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盤上に命を賭す者たち ―サクリファイス学園・一年後のチームバトル―

作者: 神楽坂遊月
掲載日:2026/02/27

※本作は連載中作品『サクリファイス学園』と

同一世界観の特別編短編です。

本編より約一年後のチームバトルを描いています。

一部設定は連載版と異なる場合がありますが、

本作単体でもお楽しみいただけます。


歓声がどこからともなく聞こえてくる


まもなく始まる対戦と大きくなる歓声に僕の鼓動は大きくなり最大限の主張をし始める


呼吸が浅くなり、少しずつ視野が狭くなっていく。


それも仕方のないことだ。

この学園のチームバトルは、敗北=退場を意味する。

盤上で倒れた駒は、二度と戦場には戻れない。


そう、ここは、間違えれば仲間を失う戦場だ。


緊張でミスをしないためにも、

胸に手を当て、少し下を向いて深呼吸をする。


落ち着かせようと集中していると不意に後頭部に軟らかい感触があり、いい香りに包まれた


「大丈夫よ キセロ 貴方が失敗しても皆でカバーするからいつも通りでいいのよ」


「またかよリーダー あんたのお陰でみんなここにいるんだ 戦闘は任しとけ」


後ろにいたメンバーからの声に気が付いたら緊張は解けていた


「皆ありがとう 絶対に勝とう じゃあ行こうか」


そう伝えフィールドへ足を進めた



国立第一特殊学校


ダンジョンとチームバトルが特徴的な学園である


ダンジョン?チームバトル?それは一旦置いておこう


そんな学園で今日は大注目のチームバトルが行われようとしていた


会場である第3クラブバトルアリーナには入りきれない程の人が押しかけ


席を取れなかった人が実況だけでも聞こうとアリーナの周辺で立ち聞きするほどである


「会場の皆さんお待たせしました 【イグニス】対【ユートピア】のチームバトルが開始されようとしています」


「新進気鋭の1年生だけで構成されたDランクチーム【ユートピア】 過去に見ても最速のCランク昇格戦に挑戦しようとしていますね」


「対するCランクチーム【イグニス】は炎の属性をメインに使うメンバーが多いチームです」


「火力重視ということもあり強いですねCランク防衛戦では何度も勝利しています しかし速度が無いのは【ユートピア】に対してはキツイのではないでしょうか?」


「確かにBランク昇格戦で戦ったやや速度重視の【ママラガン】相手だと速度不足で競り負けていています 【ユートピア】はどう立ち回るのでしょうか?」


「キセロ様の戦術に欠点はありませんよ!」


「確かに以前のチームバトルでは完璧な立ち回りをしている【ユートピア】ではありますが、僕の注目はどこから持ってきたか分からない”ジョブ”についているメンバーです」


「確かにそこも注目ですが、それだけじゃありませんよ! チームリーダーのキセロ様の顔や完璧で隙のない戦術も非常に注目です」


「カサーロちゃんはキセロ君推し「様な!」あ、はい。のようです(笑) さて試合が始まりそうなので今回のレギュレーションを確認しましょう」


「今回のレギュレーションを発表します ルールは基本チェスと同じでナイトとビショップの駒落ち プロモーションの制限あり キャスリングなし となっております」


「今回もルールをわからない人の為に要所要所で説明をしていきますので安心してください おーっとここで選手入場してきました」


「防衛側【イグニス】は有利と言われている先手白コーナー、挑戦者側【ユートピア】は後手黒コーナーより入場です。盛大な拍手をお送りください」


説明の終わったカサーロが見つめる先にはいつも以上に気合の入ったようなキリッとした顔のキセロがいた



歓声に包まれながら入場した俺たちは白と黒の市松模様に塗り分けられた盤(チェス盤)の各マスへ向かった


一マスの大きさは各50m程でありバトルを行うにはちょうどいい大きさである


盤面には白チーム【イグニス】から黒チーム【ユートピア】へ1列ごとに1番から8番と番号が振られている

よって2番には白のポーンが7番には黒のポーンが並んでおり、壁のように見える


1番の列にはAの行にルークがD行にクイーン、E行キング、H行ルークが配置されている

特定のマスを指す時にはA1やD6など行と列の番号を連続して呼ぶことでそこの交わった部分と分かるようになっている


ここで行われるのは簡単に言うとガチバトルするチェスだ


突然だが、将棋やチェスをやったことのある人は考えてみて欲しい


「クイーンや金がポーンや歩に負ける訳なくない?」

「明らかに格上の相手だ勝てる訳ないだろう。 腑に落ちない」


なんて思うことはないだろうか? 少なくとも俺はある


このバトルでは駒同士で戦うことにより狙って特殊な状況にしない限り一方的にやられるようなことはほとんどない


様々な制約があったりするので相性がいい人を対戦させるのがセオリーではある


よって色々考える必要がありとてもエキサイトだ


考えることの多さに気疲れしながらも黒のキング(E8マス)の場所へ到着した


「両者礼!」


両者が位置についたのを確認して審判役の先生から号令があり俺は頭を下げる


頭を上げるついでに相手のことを観察する


相手の配置や装備などを見てもほぼいつも通りのようだ


何も問題はない準備万端だ 大丈夫 いける


『ピィィィー!』


試合開始の笛が鳴り響くと会場全部が集中しているような静寂が訪れる

(実際には防音・防衝撃シールドが張られただけであるが)


「”南国の風” ポーンD2よりD4!」


笛が鳴り終わると相手のキングからのバフ(火属性強化)と号令が飛ぶ


その号令と共に相手のチームの大剣騎士が前に出てくる


「相手のお手並み拝見ということで ”俺様についてこい” モーザC7からC5へ」


「あいよ」


同様に全員にバフを掛けて指示を出す(このスキルを口にした時の試合始まった感がホントに好きなのは内緒である笑)

小さな返事が聞こえると同時に彼女は尻尾を振りながら駆け出していく


彼女は獣人(犬人)である為、感情を無意識に尻尾で表現していることが多いのだが

今は千切れそうなくらいぶん回してるので実際には凄い楽しみなのであろう


目的のマスへ到着した彼女は小さく呼吸をした後、愛刀【蕾】をすぐに抜けるようスタンバイした

チェスのポーンは基本、真っ直ぐしか進めないが道を防がれると先に進めないし、斜め前の駒でないと取れないというルールがある

つまり現在斜めのマスにいる相手の大剣騎士とモーザはいつでも開戦出来る状況なのだ


「ポーンD4よりC5へアタック! 仕留めろ」


「よーし許可が出た!女をボコボコにするのはちょっと気が進まないが黙ってやられてくれよ」


「は、たわけが過ぎるぞ 何でもいいから来るがいい」


理解(わか)らせてやるからな 後悔するんじゃねぇぞ」


そう叫びながら大剣騎士はモーザのいるマスへ駆けていった


「てめぇごときこれで十分だ! ”イグニッション” ”溜め振り下ろし”」


イグニッションで自身の大剣に火属性を付与して火属性追加ダメージと溜めることによる攻撃力追加をしようとしてくる


「遅い!遅いぞ! そんなスピードであーしに攻撃を当てようなんて甘いわ ”溜め消し” ”鎧剥ぎ”」


相手が溜めている最中に攻撃を当てることにより、スキルを失敗させ物理防御力を低下させる


「クソがっ…… ”薙ぎ払い”」


逃げられないように大剣を無理やり横に薙ぎ払うもスピードが速いモーザには掠りもしない

攻撃力が高くても当たらなければ意味がないのだ


「亀より遅いわ そんなでは好きにやってくれといっているようなものだぜ ”足止め”」


”足止め”で速度低下をされた相手の大剣騎士はモーザの相手では無かった


「クソッッ ちょこまかと逃げ回りやがって」


「あんたの剣が遅すぎて、普通に避けても間に合うってだけさね そろそろ終わりにしようか」


「そんなに簡単にやられてたまるか! ”守りの構え”」


「隙だらけだよ ”終いの型”」


「嘘だぁぁ」


大剣騎士は碌な抵抗が出来ないまま退場するのであった


「白攻撃失敗 黒手番」


バトル中にHPを0にされると退場になり、相手の手番に移るので本来は準備が出来るまで攻撃するのは良くない


しかし、最初だからということ様子見で攻撃してきたのだろう


相手が再度責めてくる前にモーザを回復させよう


「セシーリア、D8からB6へ」


「ふふっ わかったわ」


クイーンの位置にいた女の子”セシーリア”に指揮を出すと予想していたかのように歩き出した


「着いたわ モーザさん”まだ頑張れますわよ”」


「サンキューなセシーリア 誰が来ても大丈夫そうだぜ」


クイーンは回復役(ヒーラー)でないとなることは出来ない

特化しているというだけで攻撃も出来る。苦手というだけだ


「くっ…… ポーンC2からC4へ」


相手はこれ以上モーザが出てこれないように通せんぼをしてきた


「じゃあ飛び道具の準備しようか セーイスH7からH5へ」


「うん」と小さく頷くとマイペースに歩いていく


こちらが飛び道具であるルークを出そうとするが意図に気づいてないらしくC4のヘルプでポーンをB2からB3へ移動させてきた


作戦を変更する必要は無いのでルークであるリンドウに声をかける


「リン H8からH6へ」


「御意」


こちらがルークを動かすと相手もルークをA1からC1へ移動させてきた


では相手のヒーラーにプレッシャーを与えるためにリンをH6からD6(クイーンの正面)へ移動させる


回復役(ヒーラー)がやられるのは御免だ! クイーンD1からC2!」


相手はクイーンを攻撃されるのを嫌い攻撃できない位置へ場所を移動させてきた

やはり回復がいるだけで気持ち的には少し楽になるというのは同感だ


攻撃されても回復する暇なく攻撃するため、セーイスのヘルプとしてポーンをG7からG6へ移動させると

相手のキングの前にいる魔術師の格好をしたポーンがE2からE4へ進んできた


魔法アタッカーは非常にいやらしいことに自分の立っているマスから攻撃可能周囲1マスに魔法を届かせることが出来る


これだけ聞いてもいやらしいか?と思われるかもしれないが、戦闘時の移動範囲に制限があるというルールによってゲーム性が増している


例えば、ルークは斜めに進むことが出来ない。よって戦闘時も斜めのマスへ移動することは出来ないのである


そこに魔法アタッカーが斜めのマスから魔法を打ってきた場合、自身のマスから出る事が出来ず一方的に攻撃をされてしまうのである


じゃあ皆魔術師になったらいいのではないか?と言われるとそうではない


例えばポーンの魔術師は攻撃時斜めにのみ攻撃が出来る。よって縦や横から攻撃されると短距離で戦闘をする必要がある


魔法をチャージして打つ間に物理攻撃を受けるとチャージが無かったことになるという魔法アタッカーの特性により短距離の戦闘は非常に不利になる


という距離によって有利・不利が逆転してしまうので一方的に撃破されてしまう


しかしまだ攻撃範囲外なので全体的に相手陣地へ駒を進めるためポーンをA7からA5へ前進させる


相手はよほど飛び道具が怖いのかリンを攻撃出来るようにE4からE5(リンの斜めのマス)へ移動させてきた


こっちも相手の思惑に乗る必要性がないのでリンをD6からE6へ移動させる


相手もただで取られるつもりはないと弓士ポーンをF2からF4(最初の魔術師ポーンの斜め後ろ)へ移動させてきた


「そろそろ対人戦を開始しようか ベラD7からD6(リンの横・魔法アタッカーの斜め前)へ」


「承知しました」


珍しくというより初めて見たスキップをしながら目的のマスへ、ベラは移動していった 余程出番が嬉しいらしい


ここまでは両軍を前進させて互いに長い様子見をしていたがここからは一気に決めていく


白のキングもこちらの思惑に気づいたのか顔を白くしていた


この一手は対人戦を始める中盤戦を急かす一手である。そして、相手のキングを威圧する目的もある


「クイーンC2からE4!回復準備」


ここで【イグニス】のキングから絶妙な手ともいえる一手を打ってきた

自身への圧力を逃がし、対人戦に向けて回復出来るようにしている

伊達にCランクまで上り詰めていないなと関心したが回復役が出てきたならこっちは圧力をかけるのみ


「エリ!F7からF5(クイーンの斜め前)へ」


「分かったわ」とエリは前進していった 傷1つついていないエリの鎧は光を反射し燦々と輝いている


味方としてはかなり頼もしいのだが、相手には絶対にしたくないものだ


威圧感が凄く近くに来られたら恐怖でしかないだろう

普段はただの小動物ぬいぐるみが好きな可愛らしい女の子なのはここだけの秘密だ


「ちょ……おい!待てっ……」


急に【イグニス】のキングから怒鳴り声が聞こえたので声の方向を確認するとクイーンの女の子が尻もちをついていた

恐らくエリから感じるプレッシャーに体が無意識に後ろに下がってしまったのだろう

ただその尻もちをついてしまった場所が問題であった


尻もちをついいた部分は先ほど移動したマス(E4)の1つ斜め後ろ(D3)なのだ

本来キングからの指示があってから移動するが各自が勝手に移動するのも可能なのである

実際キングより頭が良くて指示を別の人が出している場合もあるし……


ただ今回は皆が想定外なのである。なのでキングは大きな声を出したが時すでに遅し

【イグニス】は貴重な一手を使ってしまう


一応キングからの指示がなく移動し、戦闘していない場合の救済措置として

相手の手番となる代わりに一手戻すということも出来るがやってこないだろう

一手戻すと回復役のクイーンはほぼ一方的に攻撃されて退場してしまうからだ


相手のキングが審判へ救済措置を使わないことをジェスチャーしたことを確認して次の指示を出した

「ベラ E5(魔術師ポーン)へ攻撃 行っておいで」


「イヤッ……承知しました」


出番が来たことに喜んではしゃぎそうになっていたが、すぐに落ち着きこちらにペコリと頭を下げるとすぐに戦闘準備をする

互いに準備が出来たのを確認し審判役の先生が戦闘開始の(ゴング)を鳴らした


「では早速……”クイックバレット”」


「キャッ…… 相手が早いから十分に魔力を溜められない……」


「まだまだいきます”死へ誘う踊り(バレットダンス)”」


両手に片手銃を持つベラが逆手のチャージを早め片方ずつタイミングをずらし攻撃を放つことで相手にチャージをさせないようにしている

【イグニス】は火力を出すステータスの振り方をしていたせいで速い攻撃に完全に対応出来てない


「一方的にやられるつもりはありません! ”エアウォール”」


相手は魔法の中でも速度に定評がある風の魔法を使い防壁をなんとか展開する

しかし、ベラの攻撃の前では一瞬しか持たない


「そのくらいの壁すぐに壊して見せます。 ”合成弾 火と風(ファイア&ウインド)”」


「すぐに壊れるのは予想済みです! ギリギリでしたが”ファイアウォール”」


「強度が弱いものを順番に壊している間に強い壁を作って攻撃してくる作戦ですね…… ですが残念です”消失弾(イレイズ)”」


「えっ…… 嘘……」


本来ならば合成弾でも3発、通常弾で10発程の耐久性があったはずである。 それが一瞬で壊れ動揺してしまった


「反撃していただいても構いませんよ。出来るなら”装填速度上昇(クイックリロード)”」


「ただでやられるわけにはいかないのぉぉ」


とはいいつつも速度が上がっているベラの前では一方的に攻撃を受けるのみで攻撃に転じることが出来ない


「反撃お待ちしておりますよ ”音速弾(ソニックバレット)”」


「反撃させる気なんてないじゃないのぉ……」


その通りである。ビックリするぐらい言葉と行動が嚙み合っていないが一方的に勝てるのであれば問題ないのである


「そんなことないですよ ですがこれで最後ですね ”合成弾 火と火(ファイア&ファイア)”」


「得意技で負けるなんてっ……」


という捨て台詞だけ残し【イグニス】の魔術師は退場してしまうのであった


「黒攻撃成功 白手番」


「回復させる暇なんて与えるか! ポーンF4からE5へ攻撃!」


【イグニス】は消耗したベラに対して連続で攻撃をし、退場させようとしてくる


互いに準備が出来たのを確認次第、(ゴング)がなり、【イグニス】はすぐに仕掛けてくる


「これで退場してもらおう ”ファイアアロー”」


「連戦ごときで勝てるとお思いで? ”合成弾 風と風(ウインド&ウインド)”]」


相手の火の矢を風によって無理やり曲げて直撃を回避したが火の余熱で多少のダメージが入る


「まだまだ行くぞ!”三分裂射”」


横に向けた弓で3本の矢を一気に解き放たれる


「これは危なそうですね ”煙幕(スモーク)”」


濃い煙を出して相手の攻撃をミスさせようとするが、一本掠ってしまい再度ダメージを受けてしまう


「避けるだけでは何も出来はしないぞ”連射”」


ベラがどこにいるかはわかってないが数打てば当たるの原理である

実際数本掠ってしまいダメージを負ってしまう

先ほどはタンク相手で攻撃がメインだったが今回はアタッカーが相手の為回避が続き攻撃出来ていない


「この煙が面倒だな…… ”ウインドアロー”」


この一本で煙がすべて晴れてしまい隠密が出来なくなってしまう


「そこにいたのか…… ”必中矢”」


あっさりと見つかり準備中に攻撃されてしまう


「これは困りましたね。ですがここで【ユートピア】の為にも負ける訳にはいきません。連戦の為の温存をせず全力で行かせていただきます ”幻影(ミラージュ)”」


「はっ…… 強がっていたくせに偽物を出して逃げるだけか? そんなもの一瞬で消してやる ”連射”」


近くにいる幻から一体ずつ攻撃されていく間にベラは更に姿を隠しながら攻撃準備をしていく

決して気づかれないように“動かない本物(ハイドアンドシーク)“をかけてある


このスキルは幻の中でも本物である自分が動いてしまうと幻は動かないのに自分は動いてしまう

そこで本物のすぐ前に幻を出して本物が動いてるのを見えないようにするというスキルだ

本来逃走率アップのために使われるが対人戦では相手を攪乱するために使われる


「逃げやがったのか!腰抜けめ! タイムアップを狙ってるのか?とっとと出てこい」


「そのようなことは致しませんよ そちらも幻でございますよ では攻守交替と行きましょう”拘束弾”」


状態異常を引き起こす攻撃はかなり警戒されてしまう

状態異常は一度かかってしまうと追加でかかりやすくなるからだ

状態異常耐性をしていないと初撃が当たればそのまま退場することも珍しくない


「くっ……まんまと引っかかったがこんなものすぐに解いてやる」


完全に隙をつかれた【イグニス】の選手は”拘束状態”になってしまう

”拘束状態”は状態異常の1つで一定時間(ステータス等により左右される)が経つことにより解除される


「”拘束”は序の口に過ぎませんよ 本番はこれからでございます ”猛毒弾” ”麻酔”」


いわゆる薬漬けというやつである


「正々堂々と戦えよぉ……zzz」


「勝てば官軍ですよ 次起きたら医務室なので安心してください それではごきげんよう」


状態異常のまま【イグニス】の選手は退場してしまうのであった


「白攻撃失敗 黒手番」


「ふみゅ…… ご主人様 もう無理ですぅ」


「キャラ崩壊してるぞベラ お疲れ様」


連戦したベラはHPの7割が残っているもののMPはすっからかんであった

回復しないまま戦うと間違いなく負けてしまうだろう

ただ回復より次の局面へ進むことにしよう


「リン E6からD6へ」


これで【イグニス】のクイーンへ圧力をかけていく


「クイーンD3からB1」


やはり回復役(ヒーラー)は大事なのですぐに後ろへ下げていく

そこでリンの反対側にいたルークへ声をかける


「ヘスティア 二枚槍で行くぞ A8からD8へ」


ルークを2枚縦に並べ相手の陣地へ火力強めで攻撃をする準備が出来上がった


「これでやられたら負けてしまう 絶対に勝ってくれ ルークC1からD1」


正直これで勝つことが出来たら上等だ。なんなら大金星といっても問題ではない

だがそんなことは絶対に起こさせない


「リン 決めておいで D6からD1へ」


「御意! 参る」


リンは真っすぐ相手に向かい走っていく

ルークは起源として戦車や城を表していることから騎士関連のジョブについていないといけない

よって魔術師系ではルークは出来ないのである

となれば【ユートピア】の騎士は負けないと強く思っている


「我が名は”リンドウ” 貴殿を倒しこのバトル勝たせてもらおう ”士気高揚”」


「その意気やよし!我は”リック”返り討ちにしてくれようぞ”捨て身”」


リンは大楯に片手剣を、リックは両手槍を構える

少し睨みあう両者は全く動こうとしない


本来であれば両手槍のリックの方がリーチの長さを利用してリンを近づかせないのがセオリーだ

しかしリンのプレイヤースキルはかなりのもので下手に飛び込めばカウンターからの防戦一方になる


「そちらから来ないなら行かせて貰おう “ガードラッシュ“」


相手の間合いへ1度入った後に自分の間合いで戦う為攻防一体の技で前進する


「そちらの間合いにはさせん “薙ぎ払い“」


まだ攻撃されてはいないもののしっかりと距離を取る


「逃げるなら追わせて貰おう “乱れ突き“」


逃げるリックに対し追いかけるリンというセオリー無視の対決になっている


「隙が無い上に牽制するとやられる ここで負ける訳にはいかんのだ」


過去一番戦いづらい相手にリックは困惑していた

そしてここで負けてしまうと後が無いのも分かっているためリンの攻撃に集中し下がりながらも避けていく


「逃げていても勝利は掴めぬぞリック殿」


「騎士道に反するが勝てばせずとも10分のタイムアップまで凌げばまだ舞えるのだ」


「残念ながら貴殿の思い通りにはさせはせぬ」


「何!?」



ドンッ



不意に背中が何かとぶつかりリックは勢いそのままに押し返される

謎の衝撃のおかげかリンに集中していた視野が広くなり自身の立ち位置に気づく


「いつの間にこんな角に……」


「残念ながら追い詰めさせて貰った そこで後8分程攻めさせて貰うとする」


「ま、まさか最初からこれを狙っていたと……?」


「無論」


「“ガードラッシュ“も“乱れ突き“も当てに来ているように思えたが……」


「そうでないと意味が無いであろう」


「こんなに差があるのか……?」


「では長話はこのくらいにして いざ参る」


そこからの展開は一方的であった

衝撃のカミングアウトにリックは冷静さを欠き防御すらままならず退場してしまうのであった


「黒攻撃成功 白手番」


【イグニス】のキングは顔面蒼白になっている

リックは【ユートピア】でも危険視していて確実にリンかヘスティアを対戦させるか魔術師ポーンに戦わせるプランとなっていた

今回はもしものことを考えてリンの後ろにヘスティアも待機させていたのだ


ここで【イグニス】のキングは安直な逃げの一手を取ってしまう

自分のいたE1のマスからE2へと出てリンの攻撃を避けた


「追撃しよう ヘスティア D8からD2マスへ」


「了解デースヨ!」


相手のキングへの圧力をかけまともに考えられないようにする


再度【イグニス】のキングはE2からE3へ出て直接攻撃されないように逃げた

先ほどまでの蒼白になっていたその顔はなにやらスッキリとしたものに変わっていた


既に最終局面だといっても過言ではない

最後の準備だけしておこう


「セシーリア B6からD6へ ベラを回復して」


「わかったわ ベラさんお疲れ様ゆっくりしてね ”まだ頑張れますわよ”」


「言ってること矛盾してるよー でもありがとう」


まだキャラ崩壊は終わってなかったようだ

仕事はきちんとしてくれるだろう


「クイーン B1からA1」


【イグニス】のキングの宣言に会場全体がどよめいた

誰もが絶対にしない勝負を諦めた一手だからだ

実質的な投了宣言と同様である


「セシーリア D6からD3へ 総員準備!」


「チェックメイトです!」


審判の先生から宣言されると同時に【イグニス】キング以外の選手がいるマスの周りにある透明のバリアが薄緑に変化する

またそれ以外のマスの間にあるバリアはすべて解除される


チェックメイトになるとキングは相手チーム全員に攻撃をされてしまう

本来であれば対人戦にある10分の縛りもなくなる

つまりキングが最強でない限り絶対にやられてしまうということだ


【イグニス】のキングは投了せず栄光あるCランクチームとしてのプライドなのであろう

一切防御することなくヘスティア・ベラ・リン・エリの猛攻を受け退場するのであった


「試合終了!勝者【ユートピア】」


この宣言と同時に観客席との間にあったバリアが解除され多くの声援が聞こえてくる

勝利した実感と共に安堵感が押し寄せてくる


【ユートピア】のメンバーが走ってきて、もみくちゃにされるが最高の気分だ

【イグニス】のメンバーが泣いているのが見えるが【ユートピア】のメンバーには絶対にこんな顔はさせないと強く誓った



本作は連載中作品『サクリファイス学園』と

同一世界観の特別編です。

気に入っていただけたら、本編もぜひご覧ください。

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