13-⑤ 仲間は
「………………レン…………く……。」マリ
「うぉぉ!レンくーん!ありがとぉ!!」トラヴィス
「おお!テンジョウ家のレン君!!ひさびさだなぁ!!ええ?!なに?!ちょっと身長のびたぁ?!」アエツ
3人は知らずの内に階段の前を走って通り過ぎていたようで、階段からゆっくりとした足取りでイーネが上がってきて姿を見せる。
「お前ら……。アエツがいて、何してんだよ。」イーネ
「おぉぉ!イーネ!!!」トラヴィス
「かぁぁあー!痛いとこつかれちまったぁー!こりゃ失敬!!俺が、俺が不甲斐ないからぁあああ!!」アエツ
「うるさ。」イーネ
そこから自然な形でそれぞれが集まって、廊下の中央で円になっていた。
トラヴィスとアエツは放っておくと、ずっと喋り続けて収集がつかないため、マリが大きめの声量で「ちょっと2人。黙ってなさい。」と言った事で落ち着いて話しが出来る雰囲気になったが、マリのその様子にイーネとレンは驚いた顔していた。
マリが話しだす。
「……その。なんでレン君だけ、そんなにボロボロなの?」
「こ、これは!」
レンが赤い顔をする。イーネの服は薄汚れているくらいで済んでいるが、レンの袴は、特に足元が虫食いのように所々に穴があき、その勢いそのままに生足に噛み傷がついている。
「ま。服の性能のいい比較対象だな。」
ネズミの群れに襲われた2人は、大きなカラスが飛び去った瞬間に動けるようになり、そこから怒涛の反撃でネズミとカラスを退けた。
しかし、その一瞬の硬直の間に団服でないレンだけがジャンクの攻撃をまともにくらう結果となっていた。
次にトラヴィスが話し出す。
「あ!ラスター!ラスターどうなったんだ?!」
「逃げられたよ。」イーネ
「ええー?!逃げられ……。」トラヴィス
言葉の最中のトラヴィスの胸ぐらをイーネが鷲掴む。
誰が見ても一目でキレてると分かる顔だった。
「……ってめぇ。謝れよ。無茶苦茶しやがって。あ?ラスターの前にてめぇの息の根止めんぞコラ。あとなぁ。てめぇ。タイヨウに自分が死んだ後の後始末についていらねぇこと言いやがって…。おかげで面倒くさい事になってんだよ。あぁ?そもそもそんな約束したなら先に言っとけよボケが。」イーネ
「…………ご、ごめんなさいーー!!!!って…。え?なに?タイヨウ?何の話し?覚えてねー!」トラヴィス
「デカいだけの幼稚園児か?あ?こら。ミジンコ脳みそハリボテ野郎が……!」イーネ
「ま、まぁ……。許してあげなよ。イーネ。」マリ
「マリ。てめぇもとばっちり喰らった側だろ。怒れよ。」イーネ
「いや。うん。トラヴィスさんと行動して。もぉ色々と諦めたから。」マリ
「え?!マリ?!どーゆー意味?!」トラヴィス
マリのその言葉にイーネの怒りはおさまったのか、それとも早々に諦めをつけたのか、トラヴィスの胸ぐらから手を下ろす。
次に話したのはアエツだった。
「あんのぉ。すんごい、面倒くさいなあ……って感じだと思うんですけどぉ。良ければぁ。状況説明お願いしてもぉ。宜しいですかなぁ?……。」
アエツのその言葉を聞いて、マリがアエツに事の経緯を説明する。終わった時点で、アエツがマリに確認するように言った。
「っで。じゃあ、今からラスターの部屋。課長室に行くのか?まじか……。まだ頭がついていけてねぇぜ……。」
それにイーネが言葉を返す。
「あの野郎の事だから、なんの証拠も残ってないと思うけどな。まぁ、会社の中のゾンビほっとくわけにもいかねぇから、討伐しながら向かってもいいとは思うが。」
次にマリが話す。
「それに、ユウトさん達がアルバラに足止めされてるって連絡あったんだよね?戦の気配が無くまるで……だっけ?そしたら、こっちのジャンク亜種をなんとかしないと、ユウトさん達動けないままなんじゃ……。」
「だな。」イーネ
そこに口を挟んだのはレンだった。
「まて。じゃあ俺は関係ないだろ。そこはお前達の問題だ。俺は帰らせて貰うぞ。」
それにはマリが言葉を返す。
「でも……。レン君。その傷、治さないと……。絶対にベリーに診てもらった方がいい。それに、レン君も一緒にいてくれると、心強いんだけどな……。」
「は、はひ?!」
「おお。美女の言葉は重いですなぁ。アエツ殿ー。」トラヴィス
「無自覚な魔性な女ですなぁ。トラヴィス殿ー。」アエツ
「おじさん達。黙ってて。」マリ
「…………マリ。なんか、トラヴィスのせいでたいぶ強くなったな。」イーネ
マリの言葉にレンが言い返す事はなく、イーネ、マリ、トラヴィス、アエツ、レンの4人で最上階10階にあるラスターの課長室を目指すことになった。
――――――――
「天下流・浪志の抜刀・獄門。」
[ア゙ア゙ア゙ア゙…………]
おそらく、この棟内全ての屍を討伐し終わり、生物研究棟B棟10階の課長前まで来ていた。
レンが言う。
「なんっっっっっっで!俺が!全部!倒してるんだ!!」
それにアエツが言葉を返す。
「もぉぉおしわけない!!俺が不甲斐ないばかりにぃぃぃ!!」
トラヴィスが言う。
「俺!元鷹だけど、今は一般人!!」
マリが言う。
「ごめんなさい……。なんか、コピー能力者がオリジナルが活躍してないのに討伐するのも……何か違うかなって……。」
イーネが言う。
「姿形がそれぞれ違いすぎて、いちいち能力の条件満たすのが面倒いんだよ。俺の能力向きじゃねぇ。」
レンが言う。
「お前ら!俺が本当に帰ってたらどーしてたんだよ!!」
しかし、そんなレンの言葉は無視してイーネは課長室の扉を開けて室内へ入っていき、他のメンバーもそれに続いた。
<デグス・ラスター 課長室>
課長室はもぬけの殼といっていいほどに何も無くなっていた。それでも、何かしらの手がかりが無いかと部屋の中を物色する。
イーネが言う。
「ま。何も無いわな。」
それにマリが言葉を返した。
「そーだよね。……………………あの。こんな時になんなんですけど。」
マリはそう言うとポケットから何かを取り出してアエツに向かって差し出した。両手の平の上には少量のジレの塊。
「アエツさん。長いことお借りしてました。ありがとうございます。あと、…………九尾との戦闘でだいぶ削られちゃって……。ほんの少し残ってなくて……。本当にすみません……。」
「今ぁ?!」トラヴィス
トラヴィスのツッコミは無視されて、アエツがマリの手の上にあるジレを回収しながら言う。
「いいっていいってぇ!これがマリさんをや仲間達を守ってくれてなら、それが1番!何より、九尾と戦って皆んなで帰って来てくれた事が1番!!いんやぁ!よかったよかった!!」
「……ありがとうございます。」
そこにトラヴィスが口を挟む。
「でも、やっぱりジレ、だいぶ減ったよなぁ!!もー引退なんじゃね?!」
「え?……。ジレって、今あるだけなんですか?」マリ
マリの質問にアエツが言葉を返す。
「そうそう。今持ってるだけで終わり。これが無くなっちまえば、"ジレをコントロールする"って俺の力は意味をなさなくなる。ま。そもそも、麒麟との戦闘で半分以下にまで削られてんだ!ジレの量は、単純な俺の強さに直結する。今の俺の強さは、全盛期の半分以下!って。あ。ちょっと言い訳っぽいんですけどぉ……。まぁ、それもあって事務員になったんだよなぁ。俺。」
「貴重なものだったんですね……。なのに……。」
マリが思い詰めるような顔をしたのを見て、アエツが豪快に笑う。
「アハハハハ!!ジレなんて、なんてことないものだよ!!大切な物を守れる可能性のある物かもしれないが、大切な物ってのは、家族と仲間だ!!さっきも言ったけど、ジレが助けになったのなら、それが1番!!アハハハハ!!」
「…………アエツさん。」マリ
「今の強さが半分以下。ね。お前の事、化け物だって言ってたユウトの言葉が分かったよ。」イーネ
「お?俺、今、もしかして見直されたりしちゃったりしちゃったぁ?!!」アエツ
「なぁ!!ここ、ラーメンくせぇ!!!」トラヴィス
「おぃぃいー!今いい話ししてんだよ!トラヴィスー!!」アエツ
トラヴィスの方を見ると、課長専用のデスクの後ろの空間の匂いをしきりに嗅いでいる。
「なぁ!ラーメンの匂いするくね?!」
トラヴィスがそう言うため、他のメンバーも課長のデスクの近くに寄って匂いを嗅いでみるが、それらしい匂いはしない。
マリが言う。
「…………匂いなんてしませんよ。」
そこにアエツも加えて言う。
「お前がラーメン食べたいだけだろ!こんな夜中にそんなこと言うな!食べたくなるだろ!!」
「ええー?レン君は?!匂いする?!」トラヴィス
「しないよ。」レン
「ええー。イーネはぁ?」トラヴィス
「しねぇよ。ってか何だよ。どーゆー理屈でラーメンの匂いなんかすんだよ。ラスターの奴がここで夜食済ませてから出てったってことか?舐めすぎだろ。」
他のメンバーの意見を聞いても納得の行かないトラヴィスだけが顔を顰めながら、まだ部屋の匂いをクンクンと嗅いでいる。
メンバー全員でトラヴィスのことは早々に放置することに決めて、今後の身の振り方について話しは進んでいった。
マリが言う。
「取り敢えず、ここを出て……。いや。その前にユウトさん達に連絡とってみる?」
「そーだな。アルバラがどーなってるかだな。」イーネ
「ベリーにレン君のこと診てもらいたいし。」マリ
「ここの外のジャンク……ネズミだかカラスだかは大丈夫なのか?」アエツ
「いや。あらかたは片付けたが、まだ討伐しきれてねぇかもしれねぇ。アルバラが足止め解除しねぇなら、俺らで小型のジャンクを討伐しきるしかねぇか。」イーネ
「よし!それは俺に任せろぉ!」アエツ
そう言って、ユウト達に連絡を取ろうとした時だった。トラヴィスが大きな声を上げる。
「ほらぁぁああ!!ここ!ここ!すっげー!ラーメンの匂いする!!!」
「………………………………。」
トラヴィスに冷たい視線が注がれるが、トラヴィスは何の気にも止めずにしつこく匂いをかいでいる。
暫くその姿を眺めていると、トラヴィスが匂いのする所に手を"掛けた"。
その様子を見て、イーネの表情が一瞬にして変わる。
「おい。トラヴィス……。」イーネ
「んん?ここなんだよなぁ。ここか?!」
トラヴィスは空間に手を引っ掛けて、その場所を裂くように両手を入れた。
ジジ……ジー
「「「「?!!」」」」
課長専用のデスクの後ろの空間が布切れのように歪み、ジッパーが円状に開いていく。
「なんだぁ?」トラヴィス
ジッパーを開いている本人であるトラヴィスが、1番状況を理解しておらず、みるみるウチに課長室の後ろは全く別の空間に繋がっていく。
ジジー
円状にジッパーが開ききって、大きな丸の向こう側は、高級ホテルのエントランスのような所に続いていた。
こちらは真夜中だが、向こうの空間は美しい太陽の光が散々と入ってきていて、温かみと優雅さに溢れている。
その中央にはオシャレなオープンキッチンに、カウンターが備え付けらていた。
「あ!!ラーメン食ってる!!だから言ったじゃん!!!」トラヴィス
「ずるるるるる……。」
ラーメンを啜る音が聞こえる。
ラーメンを食べているその男性も驚いた顔をしていた。
ラーメンを食べていた手を一旦止めて、男がこちらに向かって言う。
「あ。こんにちわぁ。」
「あ。こんちわぁ!!」トラヴィス
トラヴィスだけが元気に返事する。
それ以外のメンバーは顔を強張らせていた。
イーネが呟く。
「……………………………………マシロ。」
ラーメンを置いて、カウンターに腰掛けているマシロが笑顔を見せた。
「一緒に食べる?」




