13-④ 仲間は
<タイヨウ達 動物霊園側>
アルバラはタイヨウ達の車の手前で巨大な姿のまま丸まって寝ていた。
タイヨウは少し離れたところに腰掛け、携帯で仕事の処理をしているようだった。ベリーは整地された原っぱで器用に寝ている。ニコは適当な場所でタブレットでサッカー中継を見ているようだった。
ナユタも適当な場所に座っていたが、そこにユウトが歩いて近寄ってくる。
「ナユタ。トイレいこ。」ユウト
「え?!いい歳して連れション?」ナユタ
「うんうん。」ユウト
心を読んだナユタが溜息をついて、「分かったよ。」といって、2人で並んで歩いた。
暫く歩くと広い駐車場が見えた。「じゃあ僕達、路駐してることになるね。」なんて言いながら2人は適当な車止めに腰掛ける。
ユウトが話しかける。
「昔さ。ベース引きこもりのナユタが、ウルトラ引きこもりになった時あったじゃん。」
「うん。僕が心読める能力で良かったね。何の事いってるかは分かるよ。」
「…………あの時、何も聞かなかったけど。」
ユウトがナユタの方を向いて言葉を続ける。
「あの時、タイヨウと何かあったの?」
「…………。」
「分からないけれど。その時の事って、今の僕達にとって大事な情報なんじゃない?」
「…………。」
暫く静かな時間が流れる。
ナユタは考え込んだ後にゆっくりと話し始めた。
「僕、タイヨウのこと好きだよ。恩人だし。」
「うん。」
また暫く沈黙が続く。
また、ナユタから話しはじめる。
「僕って中途半端だよね……。こんな力なのに、誰にも嫌われたくないんだよ……。」
「そんなことないよ。」
「……………………………………適当に相槌うってない?」
「あーね。」
「喋るのやめるよ?」
「うそうそ。冗談。」
「適当に喋ってるくせに。」
ほんの少しだけ、場が和んだようだった。
ナユタが言う。
「あの時、僕。タイヨウに、自分の力を使っちゃったんだよ。」
「…………それって、いつも勝手に聞こえる声とは違って、ってことだよね?」
「………………うん。………………………………海の奥深く。感情の奥底。少なくとも、勝手に見るようなものではないと思う……。タイヨウもすぐに気づいて。…………その時の表情は忘れられないし、僕が見たものも……。忘れられない……。」
「うん。」
ゆっくりと、ナユタのペースで進むのをユウトは相槌を打ちながら聞く。
ナユタは一呼吸おいて話す。
「タイヨウの言っている事は、半分本当で、半分嘘だ。」
「うん。なんか、そうかなって思ってた。」
また、少しの間をあけてナユタが言う。
「………………。タイヨウは善意でジャンクを狩っている訳じゃない。嫉妬と傲慢。マシロの能力を利用して、自分の願いを叶えようとした結果だよ。」
「……タイヨウの……願い?」
「ハゲ。」
「……。ハゲ。」
「ハゲてるの。嫌なんだよ。タイヨウは。」
「…………………………へぇ。…………凄い。どーでもいい。」
ユウトは冗談混じりに返したが、ナユタが真剣な雰囲気を崩さない。
黙っていると、またナユタが話し始めた。
「タイヨウがハゲたのはマシロのせいっぽい。」
「へぇ。…………っぽいって?なに?確定じゃないの?」
「僕の能力は副次的に記憶を読むことがあるけれど、その時は、憎しみの感情が強すぎて、何でハゲたかは分かんない。でも、その事でタイヨウはマシロを恨んでて、マシロの生み出すジャンクを利用しようと考えた。タイヨウの能力は知ってるでしょ?」
「自分の姿を変える能力だろ?子供の時は、それでよく笑かしてもらってたっけ。」
「タイヨウは、自分の能力に納得いってない。核師というものが誕生して、自分の能力を書き換えられる可能性に気づいた。中でも、特殊なジャンク"麒麟""九尾""猫又"の血清が手に入れば、今の力とは、全く違う能力を手に入れられるんじゃないかと考えた。」
「………………………………それ……って……。」
「………………そうやって麒麟は討伐された……。でも、多くの犠牲を出して、タイヨウの望む結果は得られなかった……。」
「…………。」
「タイヨウは、本当に……。みんなの事を悲しんでいたけれど、心の奥底に沈むのは…………。」
(―クソが。―)
ナユタは敢えてその先の言葉を口にはしなかった。
ユウトがナユタに聞く。
「じゃあ、ジャンクってそもそも、討伐する必要……。あるのかな?」
「分かんないよ。そこまで見てない。もう、見るのをやめたし……。」
「じゃあ、タイヨウは、そこで野望が挫折した訳だよね。今は何を目的としてるんだろう。」
「……これは、見た訳じゃないけれど……。」
ナユタが考える素振りをしてから続ける。
基本的に、どんな人間に対しても、その人が公言していないことを他人に言う事は、ナユタのポリシーに反していた。
けれど、そこは、相手がユウトだったこともあったのだろう。ナユタが続ける。
「……多分、タイヨウとマシロの目的は同じなんだよ。」
「……同じ?」
「自分の能力に満足いかなくて。色々努力したけれどダメで。…………今は、元々信仰している、その、神様って人を呼び戻そうとしている……。」
「ねぇ。それって。」
「マシロとタイヨウは根本の部分では対立してるのかもしれない。でも、今目指すものに関しては協力関係とまでは言わないけれど、少なくとも、協力あってもいい関係……。なんだと思う。」
「………………。」
ユウトは、これまでの出来事を思いおこしながら、これでも言葉を選んで言った。
「…………それってつまり……。タイヨウも……。マシロ側の人間って言えるってこと?」
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<タイヨウバイオカンパニー内 マリ・トラヴィス・アエツ>
「も、もぉ…………いやぁぁあああ!」
「はぁ!はぁ!はぁ!やっぱ俺!体力落ちてるわ!事務仕事がここに来て裏目にでてるぜ!!やっぱ走り込みしないとなぁ!!」アエツ
「へっへーん!俺、まだ余裕!」トラヴィス
「俺だってまだまだいけますぅぅ!」アエツ
「わ、私は……、も、もぅ無理です!!」マリ
マリ、トラヴィス、アエツの3人は大量の屍に追いかけ回され2階まで降りて来ていた。
というのも、亡霊ではなく、本当に実在している核師の死体がゾンビ化して襲って来ているという事実を知ったアエツは、死体とはいえ同士に攻撃を向ける決心が付かず、唯一の攻撃の要のアエツが機能しなくなったことで、再び逃げの一択しか無くなっていた。
「ほんと……。も、もう……。無理……。」マリ
「マリ!明日から俺と朝走ろうぜ!朝のランニングってちょー気持ちいいから!」トラヴィス
「俺のおすすめは夜だぞ!朝は子供らの支度やらいっそがしいからなぁ!夜走るのも風が気持ちいいし、帰って風呂からの布団が最高だぁ!」アエツ
「…………………………おじさん黙ってて!!」マリ
「あははは!俺おじさーん!もー鷹じゃないもんね!!」トラヴィス
「はぁー!やっぱ俺もおじさんだよなぁ。もぉ40になる……って、トラヴィス、お前いったい幾つになるんだ?!鷹の時の年齢は人の倍以上じゃないのか?!」アエツ
「え。じゃあ俺…………。おじさんじゃなくて……。おじいちゃん?!!」トラヴィス
「…………………………。」マリ
マリのペースが一気に落ちた、その時だった。
「天下流・浪志の抜刀・獄門。」
[ア゙ア゙ア゙ア゙…………]
後ろの屍がバタバタと崩れる音が音がして、最後にカチンと刀を鞘に納めるような音が聞こえた。
マリだけが息をきらせながら振り向くと、そこには、テンジョウ レンの後ろ姿があった。




