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東方饕餮記  作者: 待ち人
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八話

捏造設定雨霰の巻



捏造と独自設定が多分に出てきます。気をつけて下さい。

そして、キングクリムゾン!

 青と藍と紫、三人の妖怪の出会いからおよそ千年が経とうとしていた。

 そして今現在、紫は諸国漫遊を続け、青と藍の二人は大陸のとある広大な屋敷の一室でくつろいでいる。


 なぜ妖怪である二人が屋敷をもって生活しているのか?

 それを知るには三人の出会いの日まで遡らなければならない。







 青と藍が紫の考えに対して協力を申し出た後、三人は今後の行動を話し合っていた。


「それで紫、私たちはどうすればいいんだ」


「そうね、妖怪の消滅に関していくつか考えはあるのだけど現実的なものは少ないわね。しかも今の段階で行動に移せるものなんてほとんどないのよ。貴方たちのおかげで一応選択肢は広がったのだけど」


「ふむ、じゃあその考えとやらを一度俺たちにも聞かせてもらえないか?」


「…そうね、一度話してみれば考えがまとまるかもしれないわね。いいわ。まず順を追って考えていきましょう。今問題となるのは人間と妖怪の関係、それも人間が妖怪に対して一定の畏怖の念を抱くこと。さらに妖怪の側からも人間をむやみやたらに殺したりしない関係が望ましいわね。過度の恐怖は必ずそれに対抗し得るなにかを生み出してしまう。そうなれば過去の二の舞ね。

 ここから大まかな手段として考えられるものを挙げると、


・人間以外に妖怪を恐れる存在を生み出す。ただし人間並みの理性と本能が必要。


・人間が妖怪に対抗し得る力を得られない環境をつくり上げる。


・妖怪と人間の生活共存。この場合人間から妖怪に対する感情は恐怖ではなく畏敬を目指す。


この三つかしらね」


ここで紫は一旦区切り、一息入れるとまた喋りだす。


「 一番目のものはかなり運任せな話となるわ。

 あまり知られていない話なのだけど、この世界には“魔界”と呼ばれる違う次元の世界へとつながる場所があるの。

 “魔界”にも“魔界神”と呼ばれる神がいる。そして“魔界”とは“魔界神”の能力によって創られた世界らしいわ。恐ろしい話よ、能力で自分の世界を創ってしまうなんて。

 そして、その“魔界神”が“魔界”を造った理由は自分を信仰してくれる者を生み出すため。つまり自分の神としての力を保つために、自分が唯一無二の神である世界を創ったという訳よ。


 このことから以後似た能力持ちが現れる可能性は無いわけではない。

 そしてその存在が妖怪で私たちに協力してくれるなら実現は可能よ。


 ただし全ての条件において運試しの要素が大きすぎるわ。まずそんな強大な能力持ちは滅多に誕生しないし、居たとしても大体は神の類いね。

 この案に頼るのは危険すぎるから、捜索はするにしても、あくまで当たれば儲かりものの扱いね」


「そうか…それじゃあ二番目は?」


「 実は二番目が一番可能性が高いと思ってるわ。

 もちろんこの世界全体になんて手は回らないから、限られた土地で行うことになるけど。

高い霊格をもち、人も多すぎず、簡単には外から入ってこれないような土地があればいいの。

 ある時期までは妖怪をその土地に集めつづけ、ある程度他の土地で人間の技術が発達してきたら、土地の力を借りて外部と遮断してしまう。


 難しいのは人間と妖怪の均衡を保つこと。下手をすれば人間が根こそぎ食われてしまうから、そこに住む妖怪には制約を課さなきゃならない。

 そこは私たちが力で他の妖怪の上にたつなりやりようはあるわ。

遮断も結界の類いで行って強化を重ねていくつもりよ。時が進めば優れた術者が現れるでしょうし、定期的に外の技術を信用がおける妖怪が盗めば対応もとれるでしょう」


「ふむ、確かに一番目よりはましか…強力な結界の術者なら、一番目の案の能力持ちよりも遥かに簡単に見つかるだろう」


「そう、そして三番目が次善の策にあたるわね。

 これをやるには、まず人間の生活に食い込まなければならないわ。そして一定以上の地位を築くことが必要よ。

 そして周囲からの信頼が高まったところで正体を明かす。これによって妖怪に対する感情を恐怖から畏敬へと変えていくきっかけにするの。


 ただし、これもかなり難題ね。

 まず人間の生活に食い込むには人間とある程度親しむ必要があるから大妖怪以外は不可。力の弱い妖怪では消滅してしまう恐れがあるわ。

 次に正体を明かす時期。

 人間のこちらに対する信頼と既存の妖怪に対する価値観、この二つの均衡がどちらに傾いているか正確に判断する必要があるわ。間違えれば退治しようとしてくるでしょうし、計画は当然水の泡よ。

 ただ、一度受け入れれば、おそらくは人間と妖怪との共存は可能になるわ。

 これは多分に私の推測が入っているのだけれども、妖怪は人間の恐怖という感情から生まれてきたために、人間にとって恐怖となりうる本能を持っているわ。

 ならばその感情が別のものならばそれに準ずるものに変質するかもしれない。この場合妖怪がそのまま生き残るか、新しい種族として改変されてしまうかはわからないわ。あるいは神のような存在になるかもしれないわね。畏敬の念と信仰は似たようなものだから。

 親しみを持たれれば力が弱まるけど畏敬という畏れならなんとかなると思うの。妖怪から神になった例だっていない訳じゃないし。

 

 まぁ、そもそも話の前提である“畏敬で妖怪が生きられるか”がはっきりとしないから、運試しになってしまうのは否めないわ。とてつもない労力の末に失敗するかもしれない。

 それでも実行してみる価値はあるし、この場合は早くやればやるほど効果が望めるわ。


 以上三つが現段階で私が考えているものよ。


 まだまだ粗い部分が多いのだけれど、この三つで絞っていくのがいいんじゃないかと思うわ」


 そこまで言って再び紫は息をつく。長い間喋りつづけていたせいか若干顔には疲れが見えたが、それ以上に自分以外の存在であり、彼女に対しての初の理解者である二人とこうして考えの検討が出来ることを嬉しく思っていた。


 その後、青と藍はそれぞれの意見を紫に言い、それをもとに考えを練っていく。二人の意見は人間側の視点や人間の中で暮らした妖怪の視点からのものが多くあり、それは例えば人間からみた妖怪への恐怖の強さだとか、実際に人間と生活する際に起きる問題だとか、紫からの視点では抜けていた部分を補った。

いかに卓越した頭脳を持っていても一人で事を行えば必ず穴が現れる。そうした面から見ても他者との意見のぶつけ合いは有意義なものだった。



「さて、ある程度の意見は出し尽くしたと思うんだが、今後の動きはどうする?」


「そうね……私はこれまでと同じように世界を回るわ。そこで条件に見合った土地と例の能力持ちを探してみるつもりよ。

 貴方たちには三番目の考えを実行するために動いて欲しいの。幸い二人は人間との生活に慣れているし、聞けば青は元人間で朝廷にまで出入りしていたのでしょう?ならもう一度霊力で妖怪退治なりなんなりして功績をあげて、土地や地位を手に入れるのがいいわね。

 貴方たちは不老だから、何かしらの対策をたてなければね

 あくまで例だけど、表に出ないようにして土地を支配するといいわ。元々ほとんどの人間は、上の人間の顔なんて気にしてないようだし。

 青が誰かに変化して政を布告すればいいし、定期的に変化する対象を変えれば新しく雇った程度の認識になるでしょう。

 それでも大変なことだと思うけど、引き受けてもらえるかしら?」


「ああ、任せてくれ。

 さっきも藍がああ言ったように、俺たちが出来ることなら遠慮なく言って欲しい」


「そうだ、私も青と同じ意見だ」


 迷わず答える二人。

 それを聞いた紫も嬉しげに微笑む。

 こうしてひとまずの結論を出したところで、紫がどこからともなく食べ物と酒(鬼から譲ってもらったもの)を取り出してそのまま宴会となった。



 翌日、定期的に紫の方から会いに来ることを約束して二人は紫と別れた。

 その後、大陸に戻ってきた青は妖怪退治、藍は妖力を隠す札を持ってそれに同伴し、人目がないところでは妖力を解放して共闘して夫婦共に功をあげた。

 その褒美として土地をもらい、二人はお互いに知恵を出しあって、たまにやってくる紫の助言を受けながらも、優秀な領主としてそれを治めることに成功する。

 一時は夏王朝が崩壊して殷王朝になるなどの危機があったが、二人には他にはない情報網があったので、勝ち馬に乗った形で殷の湯王に味方することが出来、引き続き統治を続けることが出来た。


 そして今、領地にこれといった問題もなく、日常的な量の仕事を片付けた二人は仲良くくつろいでいるのだ。こうした日には青は藍の尻尾をすいたり、藍の膝枕を堪能したりしている。すいた後の尻尾の手触りは至高のもので、モフモフすれば日々の疲れを消し飛ばす程度の能力があるらしい。


 ちなみに現在青は表向き174代目当主となっており、五年くらいで当主交代を行っている。これには理由があり、五年という短い期間なら風貌も大して変わらないし、代替わりした時に髪の色を微妙に変えたり髪型をいじくれば、親子で似ている程度で済むのだ。藍はそうもいかないが滅多に表に出ないので気づかれてはいない。使用人には藍の能力で生み出した式を使っているので、わざわざ口の堅い人間を探す必要もない。

 巷では、俗世を嫌った絶世の美女だの言われてはいるが。


「はぁ、平和だなぁ」


「ふふっ、そうだな」


 どこか爺くさいことを言う青に苦笑しながらも、同意して青に寄りかかる藍。ほのぼのとした時間が二人の間に流れる。


「あら、お邪魔だったかしら」


 そんな穏やかな時間を過ごしていると、どこからともなく現れた紫が声をかけてきた。以前会ってから三 年ぶりの再会であった。


「ん、構わないさ。なにか進展はあったか?」


「残念ながらなかったわ。でも一つ気になることがあったの。東の島国で神同士が戦うって噂が妖怪たちの間で流れてるのよ」


「それは穏やかじゃないな。神同士が戦えば、負けたほうの支配していた土地になんらかの影響を及ぼす」


「そうなのよ。その場で収まればいいけど、こっちの方まで攻め込んできたら面倒なことになるわ。

出来ればその神たちの動向を把握しておきたいのだけれど、私じゃ妖怪だとばれてしまうから駄目なのよ。悪いけど青に行ってもらっても構わないかしら?」


「ああ、別に構わない。藍もいいよな?」


「青と離れるのは遺憾だが致し方ないな。気を付けてくれよ」


「あぁ、藍もな」


 なにやら甘い空気を醸し出しつつある二人。

 紫は慣れたもので表情は変えないが、僅かに顔を赤くしつつも『……全く妬けるわよね』などと呟いている。



 その後紫の咳払いをも無視し、二人が満足するまでこの空間は続いた。



第八話投稿でした。


…すいません千年キンクリってやり過ぎたかな。

でも、あの間は書くことないんですよ。諏訪大戦の時期もはっきりしないし…


話の内容は今回は大半が説明っぽい感じでしたが、微妙に糖分もあったかな。


あまり内容には突っ込まないで「この駄作者はこういう思考回路してんのねー」程度で考えて下さい。


糖分は出していきたいですが三~四話はまた離ればなれ…

それが終わったら全力でイチャイチャさせます。

ええ、書きますとも!




感想待ってまーす。



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