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第四日 中立

ーーーあらすじーーー

昨日、人民広場での大規模デモを鎮圧したオスカーたち。その後、気分転換にカフェに友達といったが、その友達が"指導者"に狂信しており、それに対して不満を募らせるオスカーであった。

ーーー人物紹介ーーー

・オスカー・ガルフィリノ(27)

20代で第77人民正常化部隊の隊長となった。軍に入ったのは、家庭の貧困化によるものであった。

 ...オスカーら第77人民正常化部隊はまた、名も知られぬ森に入っていた。


 「人民保安省は、南にある第24村付近の森にパルチザンの小隊、20名ほどが潜んでいるアジトがあることを確認した。具体的な場所は不明だが、2日でも3日かけても捜索し、パルチザン全員を処刑しろ。また、昨日の人民広場での事件を受け、君の部隊の人員を大部分別の部隊に移動させ、治安維持に対応させる。一時的とはいえ、今回は12名で対応してくれ。」


 ...とのことだ。具体的な場所が不明だって?しかも、たったの12人で?それで20人と戦えってか。ふざけんなよ..


 文句をいってもしかたない。部隊は横一列となって行進し、いつ敵がこちらに奇襲されてもいいように備えた。


 ..静寂。足音しかないこの森。パルチザンがいるとは思えないほどだ。静かすぎるほどだ..


 ...ダッ、ダッ、ダッと、落ち葉を踏みつける音が、この森を支配している。


 ..しかし、その静寂を破る、しかも人の声が聞こえた。


 「降伏しろ。」


 そう言って、木の上から一斉にパルチザンらしき帽子と制服をしている、コウモリの如く伏せていた数人の人間が一斉にこちらに銃を向けてきた。


 部隊は一瞬混乱したが、2人の隊員がパルチザンに向けて照準を向けた。その瞬間別の岩に隠れていたパルチザンがその隊員の頭にそれぞれ鉛玉を練りこませた。


 オスカーはこの状況で、一瞬で判断しなければならない。頭から血をプシューっと出している隊員を見ながら..


 「わかった。降伏しよう。その代わり、我々の安全を守るならな。」


 「はっ、もちろんさ。お前らはまだ「使える」。」


 「..皆、銃を捨てろ。」


 オスカーは、確実に戦闘によって死ぬことより、まだわからないが処刑による死を選んだ。あんなに上手く隠れているんだ。絶対に死んでしまう。


 そして、第77人民正常化部隊は、全員パルチザンの「捕虜」となった。「捕虜」は個別に尋問をされ、隊員全員の運命は隊長のオスカーの手にある。そして、オスカーの尋問の時間が始まった。


 ギィーッと、重い金属の扉を開ける。角には書記と思われる人間が一人おり、目の前には固い椅子に座っている女性がいた。


 「失礼します。」


 「おう、ここに座れ。」


 「あぁ、わかった。」


 オスカーは、少しイライラしながら座る。


 「お前の身分証を出せ。」


 「..これだ。」


 少し躊躇したものの、自分の身分証を明け渡す。


 「..ほうほう。この部隊の隊長か。」


 「あぁ。」


 「名前はオスカー・ガルフィリノか..あぁ、そうだ。私の名前はクリスティーナ・ロフノラだ。ここのアジトのリーダーを務めている。」


 「クリスティーナか。よろしくな。」


 「..ふっ、この状態でもそんな態度とれるのか。まぁ、その方がいい。変に気を使われるのはあまり好きじゃないんだ。」


 「はぁ。ところで、俺らは殺されるのか?それとも拷問をされるのか?」


 「それはお前の答え方によるぞ。」


 「じゃぁ、質問をさっさとしろ。」


 オスカーは、この呪われた人生に執着など持っていなかった。次は"指導者"になれたらいいなと考えていた。


 「お前は、パルチザンの味方になるのか?それとも、あのクソッタレの"指導者"の味方になるのか?」


 一瞬、考えた後。


 「..どっちでもないな。」


 「というと?」


 「俺はあの"指導者"のことは好きじゃない。むしろ反吐が出る。ただ、お前らの味方に付いてなにになるんだ?俺にパンを一週間分でもくれるのか?別にお前らと戦いわけじゃない。いかに俺と俺の家族に利益があるかだ。」


 「..なるほどな。一理あるな。じゃぁ、休戦条約を結ぼう。」


 「..あぁ、パルチザンに入るかは後々決めるさ。」


 「一応だ、弾丸を私たちにくれないか?」


 「なぜだ?」


 「お前らが戦闘したっていう証拠だ。弾丸が減ったら、そういう証になるだろう?」


 「..あぁ、後で与えてやる。」


 「...契約成立だな。握手でもしておくか?」


 「やってやるよ。」


 お互いの力を最大限感じるような握手であった。あと、オスカーは聞きたいことがあった。


 「..ところで、俺らの隊員2人が死んだんだが、どうするんだ?」


 「..彼らが我々に反発した代償と考えておけ。今日の会談は終わりだ。また、もう一回することがあるだろうな。」


 「それが処刑前の最期の会談じゃなければいいな。」


 「それはお前にも言えることだろう?」


 「はははっ、じゃぁな。」


 オスカーは彼女の反発に少し笑いながら尋問室から去った。何か、別の道が開かれるような気がした。


 数十分後、オスカーは人民保安省へ、上官に報告するために来た。


 コンコン


 「だれだ?]


 「オスカー・ガルフィリノです。」


 「あぁ、入り給え。」


 「失礼します。」


 きしみ音とともに、上官の部屋に入っていく。


 「今回の任務の報告に参りました。」


 「ふむ、話したまえ。」


 「今回の作戦により、パルチザンのアジトが発覚、我々は突入し、パルチザン10名、我々の隊員、アレクサンダー・ショロフ、アンナ・ブローフリナが死亡しました。その他のパルチザンはどうやら逃げてしまったようです。」


 「なるほど..それで、結果はどうなんだ?」


 ..は?先ほどいったのだが..


 「パルチザンが壊滅したのであります!」


 「おぉ、それはよかった。これからも共和国の防衛に励みたまえ。」


 「はい!」

 

 「期待しているぞ。アラファリア友愛共和国に万歳!」


 「アラファリア友愛共和国に万歳!」


 上官の部屋にある大量の高級品に、いらだちを隠せないまま上官の部屋から去った。

パルチザンに入る人間なんて、人間じゃない!

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