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東方饕餮記  作者: 待ち人
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十七話

ガチバトルの巻



三人称視点でございます。

葵と青の短い受け答えの後、二人は全力でぶつかり合った。

まずは小手調べとばかりに青が放った右の拳を、葵も同様に右の拳で迎え撃つ。

次の瞬間、爆音と砂煙が上がって周囲からは二人の姿は確認出来なくなる。

天狗と鬼たちは必死に目を凝らすが視界は砂煙に包まれてなにも見えない。

ただ中から感じる強大な妖力同士が激しくぶつかり合っているのを感じて天狗は手汗を握り、鬼は期待と憧憬の眼差しで自分たちの母がいるであろう場所に視線を注ぐ。




一方砂煙の中では依然として激しい戦いが続いていた。お互いに初撃が相殺されたことに若干驚きつつも、青は顔をしかめて葵は口角を上げるといった別の反応を示す。

初撃の相殺でお互いの力は互角と悟った青は流れるような連撃で葵に迫る。

青の戦闘スタイルは遠距離、中距離、近距離と3つあるが、これはかつて大陸にいた時代に身につけた戦い方だ。青は知らないが後の中国拳法の肝は技と技の間の無駄をなくした流れるような連撃であり、彼が独自に鍛えたその格闘術もそれに通じるものがある。

次々と繰り出される拳と蹴りの乱打に対して、しかし葵は冷静に一つずつ捌いていく。

本来鬼は修練をしない。なぜなら生まれながらに強いからだ。戦い好きでよく戦うが、それも彼らにとっては娯楽。そんな鬼である葵にとって、同等の身体能力を持った青の錬磨された拳は脅威となるはずだった。

しかし、葵の能力は『見極める程度の能力』。

天魔との戦いで雷を見切ったのも、この能力で天魔から空へと発せられた妖力の行方を見極め、妖力が雲へと達した瞬間にその場を退くことで、難しい雷の回避を可能にした。最後の奇襲も彼女の視界を奪うには及ばず見極められたのだ。

そんな能力をもつ彼女は青の戦い方を見定め、足や手の力の入り具合から次に飛んでくる打撃を見極める。青の戦い方には無駄がないため葵ほどに見えるなら寧ろ捌きやすい。しかし、身体能力自体は同等なのでなかなか反撃に移ることも出来ない。

傍目には一方的に青が攻撃を続けているように見えるが、その実情は青も押しきれず葵も反撃の糸口を掴めない硬直状態だった。

たまらずお互いに後ろへ跳んで息を整える。


「楽しいねぇ。まさかこの歳になって対等にやり合える相手がいるなんて、嬉しくて体が疼いちまうよ」


「全く厄介な鬼だ。大方その『見極める程度の能力』とやらで俺の攻撃を見極めているのだろ」


「そうさ、あんたの攻撃は完成されすぎてる。あたしとは相性が悪かったようだねぇ」


葵の言葉に再び顔をしかめる青。確かに葵が持っている能力は青の戦い方にとって天敵ともいえるものだ。

だが青はいまだ能力を使っていない。


「あんたの能力の厄介さはよく分かった。次はちょっと品を変えさせてもらおう」


そう言うと再び青は葵に向かってつっこむ。

葵もそれを迎え撃ち、先ほどと同じような硬直状態になる。

迫る右拳を流してそね勢いで続く右の蹴りをかわす。


「どうした!?これじゃあさっきの繰り返しだよっ!」


「お楽しみは、これから、だっ!」


「なっ!?」


蹴りをかわしたところでいきなり葵は吹き飛ばされた。

土煙を突き破って木の幹に激突する。

外で砂煙の中を窺おうとしていた者たちは、吹き飛ばされてきたのが葵だと知るや否や天狗は沸き、鬼たちは騒然となる。


「今のは一体…」


完全に見極めたと思っていた葵は混乱する。確かにあの右の蹴りはかわしたし、あんなに速い段階で次の打撃がくるはずがなかった。それこそもう一本腕がなければ………


そこまで考えたところで砂煙の中から大量の弾幕が沸き上がる。青色と藍色の数えるのが馬鹿らしくなるほど大量の弾幕だ。

葵は一瞬その量にぞっとするが、籠められている妖力は大したものではないと見極めて妖力を纏わせた腕で弾こうとする。


「くっ!これは!」


しかし、弾こうと弾幕に触れた瞬間力が抜けていく。纏わせていた妖力も消え去り、次々と被弾していく。

弾幕の嵐が過ぎ去ったあとには葵が未だに立っていた。あれだけの量の弾幕を受けたのにも関わらず、弾幕によってつけられた傷はない。

しかし、葵の体力と妖力は大幅に削られており立っているのもやっとといった様子だ。そこに砂煙が晴れて青が現れる。


「やはりその弾幕はお前にとっての盲点だったようだな」


「これは…一体何をしたんだい?」


「お前は饕餮という妖怪はどういう妖怪か聞いたことがあるか?」


「たしか人妖問わずに食らいつくした大妖怪だったね」


「そうだ。今でこそそのようなことはしないが、この体の本質は“喰らうこと”にこそある。そして先ほど放った弾幕はその本質を表したもの。青の弾は当たれば体力を喰らい、藍の弾は当たれば妖力を喰らう。どちらもあれだけの量を食らえば戦えるような状態ではなくなる。威力や籠められた妖力を見極めても、そういったものとは全く別の話なんだよ。さて、その体では戦わない方がいい、大人しく降参しろ」


青は葵が限界であることを感じて降参を勧める。だが、葵も鬼である。このような血沸き肉踊る戦いを降参なんて形で終わらせるつもりは毛頭なかった。


「降参なんてしないよ。私だってあの子らを背負ってるんだ、最後まで戦ってやるよ。降参なんて姿を見せたら教育に悪影響さ。それにこんな楽しい戦いの結末が降参じゃ締まりがないからねぇ。

私の最後の一撃受けてくれると嬉しいね」


「…そうか、わかった。

俺も全身全霊をもって迎え撃とう」


「ははっ、ありがとね。本当に惚れちまいそうないい男だよ、あんた」


「まったく…残念ながら俺は既婚者だ」


「おや、残念だね。でも“残念ながら”ってことは望みありかな?妾でも目指そうかね」


お互いに最後の一撃を前にして軽口を言い合う。

二人の表情は穏やかだったが、それとは対照的に周りは緊張した面持ちだった。次の一撃で戦いが終わる。もはやどちらからも物音は上がらす、固唾をのんでじっと二人を見つめる。


「それじゃあ、これが最後だ!私の一撃、受け止めてみなっ!」


「こいっ!」


葵の宣言に短く答える青。

葵は小細工なしで、全力を籠めた拳を青に向かって放つ。

だが弾幕によって削られた妖力では同じように放たれた青の拳には届かなかった。

拳がぶつかり合って、一瞬の拮抗、そしてそのまま青の拳は振り抜かれ、葵はその衝撃で吹き飛ばされ、木に激突して地に伏した。


静まり返る場の中、青は振り抜いた拳を元に戻すと葵に歩み寄って抱き起こす。

満足そうな表情を浮かべたまま気絶している葵に思わず苦笑してしまうが、同じ子を思う親として共感するところのあった青は戦い抜いた葵に敬意を持って抱き抱える。


次の瞬間、天狗たちの歓声が山に響き渡った。


第十七話投稿でした。



慣れない文章書いたから違和感が…



青の弾幕は物議を醸しそうですが、ここで説明と言い訳を。


これは吸血鬼の霧化のような固有能力という認識です。

実際に力を喰らうのは青ではなく弾幕自体。要は蛭のような物を飛ばして、血の代わりに妖力を吸うと言うことです。だから飛ばした段階では空っぽなんで、妖力も威力もショボいんです。

力を吸った弾幕はその場でパーンしますから、リリカルの非殺傷みたいな扱いなのかな。


一見強力ですが、単純に妖力沢山込めて打った弾幕を相手に当てれば撃墜出来るので、初見殺しや訓練用が主な目的です。


もう一回葵とやったら微妙です。モチベーション次第では負けかねません。


ちなみに葵をぶっ飛ばしたのは能力。一応次回で軽く説明(と言ってもほんのちょっと)してあります。





あと、珍しく青が燃えてるように見えますが、今回は葵の心意気を感じて青も受けてたったということです。一応天魔が大怪我をしてなかったのも要因かな。



…本当は後書きで説明なんかしちゃいけないのになぁ…


本文で伝わるように頑張ります。


感想待ってまーす。

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