野はせめて後片付けぐらいはと、台所へ向かった。


          *          *          *


 翌日からピザを店で売り始めた。凛と詩乃は厨房でピザを焼き、俺と平野でピザを売る。ついでに果物から魔法で水分のみを抽出したジュースをこれまた俺が魔法で作った氷で冷やし、合わせて売る。

 これが街で噂となりあっという間にこの町では知らない人がいないというほどの店になった。店の中や、店の前に並べた机では若い人を中心に大勢の人がピザを味わっている。お持ち帰りでピザを買って帰る人もいる。


          *          *          *


 今日は久しぶりの休日だ。たまった金を使おうと街へ出かける。街は相変わらず賑わっている。すると突然腹に痛みを感じた。目をやるとナイフが刺さっている。ナイフは俺の前に立っているフードをかぶり顔を隠している奴が握っていた。刺されたのか。初めての経験で理解がよくできない。痛い。刺されたとわかると急に痛みが戻ってきた。痛い痛い痛い痛い痛い痛い。体に力がうまくかからない。声を上げようとしたが、後ろから別の人に口を塞がれた。やばい立っていられない。ナイフに毒でも塗られていたのだろうか。ろくに抵抗もできないでいると両脇を支えられ、人目のつかない脇道へ連れ込まれた。人目のつかない空き地に連れ込まれ、地面に転がされた。全身に力が入らず、声も上げられない。ズボンのポケットや懐を探られている感触がする。目の前が次第にぼやけ、見えなくなっていく。痛みはすでに感じなくなってきた。金目当てで刺されたのだろう。やばい死ぬわ。これが意識がなくなる最後に感じたことだった。


これでひとまず完結とさせていただきます。あまりわくわくするような展開がなく、魔法を生かせなかったと反省しております。それでも新たな所有者を読んでくださった読者の皆様ありがとうございます。

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