第二日 授賞式
ーーーあらすじーーー
昨日、反体制派組織のアジトを摘発し、構成員を処刑した。その功績により、授賞式が行われる予定だ。
ーーー人物紹介ーーー
・オスカー・ガルフィリノ(27)
20代で第77人民正常化部隊の隊長となった。軍に入ったのは、家庭の貧困化によるものであった。
オスカー・ガルフィリノはまた農村...ではなく"指導者"宮殿にいた。
昨日の反体制派組織のアジトの発覚によりいもずる式にその他のアジトも暴いたうえ、共和国一の武器工場の襲撃を未然に防いだことが、今回の第三級友愛勲章の受賞となったのだろう。
友愛勲章には第三、第二、第一級という階級があり、第三級は共和国の勤労市民、およびある程度の活躍をした人民防衛軍兵士に送られ、第二級が共和国の特に勇敢な勤労市民、偉大な発展に寄与した研究者や戦闘の中で活躍をした人民防衛軍兵士に送られるものだ。そして、第一級は戦闘の中で特に活躍し、自己犠牲をした兵士に向けて贈られるものである。
といっても、オスカーにとって正直どうでもよかった。上官の話が長すぎるし、変にこんなことに時間はあんまり使いたくなかったのである。
「...ここに、共和国の防衛に寄与したとして、第77人民正常化部隊全員に第三級友愛勲章を授ける。」
上官がスピーチを終えると、一人ひとりの胸に勲章をつける。しかし、この上官もとてる手が震えている..あぁ、次は演説かい?さっきスピーチしたのに?とオスカーは内心腹が立っていた。
「人民防衛軍の諸君!我々は友愛の名の下、我らが"指導者"のお導きにより、この闘争に勝利したのである!反体制派は壊滅し、人民は再び安寧の生活に復帰することができたのだ!」
上官の演説を聞いてオスカーはさらに腹が立った。そりゃそうだろう。自分が指揮してアジトを壊滅させたというのに、「友愛」だとか、「我らが指導者」のおかげと言っているようなものなのだからな。
..そうやってダラダラと無駄話をオスカーが聞いていると、授賞式が終わった。その後、兵舎に帰って一休みでもしようと思っていたら、おや。夕刊が届いてるではないか。この国にとって新聞などのメディアは数少ない娯楽だ。オスカーがその夕刊を見ると、一面にはオスカーたちの功績...ではなく、人民立法評議会に関するニュースであった。
一瞬落ち込んだが、第7面に授賞式に関するニュースがあった。そこには
「我らが”指導者”の大英断!」
という見出しがあった。ふざけるな!とオスカーは喉まで出そうになったが、そんな文句を言ってしまえば昨日の反逆者のごとく縄に吊るされてしまう..なんとかしてお腹に戻した。
自分たち第77人民正常化部隊は受賞者にあるくらいで、それ以外には名前が出てこなかった。あとは政府側の人間の発言くらいだ...ちくしょう。結局体制に忠誠を尽くしても、全部"指導者"のおかげで、実際にやった人間への称賛はない..オスカーは体制に対するいら立ちを強めた。
しかし、オスカーはなんとかなると考えていた。なぜなら、勲章をもらえるくらいの貢献をしたのだから、なんらかしらの待遇改善はあるのだろうと考えていた。
そして数時間後、上官からの電報が届いた。
「18時までに人民保安省に来てくれ。君について話さなければいけないことがある。」
とのこと。あと30分しかないとはいえ、ここから保安省までバスで20分でつける。間に合うとはいえ、もう少し早く言ってくれないかな..と内心でまた上官に対する不満を募らせるのであった。
首都のバスですら10分に一回程度しかない。まぁ、休日ならば5分に一回くるのだが..軍服姿なのであれば、バスの料金は無料となる。オスカーが運転手にチェックされたのと同時に、オスカーは乗客全員ににらまれてしまう。おそらく、乗客たちは人民保安省の諜報機関、友愛監視部に人間だと勘違いしているのだろう。
気まずいが所以、バスの一番後ろに座りバスに揺られ約25分。途中の少しの渋滞により5分程度遅れてしまったが、なんとか間に合った。
人民保安省の上官の部屋につくと、あの上官が待っていた。
「待っていたぞ。上官を待たせるなんてどうなっているのかね?」
「バスが渋滞してしまって..」
「じゃぁ一本前のバスに乗ってこい!渋滞くらいわかるだろう..」
いつもの如く説教をされるオスカー。これくらいは入隊訓練で何度も浴びせられたため別にオスカーはなんとも思わななかった。
「そんなことはどうでもいい。今回の受勲を受けてな。司令部は君に褒美をやろうと思うんだ。」
「どういうのなんですか?」
「これをっ、君に送ろうと思うんだ。」
オスカーが尋ねると、上官はタンスから褒美をだしてきた。それは...米だ。
「え..これ一袋ですか..?」
「あぁそうだ。君もうれしいだろう?」
オスカーは歯ぎしりせざるを得なかった。何か階級が上がったり、給料が上がると考えていたら、まさかの米だ。しかも一袋。こんなのありえないだろう?
「あ、ありがとう、ございます..」
何か自分のプライドが踏みにじられたような気がして、オスカーはイライラせざるを得なかった。
「喜んでもらったらありがたい。では、アラファリア友愛共和国に万歳!」
「アラファリア友愛共和国に万歳...」
オスカーは今の現状、いやこの国の現状を嘆きながら、兵舎へ戻るのであった。
友愛精神がない者に、この世界に生きる資格はない!