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第五日 腐敗

ーーーあらすじーーー

昨日、反体制派組織のアジトを捜索していたところ、パルチザンに襲撃され、一時捕虜になってしまったものの、交渉でパルチザンとの個人的な休戦条約を結んだ。

ーーー人物紹介ーーー

・オスカー・ガルフィリノ(27)

20代で第77人民正常化部隊の隊長となった。軍に入ったのは、家庭の貧困化によるものであった。


・ニューラル

オスカーの同僚。狂信的な人民友愛主義者。

「..よって、本日より、配給の量が変更されます。減量される配給はパン500gから350gへ、米1400gから1000gへ、油50gから35gへなど、全27項目の配給が減らされます。増量される配給はジャガイモ1750gから2000gへ、トウモロコシ粉750gから1000gへなど、全8項目の配給が増やされます。これからも共和国の防衛のため、節制に励くみましょう。」


 ..クソみたいな朝刊が、配給袋の中身が盗まれたとか、動物に食べられたのではなく、本当の配給であることをオスカーに悟らせた。白に土がついている袋を開けると、底には前よりもあきらかに減った米とパンが沈み、その上を埋めつくしているのは芽の出かけているジャガイモと黄色い粉の袋だった。油は小瓶の半分しかない。前までは、4分の3しかない。これで7日を生きろというのだ。確かに、腹は膨れるかもしれない。しかし、人間が、しかもカロリーを最も使う軍人が食べる代物ではなかった。あぁ、クソが。


 外食とか、普通に米とかをスーパーで買えることもできるが、価格が庶民レベルじゃない。実質富裕層専用だ..だが、何もしないままだと4日後には体が冷たくなっているだろうな。スーパーが何かしらのミスで後ろの0を消していることを祈って、都心に向けてバスに乗った。


 「..あぁ、何も変わっていないな。安いのは、よくわからないもちのようなものだ。あとは水くらいか?」


 オスカーは不満が腹八分までたまる思いだった。あとは、まさに手が届かない商品が大量に並んでいる棚と、空になっている棚と、たまに点滅する照明であった。


 「結局ただの水しか買えなかったな..」


 水道水は浄水しなければ使えない。軍には浄水器が無償で手に入れられるが、やはり、感情として飲みたくない。水をそれなりにボロボロのカバンに入れ、次のスーパーがないか探す..しかし、何やら人が大勢いる裏通りを発見した。


 「..これは、まさか..闇市のことは頭の片隅にあったが、まさかここにあったとは。入ってみるとするか..」


 オスカーは興味深そうに闇市に入っていった。

 

 「..しかし、軍服姿の人間が入った瞬間、人の目が一斉にこっちにくる..闇市のことを上に報告されると考えているのだろうか..」


 オスカーが品揃えをチェックすると、米一杯が炊かれた状態で袋に入れられたり、何かいろんな草が入っているほとんど水に近いようなスープが売られていた。多分、そこらへんの地面から栽培したのだろう。あまり売られてはいないようだ..あとこれは..ゲームか?ピンボールのようだ..飲み物食べ物以外にもあるようだ。


 「いらっしゃい、軍人さんかい?」


 瘦せこけたおばあさんがオスカーに向かって話し始めた。


 「はい、そうです。」


 「私のこと、助けてくれないかね?去年、片方の目を失明してしまってね..ほら、目が白いでしょう?」


 確かに..失明しているようだ。


 「えぇ、しかし、私にはこの水しかないもので..」


 「このじゃがいも、一袋分あげるからその水くれないかね?」


 「..あぁ、やるよ。」


 オスカーがまだ飲んでもいない水を台の上に置くと、赤い網の袋に大量に詰めてあったじゃがいもを取った


 「しかし、このじゃがいもどこから取ってきたんですか?」


 「あぁ、私にはそれなりに大きい農場があってねぇ、そこから収穫したのよ。」


 「へぇ~..しかし、本来農民は収穫物のすべてを政府に渡すという法律があったのではないのですか?」


 「そんな法律、利益のまえには無駄だよ。はっはっはっ...」


 「..では、失礼します。」


 「えぇ、またきてくださいね。」


 「..あぁ。」


 兵舎に帰還後、そこには同僚のニュータルが横になってゴロゴロしていた。


 「お、そのじゃがいもはなんだい? 見た感じ、配給のものではなさそうだが。」


 「あぁ、これかい?これはスーパーで手に入れたものさ。なぜか安くなっていたからな。」


 「そうか、俺にも一個くれないか?マッシュポテトにして、お前にくれてやる。」


 「ありがたいな。そうさせてもらうよ。」


 オスカーがニュータルに土がついたじゃがいもを投げ渡す。ニュータルがベットから立ち上がると、そのままキッチンに行って調理を始める。


 その間夕刊を見ると、どうも評議会で新しい法律ができたらしい。「"指導者"の誕生日である4月15日を新しい祝日とする」..祝日なんて、軍の俺らにとっては関係ないが..


 その後の天気予報だったりを見ているうちに、もうできたようだ。半分にわけられている。おそらくニュータルも食べたかったようだ。


 ..やはり質素だ。バターの味がかすかにしかしない。バターの配給だって今週から減った。先週の今日は2個分のバターがもらえたのに、今日じゃ1.5個しかもらえなかった。


 このマッシュポテトのごとく市民の不満が溜まってしまえば、この国はバラバラになってしまう。そんな混乱よりも、反体制派にこの国家の舵を託すのもありなのかもしれないな..そう、本気で考えるオスカーなのであった。

心臓を捧げてでも、この共和国を防衛せよ!

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