第十一日 忠誠の儀式
ーーーあらすじーーー
昨日、命令に背いてパルチザンらのアジトに行きダンスなどで楽しんだ第77人民正常化部隊の12人。しかし、今度は真逆の命令がきたようで..
ーーー人物紹介ーーー
・オスカー・ガルフィリノ(27)
20代で第77人民正常化部隊の隊長となった。軍に入ったのは、家庭の貧困化によるものであった。
「一昨日、西にある補給基地をパルチザンによって強襲された。これは、友愛に対する裏切りである。とある複数の隊員からの報告によると、そなたの隊員であるイェルクが情報を流したという報告があがった。反逆者は名も知られていない森で殺すというのが人民防衛軍の伝統だ。そのため、イェルクを処刑し、見せしめとして写真をこちらに送ってこい。イェルクが無実だったとしても、見せしめと考えろ。以上」
..イェルクはあの12人の一人として捕虜になっていた隊員だ。まだ23歳で若いはずなのに..処刑せざるを得ないというのは、オスカーにとって耐えがたかった。そのため、イェルクに今日処刑されることについてオスカーは話に行った。
「なぁ、イェルク。ちょっと話があるのだがいいか?」
「いいですが..」
「あのな、一昨日補給基地をパルチザンが強襲したという話があっただろ?」
「そうですが、それがどうしたのですか?」
「お前、補給基地の情報をパルチザンに送ったのか?」
「..い、いえ。そのようなことはしていませんが..」
「単刀直入にいよう。上からの命令でお前は今日処刑されるんだ。」
「えっ..」
「俺だって処刑はしたくない。だから、死んだふりをしてくれ。」
「..わかりました。しかし、自分は死んだって設定にされるんですよね?どうすればいいのですか?」
「..お前はあの12人の一人だよな?」
「そうです。」
「お前はその場所をしっている。そこへ行け。この共和国がほろんだあと再開しよう。」
「..わかりました。」
そうしてオスカーとイェルクは車でパルチザンのアジトの近くの森へと向かった。
「ここらでいいか..」
「はい..」
ダッタッダッ、と落ち葉を踏む音がする。
「じゃぁ、その木に立ってくれ。」
「はい。」
「空に向かって放つか..薬莢が必要だし。」
そう言ってオスカーは拳銃をホルスターから取り出す。
「じゃぁ、撃つぞ。」
そう言ってオスカーが空に向けて放つ。そして、薬莢を回収した。
「ほら、そこらへんの倒れて..」
「こうですかね..?」
「あぁ、そうだ。そこにこの血のりを..」
オスカーがイェルクに血のりを撒く。
「あとは写真を撮って..」
オスカーが写真を撮り、これで忠誠の儀式が終わった。
「イェルク。もういいぞ。」
「..自分、パルチザンでもなんとかやっていけるのでしょうか..」
「なんとかなるさ。あ、でも俺らのことは殺すなよ?』
「それはわかってますよ!ははは..」
「..じゃぁ、短い間だけど離れることになるな..またアジトに行って再会するかもしれないから、それまでには死ぬなよ?」
「ええ。じゃぁさようなら。」
「さようなら。また会えることを祈ってるよ!」
イェルクが森の中に去っていくと、オスカーは一人で車を運転しているとき、おもわず涙が流れてしまった。涙で運転が少しふらふらになるほど、目に涙が浮かんだのであった。
そしてそのまま人民保安省まで車を走らせ、上官に報告をしに行った。
「失礼します」
「おう、入れ。」
「それで、イェレクはどうなったのか?」
「えぇ、無事に処刑されました。こちらがその写真です。」
そう言って、イェレクが処刑された写真を見せる。
「ふむ..これは使える。これで"あいつら"へも恩を返せたな。」
「あいつらって..誰でしょうか?」
「いや、プライベートな関係だよ。特段重要じゃないさ。」
そう言って上官は引き出しへその写真を置いた。しかし、その引き出しに何かレシートのような何かが見えたが..そして、上官がその引き出しからリストを引き出すと、イェレクの名前に一本線を引いた。
「ふむ。ごくろうであった。帰りたまえ。」
「はい、わかりました。」
オスカーの灰色の銃には、命令に背いた罪悪感とイェレクが救われた安堵感があった。
容赦はしない、例え"指導者"に一番近くても!