表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方饕餮記  作者: 待ち人
19/51

十八話

新事実発覚の巻


葵との戦いが決着した後、気絶していた天魔と葵をまとめて家へと運んだ。天狗はもちろん承諾してくれたが(我が家の娘なのだから当たり前だが)、鬼たちが快く任せてくれたのは意外だった。

どうも俺と葵の戦いに感動したらしく、あれだけの戦いを見せてくれた奴に悪い奴はいないだとか、見ているほうも清々しい勝負だったとか色々と褒められた。今度喧嘩をしよう!なんていう奴には困ったが、とにかく葵を預かって、念のために付き添いも頼むと鬼の中から二人ほど現れた。


一人は星の模様がある一本角を生やした見た目20歳くらいの女性の鬼、もう一人はやや捻れた二本角を生やして腕などにつけた妙な形のおもりと体の割にでっかい瓢箪が特徴的な、見た目10歳のこちらも女性の鬼。

名前は前者が星熊勇儀で後者が伊吹萃香というそうだ。二人ともあの勝負で俺のことを気に入ってくれたらしい。例にもれず勝負しようと言われたのには閉口したが。


「ねえねえ青、あのお母さんを砂煙の中から吹き飛ばしたのはどうやったんだい?」


「ん、あぁあれか。あれは葵の能力を逆手にとってな。葵はなまじ見極められるから奇襲に対して警戒心がうすいし、若干予知じみてるが故にそれを崩されると反応がおくれる。予備動作なし、あるいは見極めても反撃できないほど素早く一撃を叩き込めばいいのさ」


「そんなこと出来るのかい?」


「まぁ、俺の能力だからこそかな。いきなり振り切った足の後ろから、竜の尾が襲い掛かるとは誰も思わないだろ?」


「うわぁ、えげつないねぇ…」


二人に葵を運んでもらい、俺は天魔をおぶって我が家へ向かうと、おろおろした様子の彩音と不安そうな瞳をした藍が家の前に立っていた。


しまった…飛び出してきたから不安にさせてしまったか。

内心ため息をつきながら家の前まで来ると、こちらに気づいた彩音と藍が駆け寄ってきた。


「心配したん、れすからねっ!もう二度としないで、くらさい!」


「頼むから不安にするようなことをさせないでくれ…」


駆け寄ってくるなり彩音は涙目+上目遣いでこちらににじり寄り鼻声で訴えかけ、藍は俯いて俺の服をぎゅっと掴むものだから立つ瀬がなかった。一応原因の一端だからか、付き添いの二人もなにやら気まずそうな顔をしている。


「すまなかったな二人共」


今は天魔をおぶっているので無理だから、両手が空いているなら抱き締めてやりたかった。

そんな気持ちが伝わったのか二人は渋々下がってくれた。

移動しながら話を聞くと、俺が飛び出した後に天狗から事情を聞いて今回ばかりは俺の足手まといになる可能性があると判断して家に残ったそうだ。まぁ葵の相手がまともに出来るのは俺か紫くらいだろう。戦っていて最後に気づいたのだが葵は神力を持っている。そこまで神力は大きな量ではなかったが、葵は妖怪にして神であることを成し遂げているのだ。紫の言った話の実例だろう。戦いの最後で俺が放った弾幕を被弾しても立ち上がり、しまいには俺の全力と一瞬拮抗するほどの一撃が放てたのも神力によって肉体強化をしたから。あの弾幕は妖力と体力を奪うが、神力まで奪うことは出来ない。


そういう訳で神力持ちの大妖怪なんていうのは、ちょっと彩音たちには荷が重かっただろう。まぁ葵の性格上、彩音たちがいても手出しはしなかったと思うが、その時鬼について分かっていたのが強くて好戦的だけだったから仕方がない。


家の中で一番広い部屋へと向かう。ここは普段紫や天狗たちも揃った場合に使っている部屋だ。天魔と葵をその部屋で寝かせる。葵の方は萃香たち(名字を呼んだら名前で呼んでくれと言われた)に任せて、俺は天魔の方を看ていた。


「う…ぅん…はっ、ここは!」


「落ち着け天魔、ここは家だ」


「ち、父上…私は負けたのですね…仲間達の住み処を、守ってやれなかった……」


そう言ってぽろぽろと涙を流す天魔。天魔の中で は他の天狗達がいるこの山がよほど大事な場所なのだろうな。


「安心しろ。俺が話をつけたからお前たちは出ていかなくていい」


「えっ!それはどういうことですか!?」


俺の言葉に反応する天魔。天魔にとって俺の言葉は予想外の希望だったのだろう。


「あの後俺と葵が勝負をして俺が勝った。賭けたのは天狗が山を出ていくか行かないか。お前との勝負では明言しなかったみたいだったからな」


「そうだったのですか…」


「全く厄介な能力をもった鬼だったよ」


「何を言うんだい。その鬼に無傷で勝ったあんたが言うことじゃないねぇ」


突然聞こえてきた声の方に天魔と揃って顔を向けると、目を覚まして萃香たちに脇を支えられた葵が座っていた。


「なっ、お前は!」


「そう邪険にするな。あいつらも理由もなしに攻めてきた訳じゃないんだ。これから共に暮らすのだからあまり険悪にしてもらっても困る」


「む…父上がおっしゃるなら…」


「いやぁ、すまなかったね。まぁ正々堂々とした勝負だったんだから許してくれよ。お前さんも強かったんだが、お前の親父さんはもっと強くてね。見ての通りボロボロにされちまったよ」


そう言って豪快に笑う葵。天魔もそれを見ていつまでも根に持つのも馬鹿らしいと思ったのか、直後に呆けた表情をしてから先ほどまでより表情を柔らかくした。


「ここに住むと言うのなら私は拒みませんよ。一応歓迎させてもらいます」


「お、そうかありがとうねぇ。やっぱり同じ山に住む者同士仲良くやった方がいいからねぇ。そういえばお前さん、口調が変わったね」


「えぇ、まぁ戦闘時や緊張している必要がある場面では昔の癖で自然とあの口調になるので」


「今の口調の方がいいねぇ。見た目はいいんだから、そうやって女らしくすればどんな男でも瞬殺だよ?」


「ななっ、貴様!」


葵の言葉に顔を赤くして、がーっと吠える天魔。それを見てけたけたと笑う葵。


というか葵よ、それをお前が言うのか。

萃香たちもどうやら同じように思ったらしく、こちらと目をあわせて苦笑いをしていた。


なんにしても鬼と天狗の頭は上手いこといったし、その下の奴らもきっと上手くいくだろう。

無事に事態が収まってほっとする。


「そういえば青、お前さんも神かなんかなのかい?」


今まで天魔と騒いでいた葵が不意にこちらに向かってこう話しかけてきた。


「は?いやそんなことはないが」


「おかしいねぇ、確かに戦ってる途中で神力のようなものをかんじたんだがね」


天魔も興味があるようで言い合うのをやめてこちらを向いている。

しかし、神力だと?そんなものは………

…あった。葵にも劣る量だが確かに内側を探ってみるとある。微量だから膨大な妖力に隠れてよくわからなかった。葵だから見極められたのだろう。

しかし、俺は神になるようなことをした覚えはないのだが…


「その疑問には私が答えましょう」


突然聞こえた声に一同揃って顔を向けると、そこには室内だというのに日傘を差した紫が立っていた。


「見計らったかのように出てきたな、紫。そしてその日傘をしまえ」


「失礼ね、藍から緊急度最高で連絡が来たから慌てて来たのよ。着いてみれば貴方はいないし、彩音はおろおろしてるし、藍はまともに受け答えしてくれないしで収めるのが大変だったのよ。ちなみに日傘は私の特徴だから初対面の妖怪には必須なのよ。ところでそちらの方たちは?」


「あぁ、あたしは鬼子母神の葵だ」


「あたしは星熊勇儀」


「あたしは伊吹萃香だよ」


「そう、よろしくね」


そうだったのか…そして日傘のふざけた理由は無視だ。


「…まぁ、いい。で、その理由とやらはなんだ?」


「そうね、最近貴方は大陸の方で信仰されているのよ。まだまだ小さな土着の信仰だけど」


「大陸?なにかしたか?」


「貴方昔妖怪も食べて回ったんでしょ?そのせいで一部の民族は貴方を魔除けの神として信仰しているのよ」


「あぁ、なるほどそういうことか」


「まぁ、今の神力では大したことも出来ないだろうけど、しばらくすれば神力が増える可能性もあるわね」


「なんだ、やっぱり神様だったじゃないか。これでお揃いだねぇ」


またしても豪快に笑う葵。

それにしても神力か…

諏訪子や神奈子の起こした奇跡の内容を聞いているから、少し力に対して萎縮してしまう。何しろその神力による奇跡の権化が彩音な訳だからな。

下手をすれば命を生み出す力だ、取り扱いには気を付けよう。


「そういえば葵はなんの神なんだ」


「ん、あたしは子宝に関する神さ。沢山鬼の子を産んだせいかいつの間にかそうなっていてね。どうもあたしらを恐れた人間が神扱いにすれば人を襲わないと思ったようだね。実際人を襲うと神力は落ちるんだけど、もともと無かったものだから気にならないけどね」


なるほど、そういうことか。

そして子宝の神と言うことは…


「なぁ、その子宝のご利益って妖怪にもあるのか」


「そりゃあもちろんさ。祈れば誰にだって加護を与えるのが神だからねぇ」


そう言って胸をはる葵。諏訪子と違うのはこの動作の時に揺れるものがあるかないかだろう。諏訪子は絶望的で葵は大揺れだ。


「じゃあ、俺と藍にもそのご利益を分けてくれないか?」


「お、さっきの九尾の美女だね。あっちがあんたの奥さんかぁ、こりゃあ強敵だねぇ」


「なに言ってんだか…っていかお前起きていたのか?」


「疲れきっていたからうっすらとしか瞼を開けられなかったけどねぇ。いきなり泣き声がしたから起きちまったんだよ」


「全く…ところで出来るのか?」


「そうだねぇ、今は戦いで神力使い切ったから無理だけど、しばらく経てば条件付きでやってやろう」


「条件?」


「そう、条件さ。なに簡単なことだ、あたしを妾に「馬鹿言うな」…なんだい、けちっ」


「けちとかそういう問題じゃないだろうが!」


馬鹿言ってる葵の暴走を食い止めながら、また騒がしくなるなぁと内心ちょっと疲れながらも楽しみに思う。


今日も我が家は平和だ。


第十八話投稿でした。



ということで青が神様になりました。実際に饕餮自体は魔除けの神扱いされてもいます。だから身体スペックは葵と同等だったんです。


ちなみに本来鬼の母が安産だかの神になるのはもっとあとなんですが、あるイベントのために捏造(汗)


まあ皆さんお分かりだと思いますが…


葵の妾入り計画は…どうなるかな3~

まぁ、どちらにせよ葵はキーマン(?)です。



感想待ってまーす。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ