12-④ 策略
︎ ――。
イーネの能力で、2人を取り囲むようにメンバーが配置された。
突然現れたイーネ達の姿に、タイヨウは驚いた表情をし、おじいさんは、顔色一つ変えずにプルプルと小刻みに震えている。
最初に口を開いたのはタイヨウだった。
「は?な、なな、なんで!ゆ、行方不明って!!!お、お前ら!!ここで?!は?!何してんねん?!」
イーネが言う。
「お前こそ、タカトの死体をどーするつもりだよ。」
「はぁ?!な、なな、なななな、何がやねん!何のことですかぁ?!なんのこっちゃ、わかりませーん!」
すると、小さなおじぃさんが言う。
「んん?そーしましたら、またイチから説明しますとぉ……。」
「あぁ!じぃさん!ちゃう!それは分かったから!説明せんでいいよ!」タイヨウ
「そうですかぁ。では、最初から説明しますとぉ……。」
「じぃさん!ちゃうて!ちょ、だまってて!」タイヨウ
「はぁ。抹茶ラテ?」
「ちゃう!だまってて!ラテなんて単語でるんかいなジジイ!」タイヨウ
緊張感の無い2人の様子に、メンバーは顔を顰める。
おそるおそる話し出したのはナユタだった。
「………………イーネ……。無駄だったかも……。」
「あ?………………くそが。」
「おぃぃいいい!!お前ら!ちょ!何?!なんなのよ!説明しなさいよ!」タイヨウ
「こっちのセリフだわ。ハゲ。何でタカトの死体なんか持ち出した。」イーネ
それにタイヨウは苦い顔をして「ぐぬぬ……。」と何かを言い渋っている。
そこにユウトが声を掛けた。
「タイヨウさん。話して下さい。僕にも話せない事なんですか?」
「…………………………。」
ユウトの顔見て、タイヨウは更に苦い顔をしてみせてから、少し間をあけて答えた。
「………………これは……。タカトに頼まれたことや……。」
「頼まれていた?」ユウト
続けてタイヨウが話し出す。
「…………。もし、鷹の姿のまま死んでしまった時の後始末や……。生前のタカトに頼まれててな……。タカトのやつ……。家族に鷹になってもぉたこと伝えてないやろ?…………ホンマは、解剖が終わった後は遺族に返されるんやけど、タカトはそれはしたくないって言ってたんや……。鷹の姿で死んでまいましたなんか、家族はショック過ぎる言うて……。」
「まぁ、確かに……。そうですね……。」ユウト
タイヨウは続ける。
「……でも、アエツやユウトに世話になるのも嫌や言いよった。ほんで俺に、皆んなは怒るかもしれへんけど、サクっと動物霊園みたいな所でこんがり焼いてしもて、無縁仏にぶち込んどいてくれやて……。やし、明日、お前らが出勤するまでに、火葬済ませてしまおう……。そう思ってやな…………。」
「じゃあ、ここは、動物……。ペットの為の火葬場ですか?」ユウト
「………………そうや。………………わ、悪い!ユウト……!お前に黙って……………………。でも、俺は……。これだけは……。これ゙だけはタカトに゙言わ゙れ゙たこと、ちゃ゙ん゙とや゙ったら゙な゙思っ゙てや゙な゙ぁ゙…………!!」
我慢していたのであろう、タイヨウの涙腺が崩壊して、ズルズルと鼻をすすって大泣きしながら、ユウトに謝罪の言葉を述べるタイヨウを、メンバーは真顔で見つめる。
口を開いたのはベリーだった。
「何それ。昨日から張り込んで、こんな夜中に出て来たのにばっかみたい。はぁーあー。ほんっとに紛らわしいことしてくれたわね。」
「あぁ?!なんやとぉ?!ってか、俺が答えたんやから、お前らも答えんかい!何でこんな所におるねん!!」
それにユウトが答える。
「タイヨウさん。それ。タオルに包んでるの、タカトさんですか?」
「そ、そうや?!こ、これはな!家から、ちょっとは優しそうな素材のタオル持って来てやなぁ!ほ、ほら!霊安室の白い布とかゴワゴワしてそうやろ?!タカトもちょっとは気持ちええかなぁっと思って……。」タイヨウ
「それ、タカトさんじゃ無いです。鷹です。」ユウト
「……………………おう。鷹はタカトや。」タイヨウ
「ああ。違います。鷹です。」ユウト
「は?鷹や。タカトは。」タイヨウ
「ただの鷹です。」ユウト
「ただのタカトや。」タイヨウ
「いや、そうじゃなくて。」ユウト
「お前ら黙れ。あと、二度と鷹にタカトなんて紛らわしい名前付けんじゃねぇ。」イーネ
イーネが2人の会話に割って入って、タイヨウに真実を告げる。
「タイヨウ聞け。タカトは死んでない。生きてるよ。」
「………………は?」
――――――――――――
タイヨウに、一連の流れが説明された。
タイヨウは全てを聴き終わって大声で言う。
「ほなこれ、野良タカトかーい!!!」
「違います。野生の鷹です。」ユウト
「おい。ツッコミにマジレスすな!」タイヨウ
タイヨウとユウトのやり取りに、ベリーが割って入って言う。
「しょーもな。取り敢えず引き上げようよ。結局、これじゃ、ラスターも白説ない?」
「んー。分からないけど、帰ることには賛成。」ナユタ
「タイヨウさん、その鷹どーするんですか?」ユウト
「いや……。ここまできたらコンガリ焼いたるわな。こいつかて、頑張って野生を生き抜いとったに変わりないんやからな。」タイヨウ
『じゃあせっかくだし、みんなで見届けてから行こうヨ。俺、動物の火葬って初めテー。』ニコ
「なんでだよ……。」イーネ
何故か流れは野生の鷹の死骸を火葬場に納めてから帰る運びになり、タイヨウは小さなおじいさんに話しかける。
聞く所によると、このおじいさんは、この霊園の職員なのだという。
「じぃさん待たせたな。ほな、火葬頼むわ。」
「はいぃ。でわぁ。こちらへぇ。」
おじいさんに連れられて、脇にあった小さな小屋に入る。
小屋の中はペット様の小さな火葬路と、部屋の高い所に仏様が飾られいるだけだった。
大人は2.3人しか入るスペースが無く、入り口の扉を開け放って、外からおじいさんとタイヨウのやり取りを眺める。
おじいさんが言う。
「でわぁ。ここにぃ。ご家族様を寝かせてあげてくださぃ。」
「家族ちゃうけどな。まぁ、はい。」
火葬炉から引き出されている台車に、タイヨウはタオルから鷹を出して寝かせた。
おじいさんが言う。
「良ければぁ。ご家族様が好きだったタオルも一緒に火葬できますのでぇ。上から掛けてあげてもいですよぉ。」
「家族ちゃうけどな。あ。いや。これ、いいタオルなんで、いいですわ。」
「でわぁ。好きだったご飯やお菓子などがあればぁ。包装から出して貰えれば、一緒にぃ……。」
「いや。じぃさん。ええよ。ごめん。野良鷹やねん。もう、サクッと焼いたってくれ。」
「わかりましたぁ。ではぁ。合掌ぅ。黙祷ぉ。」
「ああ。はいはい。」
(何で、野生の鷹を全員でご丁寧に見送ってんだよ……。)イーネ
イーネ以外が、なんとなくの成り行きで手を合わせて黙祷している。
イーネはその様子を冷めた様子で見ていた。
イーネは自分の能力の影響で、常に、自分の周囲の物の概算の大きさや位置などを記憶する癖がある。
おじいさんが言う。
「ではぁ。これよりぃ。ノラタカ様のご火葬をはじめさせて貰いますぅ。」
「ノラタカって名前になってもた。」タイヨウ
「……………………おい。ちょっと待て。」イーネ
イーネが他のメンバーを掻き分けて寝台に横たわる鷹の前まで来る。
おじいさんが言う。
「ご家族様のぉ。好きなタオルやぁ。オモチャやぁ。ご飯などありましたらぁ……。」
「ジジイ。ちょっと黙ってろ。」イーネ
「抹茶ラテぇ?」
イーネはまじまじと鷹を見る。
その様子に他のメンバー全員が違和感を覚え、タイヨウがイーネに言葉をかける。
「おい……。どーしてん。」
「………………鷹は基本的にメスの方がデカい。」イーネ
「はい?」タイヨウ
「………………それに、俺らが用意したのは、オスのリュウゼンダカ。この国に多く分布する鷹だ。」イーネ
「…………それがどうしてん……。」タイヨウ
「…………リュウゼンダカは、オスの瞳の色が青い……。こいつの瞳の色は黄色。………………メスだ。」
おじいさんを除く全員が驚いた顔をする。
ユウトが言う。
「…………イーネ。それって。」
「鷹の死骸を誰かがすり替えやがった。」
(いつだ?どのタイミング?……。解剖からはずっと張り付いてた。タカトが死んで、死体が帰ってきたふれ込みをいち早く知っていた人物……。とっくに鷹の死骸は持ち去られていた……。いや……。違うだろ。普段は人間の死体を扱ってんだ。すり替えるなんて芸当できるはずがねぇ……。鷹だから、そんなやり方したってのか?)
すると、焦りの表情を滲ませるナユタがタイヨウに聞く。
「た、タイヨウさん……。霊安室の鍵は誰から?……。そもそも、あそこの管理は何処がやってるんですか?……。」
「は?……あ。あそこは、生物研究科-γ班の管轄や……。だから、諸事情話して、ラスターに……。」
イーネとナユタの視線がバッチリと合う。
2人とも焦りと不安の表情を滲ませる。
(鷹の死骸を持っていくタイヨウを囮にされた……!(誰を連れてく……?!ベリーか……!ニコか……!(こっちが本命だと考えて、戦力偏らせ過ぎた……クソが!)))
「あいつらが危ない!!!!」




