表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方饕餮記  作者: 待ち人
8/51

七話

スキマ妖怪と仲良くなろうの巻



短いです


3/29に後書き追記

 今私は妖術で起こした火を囲み三人で休んでいる……そう三人だ。


「本当、貴女良い尻尾もってるわよね」


 そう言って手で何かを掴むかのような仕草をして近寄ってくる。何か嫌な予感がしたので狐火を放つが……


「うふふ、つれないのね」


 当たる前にかき消えてしまう。


 この妖怪の名前は八雲紫。八雲というのは名字というものだそうだ。

 青と同じような一人一種族の妖怪らしい。だいたいその手の妖怪は強力なのだが、八雲も例に漏れず大妖怪といって差し支えない妖力と『境界を操る程度の能力』などという反則気味な能力持ちだ。

 さっきの炎を消したのも能力だろう。正直私一人では勝てないと思う。


 なんでこんなことになったかというと……




~~~以下、回想~~~



「もしかして、お困りかしら?」


「まぁちょっと訳ありで逃走中だ」


「それは困ったわね。じゃあ助けてあげるから後で話を聞かせてもらっていいかしら?

今回は特別にそれで貸し借りなしにしてあげるわ」




~~~以上、回想終了~~~




 というような事があったのだ。

 その後彼女の作った“スキマ”とかいう、先ほど虚空に現れた裂け目と同じものを通って移動、辺りに他の気配がないことを確認してから三人で寛いでいる訳だ。

 まぁ最初は妖力の大きさと、本意を悟らせない胡散臭い笑みのせいで警戒していたが、話してみればかなり理知的で友好的な妖怪だった。


時折私の尻尾に感じる熱い視線さえなければ言うことないんだが。


 話しているうちに判明したことなのだが、驚いたことに彼女は私と同じように人間に興味をもって観察してきたらしい。まぁ私とは若干方向性が違うようで、彼女の場合は人間と妖怪の関係について考えるために必要だったらしい。

 そのために世界中をまわっていたらしいのだが、その途中にクレタ島にすむ私たちを発見、人と共存する妖怪を見つけて追跡してきたらしい。

 そして強大な神力を確認して駆けつけてみれば私たちは逃亡中、という訳だ。


 私自身、自惚れなしに頭は良いほうだと自負している。だから千年も生き延びてきたし、青にも助言してやることが出来る。

 ただ、彼女の頭が弾き出す考えはどれも秀逸だ。私も予想だにしないことを言い出すときがある。

人間と妖怪の関係についてもそうだ。

 彼女の考えではいずれ妖怪などの神秘は人間の技術によって淘汰されてしまうらしい……正直信じられない。


 今は色々な場所に神秘が溢れている時代だし、人間との力関係だってその気になれば圧倒的有利だ。畏れがなくなるのでやり過ぎないようにしてはいるが。


 ただ彼女はその根拠を発見していた。

それは人妖大戦。遠い遠い昔、それこそ数えるのが馬鹿らしくなるほどの昔、そこには妖怪と今とは比べ物にならないほど発達した技術を操る人間がいた。

 ある日、大半の人間は寿命を延ばすために月へと移住する。一部の人間は地上に残ったが、そこへ進んだ技術によって虐げられる側となり、畏れを失って消滅しつつあった妖怪が戦を仕掛けてきた。

その結果起きたものが人妖大戦。

 大戦の果てに人と妖怪は共倒れ。地上に人がいなくなったために大戦に参加しなかった妖怪も消滅。

その後気が遠くなるほどの年月を経て再び人間が台頭し、私たち妖怪も現れた。


 八雲はこの事を自力で調べて推察した。

 わざわざ月にまで行って自身の目でその技術を見てきたらしい。そして彼女の下した判断が妖怪の淘汰、過去の繰り返し。


 確かにここ最近の人間は着実に進歩している。私が生まれた時なんてただより集まっただけの集団だったのに、今では国を作って独自の秩序の元に生活している。

 技術も昔は石で狩りをしていたのに、今は青銅の剣で戦っている。

 彼女の言う通りに過去人間が妖怪を越える技術を身につけたなら、今回もいずれそうなる可能性は十分にあるだろう。


 かといって人間を滅ぼす訳にはいかない。それでは私たちは消滅してしまう。


 だからこその共存。


 この答えにたどり着いた彼女には畏敬の念をも感じる。話を聞いた青も隣で考えこんでいる。彼も聡明な方だから話の深刻さと可能性は分かるのだろう。そして共存の難しさも。


 私たちのような強大な妖怪や妖獸はまだいいのだ。もともとの妖力が大きいので多少の弱体化はあっても、弱体化の末に消えてしまうなどということはない。

 だが、生まれて日の浅かったり力がない弱小妖怪はそうもいかない。共存しようとしても、少ない妖力を更に削ることとなり、最終的には消滅してしまうだろう。考えれば考えるほど無茶な話だ。


「八雲「紫でいいわ」紫、お前はどうやって共存していこうと考えているんだ?お前のことだ、なにも考えつかないということはないんだろ?」


「ええ、まぁ考えが無いわけではないわ。ただまだまだ煮詰めなければならないし、今の段階では他の妖怪は納得しないでしょ。私の話を聞いても笑ったり怒ったりしなかったのは、貴方たちが初めてなのよ」


 確かに私たちのような妖怪はそういないだろう。

 私は長年人間を観察してきたし、青にいたっては元人間。人間の強さを間近に感じてきた。

 その点妖怪は人間を歯牙にもかけず、ただ餌と認識している手合いが多い。だからいずれ人間に負けるなどと言われれば気分を害するに違いないだろう。


 それでも彼女は探したのだ。彼女の考えとその深刻さが理解し、協力してくれる者を。そこまで考えて私が青の方を向くと、彼もまた自分の思考に結論を出したのかこちらを向く。お互いに目を見て、答えが一致していることがわかってくすりと笑う。そして不審げにこちらを見ている紫に私は結論を述べる。


「紫、貴女の考えはよく分かった。もし私たちに手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれ」


 それを聞いた紫は少し呆気に取られたような顔をする。

 しばらくしてようやく私の発言を理解したのか、満面の笑みを浮かべる。今までの笑みとは全く違った少女のような綺麗な笑み。


「ありがとう、二人共」


 これが彼女と私たちの長い長い縁の始まりだった。





第七話投稿でした。



どんどんキャラの誰これ化が進んでいく気が…これでいいんだろうか?


そして最大の原作ブレイク、藍と紫が主従ではなく対等な付き合い。


…上手く動かせるか分かりませんが、力の及ぶ限り頑張ります…



そして感想待ってまーす。


※3/29追記


遅まきながら人妖大戦は二次設定です。というか二次設定を借用しているので三次


とある活動報告内の会話で、発案者のクロル氏に指摘を頂いたので追記しました。


誤解を与えた方、すいませんm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ