異世界との出会い
ある日、一通のメールが届いた。
メールにはURLだけが書かれていた。あやしい。そう思いながらも、URLのサイトへアクセスした。そこは異世界に関するサイトだった。いくつかの質問もあった。
アンケート
1あなたは神を信じますか? 答 YES
2異世界があると思いますか? 答 YES
3あなたは人間ですか? 答 YES
4未来人異世界人超能力者に出会ったことにありますか? 答 NO
5異世界に行きたいですか? 答 YES
送信っと。個人情報を入力するわけではないので、ついアンケートに答えてしまった。すると突然画面が光りだし、俺は意識を失った。
* * *
気が付くとそこは真っ白で殺風景な空間だった。周りを見回すと、同じように床にたおれている人たちがいた。
しばらくすると突然、神の間へようこそ。わたしは神である。キミたちにはこれから異世界へ行ってもらう。そんな声があたりに響いた。
「どこだ。出てこい」
斜め前あたりにいた、不良風の男が怒鳴った。
「もう一度言う。キミたちにはこれから異世界へ行ってもらう。これは決定事項である。
キミたちはアンケートで異世界へ行くことを選んだ。自分たちで選んだのだ。異議は認めない」
そういえば、さっき異世界へ行きたいと答えた。それがまさかこんなことになるなんて。ほかの人たちも心当たりがあるようで、静寂が訪れた。
「いきなりそんなこと言われても。せめて、何か荷物を持っていくことはできないのですか」
誰かがそういった。
「わかったいいだろう。ほかに質問は?」
またどこかから声がした。
「これから行く世界はどんなところですか?言葉は通じるのですか?」
またほかの誰かが質問した。
「俗に言うファンタジーな世界という世界だ。行けばわかると思うが、魔法ありの世界だ。言葉は通じるように、魔法をかけてやろう」
魔法ありと聞いて数名の人たちが歓喜の声を上げた。
「ほかに質問は? 質問がないならこれで終わる。30分で支度しな。30分後に異世界へ行ってもらう。解散」
* * *
気が付くと俺は部屋に戻っていた。「夢だったのか」思わずそうつぶやいた。もしさっきの出来事が夢じゃなかったら。30分経ったら異世界へ飛ばされるのか?
念のため、荷物を準備するか。30分経って何もなければ夢だったってことだし。そう思い俺は準備を始めた。まあ着替えと食糧、水は基本だよな。あと電卓もあったら便利だよな。読みかけの本や漫画は持っていきたいし、ボールペンもあったら便利だよな。
その他いろいろ荷物をまとめていると、30分はあっという間に過ぎていった。
* * *
瞬きをした次の瞬間、自分の部屋にいたはずの俺は、木々に囲まれた土地に立っていた。俺は空を仰ぎ、周りを見渡し、必死に状況を把握しようとした。
とりあえず、荷物は持ってこれたようだ。体にも特に異常はない。
周りには30分ほど前真っ白な空間にいた人たちが同じように突っ立っていた。
「あー、みんな、せっかくだから自己紹介でもしない?」
「そうね、そうしましょう。みんな、こっちで輪になって座りましょう」
異世界に来て初めてすることは自己紹介に決まった。これからどうするかは、それから考えよう。
「杉山 絵梨華でーす。よろしくー。高校生、いや元高校生でーす」
「僕は大島 裕也です。よろしくお願いします。元高校生16歳です」
「私は森川 四郎。日本では、会社員しておりました。みなさんよろしく」
「白川 千佳です。大学生でした。趣味は読書です。よろしくお願いします」
「古川 詩乃です。中学生でした。あの、よろしくおねがいします」
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順番に自己紹介が終わってゆき、俺の番がやってきた。
「俺は、谷山拓真。日本では高校生でした。よろしくおねがいします」
俺は簡単に自己紹介を終えた。俺の後にも何人か自己紹介をして、全員の自己紹介が一応終わった。若い人では中学生の子もこの世界へやってきていた。
そして、これからどうするかの話題になった。何人かの人は、一人で生きると言ってさっさと出発していった。
俺を含め、これからどうするか決められずとりあえず残った人たちはあたりの捜索を始めた。あたりからは小鳥のさえずりが聞こえ、空には青空が広がっている。木には木の実がなっているものもあるが、見たことがない形をしており、食べられるかどうかはわからない。近くに川が流れているということもなく、水をこれからどうするか問題になりそうだ。
これからどうればいいか考えていると突然悲鳴が聞こえた。声のした方へ行くと確か田中とかいう名前だった男性が銀色の毛をしたオオカミのような獣におそわれていた。
「た、助けてくれー」
俺のほかにも何名かの人たちが悲鳴を聞きつけやってきた。しかしオオカミもどきを見てどうすればいいかわからないようだ。
「逃げろー」
掛け声とともに、破裂音があたりに響いた。誰かが癇癪玉か何かを投げたようだ。オオカミもどきも一瞬だけひるんだ。その隙に田中さんは逃げ出した。俺も逃げ出した。集まってきていた人たちも様々な方向へ逃げて行った。
俺は必死に走った。オオカミと戦うなんてまっぴらごめんだ。魔法を使えば何とかなるかも知らないが、無用な争いは避けるタイプなんだ。
ふと気が付くとオオカミもどきからは逃げ切ったが、みんなとはぐれてしまった。この様子ではほかの人たちもバラバラになってしまったのだろう。
しかしそれでも、しばらく歩き回っていると、自分を含め4人の人と合流できた。
「こんにちは。さっきの騒ぎでみんなとはぐれてしまったんです。すいませんが一緒に行動しませんか」
「別に敬語を使わなくていいですよ。俺は谷山拓真です。俺もさっきの騒ぎでみんなとはぐれてこれからどうするか困っていたんです」
「あ、ごめんなさい私は、清水凛です。よろしくね。そっちの二人も名前教えてもらっていいかな。さっきの自己紹介覚えきれなくて。ちなみに高校三年の受験生でした」
清水凛と名乗ったのはポニーテールの女の子だ。第一印象は明るく活発な女の子といった感じだ。
「年上だったんですか。俺は高2でした。敬語使ったほうがいいですか?」
「気にしないで。そっちの二人も私に敬語使わなくていいから」
次に名乗ったのは、ぽっちゃり系の男だ。
「わかりました。平野です。平野亮太。よろしく拓真、凛さん」
最後は、
「古川詩乃です。中学2年生でした。わたしがこの中では最年少ですね。これからよろしくお願いします」
とショートカットの真面目そうな女の子が言った。
さて、自己紹介が終わったところでこれからどうするかについて話し合った。
「これからどうする?私はこういう異世界トリップとかよく知らないの。誰かこういうのに詳しくない?」
「王道の漫画とかだと、元の世界に戻る方法を探すか、この世界で過ごす方法を探すかだと思う。ちなみに僕は、元の世界へ帰れなくてもいい」
「あれ平野は帰れなくていいの?俺は帰る方法は知りたいけどな。まだこの世界の町がどんなところかにもわからないし。俺はこれからとりあえず町を探す」
「そうね。町を探すのは私も賛成。でも何があるかわからないから、みんなで行きましょ。その前に今みんなが何を待っているか教えて。詩乃ちゃんもそれでいい?」
「はい、わかりました……」
これからどうするかはとりあえず決まった。まずは町を探す。でもその前に荷物の把握だ。
「じゃあ、俺が持ってきた荷物はえーと、着替え一式、おにぎり数個、お茶のペットボトル、水のペットボトル、タオル、電卓、筆記用具、辞書、漫画、本、財布、懐中電灯、腕時計、ビーズ、ビー玉、飴、ルーズリーフ、カッターナイフ、折り畳み傘こんなところだな」
俺はカバンの中を確認しながら答えた。俺の次は凛が持ってきたものをみんなに教えた。
「私は、着替え、軍手、カップ麺、割りばし、マスク、懐中電灯、マッチ、ろうそく、包丁、料理本、化粧品、腕時計、チョコレート、ウェットティッシュ、日焼け止め、歯ブラシ、石鹸、爪切り、その他いろいろ持ってきたわ。詩乃ちゃんは何持ってきたのかな?」
「わたしも、着替えと、カップ麺、水、あと筆記用具、色鉛筆、画用紙、折り紙、腕時計、化粧品などです」
「最後は僕か。着替え、風邪薬、腕時計、懐中電灯、お菓子、水、お茶、十徳ナイフ、双眼鏡、エアガン、缶詰、財布とかですね」
俺、凛、詩乃、亮太の順で荷物の中身を教えあった。
「よしじゃあ質問とかない」
凛がみんなの顔を見渡しながら言った。特にみんな質問はないようだ。そこで、とりあえず町を探すべく歩き始めた。道がないので木々の間を通り進んでゆく。
周りは木、木、木、さっきから同じような風景が続く。たまに木の実がなっている木や、キノコが生えていたりするが、食べられるのかだれにもわからないので、意味がない。
* * *
歩き続けること約1時間、ついに森を抜け、道に出た。と思ったが道には出たが、ここは森ではなく山だったようだ。それも山の中腹あたりか。それでも木に見飽きていた俺は空や、山から見渡せる綺麗な景色に目を奪われた。
「なあそろそろ休憩にしない。このまま道を下って行けば町につけるだろうし」
「そうだね。僕も疲れたよ」
平野も賛成してくれた。少し休憩になった。
「そうだ。この世界って魔法が使えるって神さん言ってなかったっけ。≪わが手に集え。神の炎よ。フレイムキャノン!!≫」
平野が手のひらを前に突出し、中二病的な呪文?を言い放った。当然何も起こらなかったが。
「あっれー、おかしいな。何も起こらないな」
平野は恥ずかしそうに手を下げた。
俺もこの世界で前の世界と同じように使えるのか試してみた。
【火矢】手のひらを前にだし、魔力を込め、そう呟く。すると今までどおり炎が矢の形をしながら発射された。むしろ、こっちの世界の方が魔法が使いやすいぐらいだ。
「た、谷山君。魔法が使えるの。なんで?どうして?」
「あー、実は、元の世界でも魔法は使えたんだ」
驚いたように平野が声をかけてくる。
俺は頬を掻きながら、なぜ魔法を使えるのか簡単に説明した。
「ねえ私も魔法を使えるようになるのかな」
「どうだろう。まあ使えると思うけど、俺の知っている魔法は戦闘用魔法に特化しているからあんまり使い勝手がよくないんだ」
「へえそうなんだ。それでもいいから教えてくれないかな」
「俺もほぼ独学なんだけどな。これがさっき話した魔術書。貸すよ。ちゃんと返してよ凛」
「次、僕も貸して。頼む谷山君」
「了解。凛読んだら次平野に貸してやって」
「OK」
なんだかんだで、魔術書を貸すことで一件落着となった。
休憩が終わると、再び歩き始めた。今までと違い、アスファルトで舗装されていないとはいえ、道があるので歩きやすい。道に沿って山を下る。途中水が湧いていたところで水を補充してから山を下り終えた。
あたりはすでに薄暗く、今日は野宿かもしれないなという考えが頭をよぎる。それでも道なりに歩いていくと村が見えてきた。しかし、人の気配は全くなく家もところどころ朽ちかけている。
「ここは廃村か何かかしら。今日はここで一泊しましょう」
そう凛が言った。この廃村で一泊することに決めた俺たちは手分けして村の様子を探ることになった。
やはりというべきか、人間は俺たち以外誰もいない。村のはずれに井戸はあったが、食料はない。あたりはすでに真っ暗になり、懐中電灯の明かりだけが頼りだ。凛と亮太の持っていた懐中電灯は手回し発電ができるので、電池の心配はいらないが、俺の懐中電灯は乾電池、しかも予備の電池は持ってきていないのでいつまでも使えるというわけではない。暗闇で明かりを発生させる【鬼火】は使えるが、懐中電灯ほどの明るさはない。早いとこ人里を見つけないとやばそうだ。
なんだかんだで、ひとまず今日は屋根のある家に泊まり各自持ってきた食料を食べ、寝た。俺の持ってきた食料はおにぎりなのでそのまま食べることができたが、カップ麺を持ってきた人たちは、井戸から水をくみ、村で拾った鍋にお湯を沸かしていた。
そういえば山でくんだ水はここに来るまで飲まずに済んだが、後で念のため沸騰させて殺菌しておいたほうがいいかもしれない。金もなければ医者がいるかもわからない。日本にいるときと同じ感覚でいたら、早死にしそうだなとか考えていると、いつの間にか眠っていた。




