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東方饕餮記  作者: 待ち人
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六話

青の本気の巻



※2012 3/8  オシリスをラーに変更

「ん…朝か。藍、朝だ起きろ」


「…ふわぁ、おはよう」


「おはよう」


 二人が夫婦であると周りに宣言してから約三年がたとうとしていた。

 最初は周りからお似合いだと言われ、町の人に会うたびに冷やかされたが最近はそれも収まってきた。ただその代わりといってはなんだが困った問題が出てきた。

 町の人々が『いつまでも若々しくて羨ましい夫婦だね』などと言ってくるようになったのだ。


 八年間身近で暮らしてきたせいか、町の人々の多くはあまり気にしていないかったり『言われてみれば』なんて言う人もいるくらいだ。

 だが何年かぶりに港へやってきた商人なんかは二人の変わらない若さにひどく驚いたりする。

 今までは健康に気をつけてるだとか言って誤魔化してはきたがそろそろ島を離れなければならないかと二人は考え始める。


<青side>


 ここに住み始めて大体八年か。分かってはいたことだがそろそろ不老だとばれるかもしれないな。今日も町を歩けば若さについて羨ましがったり秘訣を聞かれたりした。


 この辺りには妖怪は見かけないがその代わりに神がより身近だ。

 不老だなんだとなればどちらにしても周りからまともな扱いは受けないだろう。迫害か崇拝。どちらも勘弁願いたい。

 移住のことを藍に話してみるか。


「藍、ちょっといいか?」


「ん?どうした?」


「そろそろこの島を出ていこうかと思う」


「やっぱりもう限界か。存外気に入ってたんだがな」


「そうだな。これは最初から分かってはいたことだと諦めるしかないさ」


「そうか……では次はどこに向かうんだ?」


「南にある王国だ、昔藍が言っていた巨大な王の墓があるという」


「あぁ、たしかファラオとか言うのが治めてるんだったな」


「そうだ。とりあえず見に行ってから定住するかどうか決めよう」


「分かった。私はお前と一緒なら構わないさ」


 嬉しいことを言ってくれるよまったく。


「じゃあ知り合いの人達に挨拶をしてこないとな。明日にあらかたまわって明後日には旅立つとしよう」


「わかった。私も準備しておこう」


 住み慣れたここを離れるのは寂しいがいつまでも引きずってもしょうがないだろう。

 気持ちを新たにして次の目的地の情報集めと挨拶まわりをしなければな。


 とりあえず今日はもう眠い。明後日にはもう旅なのだから今日明日はぐっすり眠ろう…





 二日後、別れの挨拶まわりと旅支度を整えた俺たちは沢山の人に見送られて島をあとにした。

 さすがに見送りの目の前で飛ぶことは出来ないので今は船の中だ。これから向かうのはナイル川。王国の中心までこの船で河をさかのぼって行くらしい。

 聞いた話ではそれなりの日数がかかるらしいので、俺と藍は河口で降ろしてもらうことにした。つい百年ちょっと前には王国の中心が下流付近にあったらしく、今もそこそこの人がいるらしいから、そこを見ていくということにすれば変に怪しまれることもないだろう。



 無事下流にたどり着いた俺たちは船長に礼を述べて人目につかない場所までいくと空を飛んで移動した。


 しかし……ずいぶんと殺風景な場所だ。

 辺りは砂だらけ、かろうじて川の周辺に緑があるだけだ。途中の集落の人々もなんというか生気のないやつが多い。

 クレタ島には沢山の品物が流入するから見るものには困らなかったし、なにより活気があった。


「藍、これは定住するのはなしかもしれないな」


「確かに、これではな…土地柄もあるだろうが、中央が搾取しているのかもしれないな」


 以前クレタ島に住んでいたせいで比較してしまうが、中央もこの様子なら早々に立ち去るべきかもしれないな。とにかく目的地まで行ってから決めることにしよう。


 ただ後々この決定のおかげで俺たちの運命が左右されるとはつゆとも考えなかった。








 あの後途中野宿をしながらも飛行を繰り返して進んだ。

 途中で例の石の墓を見てみたがその大きさには圧倒された。その上金かなにかで覆ったのだろう、日の光を受けて輝いている様はなかなかだった。

 ただ内部から異様な気配を感じたので近づいてはいない。実際に入ったわけではないのでわからないが、おそらく侵入者に対する呪いかなにかだろう。ちょっと興味があったが下手なことをして祟られるのも嫌なので、見るだけにしてそのまま立ち去った。


 その後無事に目的地に到着。さすがに地方よりは賑わっているようだがどうも空気が悪い。陰気というか……


「とりあえず見てまわらないか?クレタにも多少はこちらの品物が入ってきたが本場にきたんだから見ておきたい」


「ん、あぁわかった」


 考えてもきりがないので藍の提案に従っておく。

 あの後色々と見物しながら歩いてみたが、確かに新しく見るものはそれなりにあった。普段なら楽しめたのだが…

 先ほどから感じていた嫌な空気。住民の発しているものかと思ったがどうも違うようだ。

 こう、まるでずっと見られているような…


「なぁ、藍?この気配は…」


「分かってる、あまり変な素振りをするな。

 おそらく誰かが見ているんだろうが分かりやすい視線だ。だがこちらが感知出来る範囲にはいないみたいだな」


 やっぱり藍は気づいていたのか。しかも断定した上で探りまで入れていたみたいだ。元々が野性動物だから元人間の俺より気配に関しては敏感なんだろうな。


「わかった。現状じゃ特にこちらから出来ることもないから様子見だな」


「あぁ。あるいは人気のないところにいって誘きだしてもいいかもしれない。これだけ待っても何もしてこないなら、ただの監視か人前では行動出来ないかのどちらかだな」


「出来れば前者であってほしいが…どちらにせよ俺たちの正体についてはある程度ばれているとみたほうがいいかもな」


「そうだな。お前はともかく私は妖気を完全に隠すことも出来ないし…

まぁ戦闘になっても私たち二人に勝てるやつなどそういないだろうさ」


「いや、油断するなよ藍。この辺では王は神の子がなるらしい。先祖に神がいて神力なんて使われたら苦戦は必至だ」


「あぁ、そうだな。私もこんなところでお前とお別れなんて勘弁願いたいし気を付けるよ」


「おそらくは威信づけだろうがな」


 まぁ警戒するにこしたことはない。

 人外の俺たちの感知に引っ掛からないということは、何かしらの術を使っている可能性が高い。おそらく俺の知っているものと形式も効果も違うだろうから用心しなければな。






 人気もなくある程度開けた場所にくると、途端に大勢の人間がこちらに移動してくる気配がした。人数はおおよそ…50人といったところか。

 それとおそらく大半は霊力持ち。まぁそれだけなら大したことはない。人数を集めても俺たちにはあまり意味がないだろうし。

 問題はその中の数人に霊力以外のものを感じるのだ。これはいったい…


 考え込んでいると例の人間がぞろぞろと現れた。


 なんか妙な仮面を被っているな。あれは狐、もしくは犬か?


「あんな奇怪なものと一緒にするな」


 藍が膨れてしまった。なんか新鮮で可愛いな……しかし藍よ、なぜ心が読める。


 妙な仮面の集団が俺たちの周りを囲み、一人が目の前に進んできた。

 

「我々はこの国の神官だ。さていきなりだが、貴様ら一体なんのためにここへ現れた?」


「なにと言われてもな…ただの見物だ」


「ふむ、見物か。まぁ目的など素直に話すわけがないか。貴様らからは邪の気配がする。この王のお膝元で貴様らのような輩を放置する訳にもいかないのだよ。悪いが滅させてもらう!」


 そういうと仮面の奴らは臨戦体制に入った。しかし神官か…さっき感じた力はおそらく神力。

信仰を広める代わりに神から力を貸してもらっているようだな。

 さすがに微量とはいえ複数の神力持ち相手に戦うのはしんどそうだ。


「青、どうする?これは少しまずいかもしれない」


「仕方ないな、あまり気が進まんが俺の能力を使う」


 そういうと先ほどでてきた仮面の中の畏怖の対象のイメージへと変化していく。

 現れたのは神々しい光を放つ一人の偉丈夫。

 内包する力は絶大なる神力。

 名は太陽神ラー。


 目の前の神官たちはひどく混乱している。それもそうだろう。自分たちに力を与えてくれた存在がいきなり現れ、しかもそれは彼らの言う邪の気配を持つ者が変化した姿なのだから。


「汝らに問う。何故に此の者らを害さんとする?」


「はっ、い、いえ彼らからから邪の気配がいたしましたので放置するのも危険と思い…」


「そうか。だが此の者らは我の使いよ。我に代わって現世を見定めるために契約したのだ」


 さぁっ、と仮面の下の顔を青ざめて(いるにちがいない)いく神官たち。少しは疑うとは思ったが微塵もその気配がないな。

 まぁ、これだけ圧倒的な気配をもつ存在に反論するというのが無理な話か。


「此度は些細な行き違いが原因。よって裁きは下さぬが、以後彼らへの手出しを禁ずる」


「はっ、承りました」


 神官の返事を聞いてから変化を解く。

 どうも神官がこちらに畏敬の視線を向けるので居心地が悪い。


「相変わらずお前の能力は凄まじいな青。なぜ自分より力量が上の相手になれるんだ…

私はあの力に震えがきたぞ」


 藍が呆れたように言いながら、震えを抑えるためか俺の腕に抱きつく。

 まぁいつでも完璧に変化できる訳ではなく、さっきのように目の前に対象がいないと力に制限がかかってしまう。それでも便利だが。


 それに今回はこの力は使いたくなかった。

 彼らに力を与えた神が今さっきのやつならば、異変を感じたそいつが来るかもしれない。その力の強さは藍を見れば分かる。


「まぁそういうものだと納得するしかないな。とにかくここを早く離れよう。さっきの力を感じてあの神が来たら最悪だ」


 小声で藍にそう言うと、藍も危険が分かったのかこくこくと頷いた。その後何やら神官が歓待する云々言ってきたが素早く丁重に断って脱出した。

ちなみに、数千年後に黒髪の男性と金髪の女性がラーの使いとして壁画に描かれているのが発見されたりするなんて、この時の俺たちは知るよしもなかった。



 それなりの距離を飛んだが、あの神の神力から考えると相当広範囲に信仰されているのだろう。まだ安心は出来ない。

 そう思って飛び続けていると、突然前方の空間が裂けた。中から無数の目玉がこちらを見つめている。俺たちが呆気にとられていると、今度は中から傘を持った金髪の女が胡散臭い笑みを浮かべながら現れた。


「もしかしてお困りかしら?」


―――これが後に数千年の付き合いとなる彼女との初めての出会いだった。



第六話投稿でした。


試験が終わってストックもあったので投下です。

今回は青の能力発揮でした。ああいう相手に対してはかなりえぐい効果です。組織だってる天狗とか、鬼子母神がいる鬼あたりには効果が高そうな気がします。

反面一匹狼や自分を最強だと思っているとあまり意味がないと言う…

⑨あたりはいいけどUSCあたりはガチだからヤバそう…


そしてスキマ妖怪登場。

やっと二人目だー

紫も大好きなので、なるべく出番をあげたい!

まぁ勝手に出てきそうですがね




試験の結果?聞かんでください…物理が無理ゲーでした…




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