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第三日 人民への教育

ーーーあらすじーーー

授賞式におけるスピーチへの不満と待遇改善の結果が米袋一袋しかもらえなかったため、不満がどんどんたまっていった。

ーーー人物紹介ーーー

・オスカー・ガルフィリノ(27)

20代で第77人民正常化部隊の隊長となった。軍に入ったのは、家庭の貧困化によるものであった。

 本日の午前12時、大勢の市民による人民広場での大規模デモが発生した。参加者はおよそ1万人程度とされ、「"指導者は退陣せよ!」や「友愛では腹は満たされない!」というスローガンが掲げられた。


 デモ隊が人民広場を占拠すると、その中の名も知られていない一市民が「アルファリアにおける民主的共和国の建設の要求」や「人権の拡大」などを要求するビラを配った。


 これらの状況を受け人民保安省司令部は「反革命主義者による共和国への破壊工作への鉄槌のため、軍を送る」と発表し、第6歩兵部隊、第93機械化歩兵部隊、そしてオスカー・ガルフィリノ率いる第77人民正常化部隊が人民広場近くに送り込まれた。


 三部隊は黒マスクをつけ、連携して人民広場周辺を封鎖し、人民広場を包囲するように陣形を作成した。


 「人民のみなさん、解散しなさい!さもなければ、我々は実力手段に出ざるを得ません!」


 と第6歩兵部隊の隊長が呼びかけても..


 「我々は一度掴んだ自由を二度と放さない!」「出ていけ!人民防衛軍のクソめ!」


 その呼び声に反発するかの如く、市民たちが各々石を投げ、中には火炎瓶をなげる者もいた。彼の投擲は見事なもので、左翼側を防衛していた第6歩兵部隊の盾にあたり、歩兵部隊の隊員の足に火の手があがりそうになった。


 しかし、三部隊の隊員は怯まずにデモ隊に走っていき、最前線にいた市民に向けて警棒をたたきつけた。


 前進すると同時にデモ隊が後ろの退却していった。中には勇敢に前に立ってロケット花火を三部隊に向けて放つような市民もいたが、外してしまいそのまま逮捕された。


 数十分ほどの格闘の末、デモ隊はちりぢりに別れていった。今回の結果、逮捕者は69名、負傷者は隊員2人を含め32名となった。


 デモ隊への対応後、三部隊の隊員全員に一か月の管理休暇を与えられた。


 1万人規模のデモをこんなに淡々と鎮圧させたことに、オスカーは自己嫌悪をせざるを得なかった。あの広場では鎮圧される時、大量の怒号、悲鳴、涙声が聞こえたはずだ。しかし、自分が覚えているのは、自分たちの部隊にロケット花火が放たれたことや、自分と同じくらいの年齢の男が自分の手で、警棒で殴られあざができていく姿であった。


 はっきり言って、そんな冷酷で、人間らしくなくなっていた自分のこめかみに銃弾を放ちたかった..あぁ、こんなことを考えても自分にマイナスしか生まれない...同僚と一緒にカフェにでもいって世間話でもするか..


 「おい、ニュータル?」


 「お、何かあったのか?」


 「一か月休暇もらったし、カフェとか行こうぜ。あそこのカフェ新しいコーヒー出たんだってさ。」


 「あぁ、暇だったから別にいいぞ。」


 「じゃぁ、あと10分くらいで出るぞ。」


 「あぁ、わかった。」


 そうして向かったのは、人民広場近くにある有名なカフェだ。先ほどまで血が流れていたとは思えないほど賑わっている。まぁ、少しボロが見えているが...


 「じゃぁ...このニューカプチーノで。」


 「自分はカフェラテでお願いします。」


 「はい、わかりました。」


 この店ではすぐ出ることで有名だ。国産マシンの賜物なのだろうか?それとも..そんなことはいいとし

て、オスカーたちの飲み物が出てきた。二人が対峙して4人分のテーブル席に座る。


 「あのな..正直言って俺は今の状態に満足していないんだよ...」


 オスカーが自分の不満を漏らすと


 「なぜなんだい?今の軍の生活でも十分だと思うが..」


 ニュータルはあまり同情せずに答える。


 「お前、昨日の夕刊見ていないのか?」


 「いやぁ..自分は新聞はあんまり読まないかなぁ..」


 「昨日、俺ら受賞されただろ?」


 「まぁそうだが..」


 「あれの記事があったが、あそこに俺らの名前は全然なかった。受賞者一覧のところしかなかったな。」


 「..別のそれでいいじゃないか。」


 「..は?」


 オスカーには一瞬、?が浮かび上がってきた。こいつは向上心がかけらにもないのだろうか? 完全にあの"指導者"の奴隷になってしまったのか? とにかく、何を言っているのかわからなかった。


 「なぜそんなに新聞の名前にこだわるんだ?そんなことより我らの"指導者"とこの友愛の共和国に貢献できる方に喜びを見出すべきだろ。」


 こいつは完全に狂っている..カルト教団の信者みたいだ。


 「あのなぁ..お前、もっと待遇のだったりとか、もっと上に行きたいとか..そういうの言いたくないのか?」


 「お前みたいな自分のためとかで俺は軍に志願したんじゃない。俺は"指導者"と友愛と共和国のために働いてるんだ。お前みたいな自己中心的な人間に文句は言われたくないな。」


 「自己中心的とかじゃない。自分の生活のために働くっていうのは当たり前じゃないか。なら、お前は給料がなくてもこの共和国のために働くとでもいうのか?」


 「あぁ、働いてやるさ。それが"指導者"の命令なら。」


 「はぁ..もういいわ、なんか疲れた..」


 「それが賢明だな。これを機に自分の考えを変えたほうがいい。」


 変わるわけないだろバーカ! ..と、心の中でしか言えない自分に悔しがるオスカーだった。

 

 そのあと1時間ほど家族の話だったり世間話をしたのだが、オスカーにとっては同僚の闇が見えたような気がして、一日中気分が悪くなったのであった。

指導者の名の元、共和国を前進させよ!

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