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東方饕餮記  作者: 待ち人
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十六話

鬼襲来の巻



最近のキンクリ度合いがひどい。

天狗が山に住み着くようになってかれこれ五百年、ここに移りすんでからもう千年か。いまだに我が家は平穏そのものだ。ときおりやってくる天狗たちに配る彩音特製の漬物は、年毎に茄子だったり大根だったりと変わっているようで、年始は新作の漬物で始めるのが天狗流らしい。


製鉄の方はまた新しい局面へと移った。武具に使ってる間はいいのだが、日用品や装飾に使う場合は毎日手入れをする訳にはいかず、だんだんと錆びてしまうのだ。藍に相談してみると、内側から駄目になるのではなく外側から駄目になるのだから、一度何かで覆ってみたらどうだとのこと。

なるほどそれもそうだと思い、紫に鉄と外界の影響の境界をいじくってもらって通常のものと並べて一月外に放置して風雨に晒した。


結果は予想通りで、何もしなかった方は赤錆が浮いていたが紫にいじくってもらった方は新品のまま。おかげで鉄自体から起きることではなく外部の影響で錆が出るのが分かったので、今は紫の助けなしに自分でどうにかしようとしている。最近は諏訪子のやっていたことの真似をして、鉄に妖力を籠めながら形成してみたら一応上手くいった。ただ、外部の影響がなくなるほどの妖力を籠めるとなると相当量になるのであまり良いやり方ではない気がする。とても疲れるし。


ちなみに妖力を籠めた第一作品は調理器具だ。

鉄は熱しやすく冷めにくいので調理に向いてるし、丈夫で錆びないから手入れも簡単だ。彩音に贈ったら大喜びしてくれた。


後日藍が『初めては私が欲しかったのに…』と珍しく拗ねてしまったのでなだめるのに苦労したが…


天魔も立派な頭として他の天狗を取りまとめているらしい。あの小さかった頃が懐かしいくらいに成長し、今では17、8歳くらいの美女となっている。背丈は彩音を越えており、成長しない彩音にとってはそれが悔しかったのか、最初のころは天魔の胸と背丈を見てはため息をついていた。

見かねた俺が今のままでも十分綺麗なんだから気にすることないと言ってやったら、顔を真っ赤にしてお礼を言われた。


ちなみに天魔の妖力は藍と変わらないくらいだ。神となりそもそもの基礎能力が高い彩音は実は藍より戦闘に秀でているので天魔でも勝てないが、相手が藍なら天魔も十分に戦えるくらいにはなっている。まぁ藍の本領は幻術なので、強敵との戦いの経験値がまだ少ない天魔では翻弄されてしまうこともしばしばだが。

それでも近隣の妖怪では束になっても敵わない上に、山に昔から住まう謎の大妖怪たち(俺たちのことらしい)と協力関係にあるから手を出すと消し飛ばされる、と噂がたっているため天狗たちの生活が脅かされることはない。

彼らの望んだ安住の地がやっと見つかったというわけだ。




今は藍と一緒に何をするでもなく過ごしている。

部屋の壁に寄りかかり、お互いの肩に体を預け合ってただぼーっとしている。たまに藍の尻尾をモフモフして疲れを癒す。


「青様!天魔の使いです。なにやら急ぎの用らしいですが」


そんなようにだれている時だった、玄関に向かえば天魔の使いの天狗が焦った顔をして待ち受けていた。


「大変です!鬼の集団が山に攻めいり天魔様と鬼の大将が一騎討ちを」


話を最後まで聞かずに家を飛び出した。これはちょっとまずいかもしれない。こちらで言う鬼とは幽鬼のことではなく、頭に角を生やした妖怪だ。

その種族としての強さは他の妖怪を見ても群を抜いており、一人一種族の妖怪を除けばおそらく最強だと思われる強さと好戦的な性格を持っている厄介な妖怪だ。ここ数百年で聞くようになった種族だが、いまだに実際にこの目で見たことはない。だが、人には退治できない妖怪としてその恐ろしさはよく耳にする。


他の妖怪ならまだしも、よりにもよって鬼とは!

思わず悪態をつくが、時間が惜しい。空は暗雲が立ち込めて強い風が吹き始めた。おそらく天魔が能力を行使したのだろう。

戦いの始まりを感じて速度をいっそう上げて俺は飛んだ。








妖力がぶつかり合っている場所へ駆けつけてみれば、すでに戦いは最終局面にあった。

天魔と戦っているあれがおそらく鬼の大将。白地に青色の花がかかれた着物を着ており、頭には真っ直ぐ伸びた角をもつ成熟した体つきの黒髪の女性だ。


天魔は至るところに竜巻を巻き上げ雷を落としながらも、速度を上げて死角からの奇襲を試みている。どうやら竜巻の土煙と雷の光で視覚を、雷の爆音で聴覚を奪っているようだ。雷による直接攻撃も狙っているようだがなぜか当たらない。


しばらくお互いに牽制をし、とうとう天魔が動いた。ここぞというところを狙って鬼の背後に現れ、渾身の一撃を妖力をのせた拳で叩き込む。


が、その一撃はいとも容易く待ち構えていた鬼の腕に受け止められた。


この結果に天魔は驚愕を隠せないようで明らかに動揺しているようだ。俺も完全に決まったと思っていたから内心驚いた。あの攻撃に予知じみた対応ができるのは身体能力だけでは説明がつかない。おそらくは能力の類いだろう。

鬼は動揺した天魔の隙を見逃さずにその拳を腹へと叩き込む。たまらず吹き飛んだ天魔がこちらへやって来るので受け止めてやると、最後の一撃で力を使い果たしたらしく意識を失っていた。幸い息はあるし、命に別状のある怪我ではないのでほっとしていると、例の鬼がこちらまでやって来た。


「あんたは?」


「この娘の父親さ」


「そうか、それは悪いことをしたねぇ。でもそいつとはこの山を巡って戦ったんだ、あたしらが勝ったんだからこの山には私らが住ませてもらうよ」


「なぜ、このわざわざこの山を狙った」


「わざわざって程じゃないんだけどあたしもこの子らを養わなきゃならないんでね、たまたま人の手もつきそうにないこの山があったから定住出来そうだと思って来ただけさ」


そう言って後ろを見ると数十体の鬼がいる。一本角だったり二本角だったりするが、どうやら全員この鬼の子供らしい。

娘がいる身としては確かに気持ちは分からなくもないが…


「ま、そういうことだから諦めてこの山は譲ってくれ」


「待て、決闘の前の約定でお前は天狗たちに山を出ていってもらうと明言したのか?」


「………そう言えばこの山に住ませて貰おう、としか言ってなかったね。でもどうするつもりさ。天狗が山を出ていくか決めるんだったらやっぱり勝負だけど、そこでのびてるの以外であたしと戦える奴がいるとも思えないよ」


この言葉には周りの天狗たちが殺気立つが先程の戦いで実力差を実感しているのか手が出せないようだ。

仕方がない、ここは父として一肌脱ぐとしようか。


「その勝負俺が買った」


「おや、あんたがやるのかい。確かに妖力もばかでかいし、これは楽しめそうだね。ところであんたは一体なんの妖怪だい?そいつの父親らしいが、あんたの本体はそんな姿ではないねぇ」


「!?俺の本体が分かるのか!?」


「あぁ、あたしの能力は『見極める程度の能力』でね。ただあんたの本体は朧気にしか見極められないねぇ」


「…そうだな、折角だから公平にいこう。俺の名前は青、饕餮だ。能力は『化ける程度の能力』、お前が見極められないのも能力同士のぶつかり合いがあったからだろう」


「ふふっ、いいねぇ、こういう奴はあたしゃ大好きだよ!それに饕餮とは、思いもかけない場所で思いもかけない強者に会えたねぇ!さっきの天狗といい、今日は強い奴らと戦えて気分がいい!あたしの名前は葵、鬼子母神だ!

この勝負、勝たせてもらうよっ!」


葵の宣言と共に彼女の妖力が辺りに吹き荒れる。

…これは俺と同等以上の量かもしれん。

気合いをいれていかなければやられる!


抱えていた天魔を近くの天狗に預けると葵の方に向き直る。


「では、この勝負勝ったら天狗は山に残り、負けたら立ち去るということでいいな?」


「おうよっ!じゃあいくよっ!」


「こいっ!」




次の瞬間には辺りは爆音と土煙によって包まれた。

第十六話投稿でした。



ちゃっかり妖力加工済の鉄を調理用具にした青。

付喪神にしてみたい…




そして結局鬼に叩きのめされてしまった天魔さん。苦労人です。


青の予想が当たったことで勃発するバトル of モンスターペアレント in 妖怪の山。


なんという世紀末。


次回は初の本格的戦闘描写ですね。戦闘描写苦手…




受験がやっと終わった!

後期?滑り止め受かったからもういいんだよ!

……もうゴールしてもいいじゃないか…


感想待ってまーす。


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