隣に下宿している子
もう、大半の人が持っている携帯電話。
俺は、大学3年生になってやっと持つことができた。
周りからも、早くも手と言われていた中での携帯の保有は、やっとかと言った感じで、友人たちあkらは受け止められていた。
その中で、一番最初にメアドを交換したいといってきたのは、俺が予想していなかった、大学で下宿先がすぐ隣になった女子だった。
「ああ、もちいいさ」
俺はそう言って、赤外線通信で、メアドを交換する。
完了を告げる電子音がして、互いが受け取った情報を確認する。
「うん、入ってる」
「あたしのも入ってる?」
「ああ、もちさ」
俺はそう言って、名前を入力する。
誰のかわからないことがあるため、簡単にメモを取っておくのだ。
「川田一陽だったな」
「うん、あたしの名前ね」
彼女はそういって、俺の名前も聞いてきた。
「偶然だとは思うが、俺も川田なんだ。川田鈴榛」
「そうなんだ。偶然だね」
彼女は、そんな感じで喜んでいた。
彼女とメールをするのは、1か月に2回か3回といった、結構頻度は低かったが、それでも、なかなかいい関係を続けていた。
その関係を進めたいと思った矢先、大学で彼女を見つけた。
5人ぐらいの男に取り囲まれて、なにかとても嫌がっているような感じだ。
「こらっ!」
巻き舌気味に言って、肩をいからせ、体を斜に構え、持っていた傘を突き指しながら、俺は彼女を救うべき、男たちのところへ近寄った。
「なんだよ、お前は」
「そいつの友達だ、お前ら離れろ」
「ああ、そうですかって。そんな簡単に離れるわけないだろ。お前みたいな野郎には、こんないい女はもったいないんだ。だから、俺たちがちゃんと育ててやるさ」
その顔は、侮蔑の表情も含まれていたと思う。
そんなことを気にする前に、鎖骨の根元を傘で一瞬で突いた。
続いて、左肩、右肩の関節部分。
それから、股関節を突き刺す。
これで、脱臼をするはずだと、俺は思った。
そして、その場に、その男は倒れた。
痛そうに呻いている。
そこに、誰かが読んでくれたのであろう、警備員も駆け付けた。
俺は倒れているやつをまたいで、彼女のもとへ寄る。
「大丈夫か」
「うん、大丈夫。来てくれたんだね」
「いや、偶然見かけたからさ、助けなきゃって思ってな」
俺は、倒れそうになっている彼女を支えながら、抱きしめていた。
「あ…」
抱かれていることに気付いた彼女は、俺から離れようとはしなかった。
「大丈夫ですか」
警備員が俺たちに聞く。
「ええ、こちらは大丈夫です」
「それで、この倒れている男は…」
「この子を強姦しようとした感じだったので、動けなくさせました」
「分かりました。ここから動かないで」
警備員は持っていた無線機でどこかと連絡を取る。
「ねえ…」
「どうした、どこか痛いのか」
「じゃなくて、ありがとうって。助けてくれて」
「ああ、それぐらいどうってことないさ」
俺はそういったが、彼女は何か思っているようだ。
「…ねえ、さっきの鈴榛、かっこよかったよ」
「そうか」
俺は自分がどんな感じに見えていたのかわかっていない。
「そうだよ。だからね、そんなかっこいい人と、付き合いたいなって…」
彼女は耳まで真っ赤にしながら、言った。
「そうかい」
俺はさらに強く抱きしめた。