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東方饕餮記  作者: 待ち人
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三十話

青目をつけられるの巻




更新遅くなってしまってすいません(汗)



龍神との対話から数日がたった。あの対話のすぐあと、しばらく呆けていた俺と紫だったが、藍たちが心配しているであろうことを思い出して急いで帰宅。

帰ってみればやはり藍の抱擁が待っていた。聞けば、やはり心配だったらしく俺たちの行った方角を見ていたのだが、突然激しい発光があったので何か不測の事態があったのではと思ったらしい。

そのように考え始めたら心配で堪らなくなり、しまいには腕輪で無理矢理引き戻そうかと真剣に悩んだらしい。


いや、危なかった。いきなり龍神の目の前から消えたりなんかしたら龍神にどう思われたか。最悪機嫌を損ねて今回の話はおじゃんだったかもしれないしな。


で、心配をかけたお詫びも兼ねて抱き締めて接吻を繰り返していたら、スキマ妖怪にじと目で睨まれた。

『あれだけ頑張った私に誰もねぎらいの言葉すらかけないし、おまけにあなたたちは人目を憚らずに何をしているのかしら?ねえ、これは私に対する嫌味なのかしら?』 という長い言葉の羅列が紫のじと目を見ただけで伝わってきたので、さすがに今回ばかりは自重して紫を二人で労った。


……あれは言語と目配せの境界でもいじくったのだろうか。



その後は家族会議があった。俺、藍、彩音、葵、天魔、優、そして紫が我が家の居間に集まった。

ちなみに弥彦は件の武者修行で留守、碧は難しい話は分からないとばかりに橙を引き摺って遊びに言ってしまった。


議題は紫の計画、つまり幻想郷の作成だ。

今回の出来事でついに第一歩を踏み出した訳だが、これからどうするかについて決めなければならない。


「さて、今回龍神の許可を得たことで以前から話しておいた紫の計画、龍神により幻想郷という名前を貰ったが、その幻想郷を作るにあたってしなければならないことをここにいる皆の共通意識にしておきたい」


俺の言葉に頷く家族たち。

ちなみに優には詳しく話していなかったので会議前に紫が説明してくれたらしい。


「まず幻想郷はおよそのことについて内部で完結しているのが好ましい。

もちろん食物や文化もだが、人間と妖怪の関係についてもだ」


「どういうことですか?」


首を傾げる優。


「人間と妖怪の関係というのは元来食う食われる、退治するされるの関係だ。これがあるから妖怪は妖怪でいられるのは分かるな」


「はい、紫おばさんから聞きました」


紫の顔がひきつるが無視して話を続ける。


「だから人間も幻想郷にいなければいけない。もし人間がいない妖怪だけの世界になってしまえば妖怪は消滅してしまうからな。

ようは力の均衡を考えなければいけないということさ」


「つまり人さらいも無闇矢鱈にしてはいけないってことかい?」


「そうだ。もちろん全くするなということじゃない。むしろ全くしないでは困るからな。

何事も程よくだ」


「あいよ、子供らにも言っておかなきゃね」


「あとこれはこの辺り一帯に住む高位妖怪にも言い聞かせなければいけない」


「私らがいるから余り他所の妖怪は寄り付かないんだけど来るやつはくるからねぇ」


「そう言えば最近人里の南に女の妖怪が住み着いてましたね。様子見で部下を派遣したらボロボロになって帰ってきましたよ。

あの様子だとかなりの妖怪、あるいは大妖怪かもしれませんね」


「あ、その妖怪なら私知ってます。最近その妖怪に関する祈りが多いですから。まだ実際に戦闘にはなったことはありませんが、どうも花畑に住んでいるようで花畑に踏み入った人間には情け容赦がないらしいです。

ただ、自分から動くことがないので花畑に踏み入れさえしなければいいみたいですが」


「ふむ……」


天魔と優の話に俺は紫に目線を送る。


「その花の妖怪にも一応話をつけておかなければいけないわね。あくまで今までの行動がそうであっただけで、これからもそうだとは分からないのだから」


「そうだな。後日様子見に行くとしよう。他に何か注意するべき妖怪などはいるか?」


俺のその言葉にぽつぼつとこの辺りな妖怪の名前が挙がっていく。


「―――もう大体出尽くしたか?それじゃあ二人一組になってさっき名前の挙がったところへ行くということで良いか?

あ、優は留守番な。神様が妖怪と一緒にいるのが何かの拍子でばれたら不味いからな」


俺の言葉に皆頷く。

ま、優に関しては彩音を付けてもよかったんだが、何より優の技量じゃまだまだ心配だからな。


結局俺は藍と一緒に話の初めの方で出てきた花の妖怪とやらの場所に行くことになった。








「さて、天魔から聞いた話だとこの辺りのはずだが……」


「……これは、見事な花畑だな。

いつの間にこんな場所が……」


翌日、俺と藍が連れだって件の場所に向かえばそこには見たこともない黄色の美しい花が大量に咲いていた。


これも例の妖怪の能力なのか?


「ん、あれじゃないか?」


そう言って花畑の方を指差す藍。その指の先には緑髪で日傘らしきものを持った美しい女性が花畑の中に佇んでおり、向こうも気づいたのかこちらを見ている。


美しい花に囲まれているその光景は大変美しい

……辺りをただよう濃密な妖気と殺気さえなければ。


「これはまた随分と歓迎されているみたいだな」


「ふざけてる場合じゃないぞ。間違いなく大妖怪じゃないか。

あの妖力なら萃香たちに匹敵するかもしれないぞ。

しかも相手はやる気まんまん、一体どうするんだ?」


たしなめられてしまった。


まあ確かにあの妖力はかなりのものだ。もちろん妖力が強さの全てを表す訳ではないが、だからこそ油断できない。

出会い頭に殺気を飛ばすようなやつだから戦闘は 避けられないかもな……


「まあとにかく話しかけてみるさ」


そう言って二人で件の妖怪に近づいていく。


「あら、私の庭に一体なんのようかしら?見たところ人間じゃないみたいだけど」


「なに、少し話がしたいだけさ。俺は八雲青でこっちは八雲藍、俺の妻だ」


「よろしく」


「夫婦の妖怪?でも明らかに違う種族よね。

私は風見幽香。あなたたち面白そうだから話を聞くのは構わないけど、下らない話ならまとめて叩き潰すわよ?」


話は聞いてくれるみたいだがずいぶんと物騒だな。


「まあそれでもいい。

簡単に言ってみれば人間をむやみやたらに襲わないでくれと言うことだ」


「ふふっ、随分とおかしな事を言うのね。あなたはともかく隣の女は妖獣だというのに人間を庇うのかしら?


それに私はむやみやたらに人間を襲わないわよ。というより興味がないわよ、あんな弱い生き物。

たまにいじめてあげるだけ」


「いじめるって……」


藍が微妙に引いている。

まあこれだけの妖怪と人間の戦いなんていじめ以外の何ものでもないんだろうが、どうも嗜虐性があるようで美人なのに笑顔が怖い。


「風見が人間をむやみに襲わないのは聞いているが、一応な。

それにこれは人間を庇っているんじゃない、むしろ俺たち妖怪のためだ」


「……どういうことかしら?」


俺の言葉に疑問を投げ掛けてくる風見。俺は丁寧に幻想郷のこと、そしてそのために必要な人間と妖怪の関係について説明した。


「―――ということだ」


「ふーん……ま、私は構わないわよ。ただし人間が花を荒らせば容赦はしないけど」


「そう言えば風見は花の妖怪なのか?」


「そう。この子たちは私の家族。だからこの子たちを傷つける奴らにかけらも容赦はしないわ」


そう言った風見の表情は笑みではなく凄みのある表情だった。


つまりこの花たちが俺にとっての藍たちであるということなのだろうか。

まあそれなら気持ちは良くわかる。

俺だってもし藍を傷つけたやつがいたら輪廻すらさせずに魂ごと消し飛ばしてやるよ。


「なるほど。まあやり過ぎなければ構わないがな。それじゃあよろしく頼む」


そう言って俺たちは踵を返す。なるべく花に触れないようにしながら。


「なんとか穏便に終わってよかったな」


「全くだ。俺とてあんな妖怪を相手にするのは骨が折れる。戦闘が回避できて良かった」


花畑の端まで来てため息をつく。藍も何事もなくほっとしているようだ。


「あら、その言い方だとあなたは疲れはしても負けはしないって言ってるように聞こえるわね」


「「!?」」


いつの間に…!

いくらなんでも俺たちの会話が聞こえる距離じゃないはずだ…


「なぜ私たちの会話が…」


「家族に教えてもらっただけよ」


……失念していた。そう言えば風見は花の妖怪。

花と何らかの形で意志疎通できる可能性は大いにあったというのに。


徐々に歩み寄ってくる風見。

しかもこの雰囲気…


「ねえ、あなたってそんなに強いのかしら?

最近弱いやつしか来なくて退屈してたのよ。この前私を問い詰めにきた鳥がいたけど、あれも大したことがなかったし」


こいつは完全に戦闘狂だな。目の輝き方が半端じゃない。

おまけに今の言葉にあった“鳥”とはおそらく天狗のことだろう。

そしてそれが意味するのは天狗すらも『弱い』の一言で切って捨てることが出来るほどの強さ。


「どうかな。俺としてはあまり暇じゃないからすぐに帰りた「無・理」くっ!」


「青!」


こいつっ、いきなり傘で殴りかかってくるとは!

咄嗟に腕を交差して防いだがかなりの重みを伴った攻撃だ。


「お前、青になにを!」


「私の一撃を生身で止めるなんて……素晴らしいわね!

じゃあ……奥さんのほうはどうなのかしら!?」


「藍!」


俺にかかっていた重圧が消えるのを感じるのと同時に目に入ったのは藍に向かって傘を振りかぶる風見。そしてなすすべもない藍に傘をそのまま猛烈な風音と共に降り下ろす。


まずい!……いや、あれは…


「……幻術」


「誰も私がお前に勝てるなどとは言ってないだろう……」


藍が切り裂かれたと思うとその姿がぶれ、次の瞬間には消える。


そして風見の後ろに現れたのは無傷の藍。

しかし良く見れば額には冷や汗をかいているようだ。


「ふふっ面白くなってきたわね。いいわ、さすがに二対一は疲れるだろうから今は見逃してあげる。

その代わりまた今度殺り合いましょう」


「殺り合いましょうって……試合なら受けてやらんでもないが」


「あら、死合ならいいのかしら?」


「……何か違う気がするから駄目だ。

……いや、しかし藍に手を出した制裁を正当に……」


「い、いやそれはいいんだ。

それより私は早く帰りたい」


ん? 藍よ、なぜ冷や汗の量を増やしているのだ?


「…むぅ、藍がそう言うなら仕方ない。

と言うことで風見、殺し合いは駄目だ。組み手程度ならいつか付き合ってやるがな」


「良くわからないけど仕方がないわね。

まあいつかその気にさせてあげるわ」


そう言って妖艶に笑う風見。

言葉と表情を見れば男を誘惑する女のようだが、実際は殺し合いへのお誘いだからたまったもんじゃない、全く。





このあと俺たちは風見のもとを去って家に帰った。

他の組もいざこざはあれど無事に帰還し、程度な差はあっても辺りの高位妖怪の承諾はとりつけられた。




こうして俺たちは着々と幻想郷作成の歩みを進めていくのだった。





第三十話投稿でした。



昨日の夜に更新しようと思ったんですがまさかの寝落ちorz

よもや6時頃に一眠りしたら時計が一回りするとは思わなんだ……




今回はUSCの登場です。

とうとう目をつけられた青。彼女はバトルジャンキーだけどバカではないので藍もいる時に死合にはしませんが、一対一になったその時は……


ちなみに人間との均衡を崩しかねない大妖怪を叩き潰さず説得するのは、幻想郷の人里と外界の交流をなくすためでもあります。

まあそれでも危険な奴らはしばらくすればお役ご免にしますがね……処分方法は皆さんお分かりでしょう。




なんだか最近クオリティが右肩下がりだと自分は感じているので連日投稿は厳しいかもしれませんが、楽しみにしていらっしゃる人もきっといるだろうという儚い希望を持って書き進めていきます。

見捨てないで待っていて下さい。



感想待ってまーす。

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