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12-① 策略

 有名な子供向け遊園地。


 可愛らしい女の子と男の子が父親に甘えている。


 隣にはショートカットで綺麗な出立ちの母親。

 

「ぱぁぱ!アイス!アイス買ってぇ!」

 

「僕もぉ!」

 

「ポップコーン沢山食べたじゃない。もぉ晩ご飯たべれなくなるわよ?」

 

「アイスかぁ!よぉおし!1人1個だけだからなー?!」

 

「もぉ……。パパったら。」

 

「あはははは!!今日は誕生日だもんなー?!」

 

「誕生日ー!!」

 

「よし!俺かってくっから。ちょっと子供ら見といてくれるか?」

 

「子供の分だけにして下さいね。残すかもしれないんだから。」

 

「おーよ!」

 

 そう言ってアエツは、アイスが買える列に並ぶ。

 

(昨日も沢山遊んだし、今日は早めに帰るって約束だからな。もーちょっとしたらここ出て……。子供ら、帰りの車で寝ちゃうよなぁー……。)

 

 そんな事を考えながら1人、列が進むのを待つアエツの携帯に着信が入る。

 

(んんー?……うっわ。核師の方じゃーん……。今日は意地でも休みだっつぅーの!)

 

 そう思いながら電話に出る。

 

「しもしもぉー?アエツ・ダイヤモンドどぅえっす!え?!タイヨウ理事長っすか?!おつおつおつおつ、お疲れ様ーっす!ええ?!どしたんっすかー?!今日は意地でも休みの日っすよー!」

 

 電話の相手のタイヨウは、少し申し訳なさそうに話す。

 

 'あぁ。悪いな。分かってる分かってる。まぁ、仕事では無いんや。今、喋れるか?何してんや?'

 

「なにって、今日は可愛い愛娘の誕生日なんでね。あ。昨日か!なんで、ランドに居てぇ。で、今はアイス買ってるとこっすね!なになになに。なんっすか改まってー!」

 

 'まぁ、お前、明日出勤やから、その時でもええかとは思ってんけどな。お前の性格考えたら、早い方がええと思って。'

 

「んまぁ、大事な話しは早い方がいいっすけどー。え?なんっすか。明日でもいいのに今日って。なになになに。大喜利?試されてる感じっすかぁ?!俺?!あははは!!」

 

 'アエツ……。落ち着いて聞いてくれ……。タカトがな……。'

 

「…………………………。」

 

 アエツの表情が曇る。


 それは、電話の向こうのタイヨウにも伝わっただろう。


 タイヨウの話しに、アエツが相槌を打ちながら言葉を返す。

 

「……ああ。………………はい。…………っそっすか…………。はは……。何言ってんすか。俺、周りの人間、何人死んだと思ってんっすか……。はは。いや。それは……連絡くれて助かりました。……。はい。はい。………………ありがとうございます。」

 

 いつの間にかアイスの列は進んでいて、陽気な店員がアエツに言う。

 

「こんにちはー!いらっしゃいませー!何になさいますか?」

 

 店員の言葉の直前に、タイヨウとの会話は終わっていて、電話を切ったアエツは店員にアイスの注文をする。


 そのアイスを持って、アエツは家族の元へ行った。


 アエツを見た娘が言う。

 

「うわー!すっごいパパ!アイスおっきぃ!!」

 

「そーだろー!スペシャルデーだからな!ほら!パパとママの分もあるんだぞぉ?!」

 

「パパとママの味もたべるぅ!!」

 

「え!あなた……。こんなにおっきいの、四つも買ったの?!」

 

「まぁまぁまぁ!いいじゃないですかー!なんたって、今日はぁ?!」

 

「「誕生日ー!」」

 

 娘と息子が声を揃えて言う。


 このやりとりは、昨日から何回したか分からないくらいになっていた。


 適当なベンチに子供達を座らせてアイスを食べさせる。


 大人は立ったり、地べたにしゃがんだりしながら、自分の分を食べながら、子供達が食べる手伝いをする。


 妻がアエツに声をかける。

 

「………………何かあった?」

 

「………………。」

 

 妻はアエツの様子から、何かを感じとっていたようだった。


 アエツは少し考えてから、妻に言葉を返す。

 

「同期が……。また……。な。…………明日は仕事、遅くなるかも。」

 

「同期って、あなたそれって……。」

 

 妻はそこで言葉をやめた。

 

「ぱぱぁ。アイスたれてきたぁ。」

 

「ん?……おお!よしよし、ちょっとまてよー!」

 

 子供達には普段通り接しようとする夫を見て、妻はそれ以上何も言わなかった。


 ――――――――

 <タイヨウバイオカンパニー 生物研究棟A棟>

 

「あのぉ。そちらの方は……?」

 

「きおくそーしつの、いっぱんじんです!!」

 

 トラヴィスが大きな声を出した。

 

 今日は会社は休みだが、誰1人として居なくなるわけじゃ無い。


 むしろ、フレックスタイム制度を利用して祝日に出勤する研究員なども多い。


 休みとは思えないほどに活動的な社内と通り過ぎて、マリとトラヴィスは"生物研究科-β班"の研究室に来ていた。

 

 研究室の中は大きな機会、などが並ぶ訳ではなく、事務職員のように、それぞれの研究者に当てがわれた机が並べられ、少し広めにスペースをとって、パーテーションで仕切られているようだった。

 

 入り口に入ってすぐ、白衣を来た女性に声をかけられる。


 女性にしては高めの身長。紫がかった暗い髪は、三つ編みをしてサイドで一つに纏めてある。鼻周りのそばかすが特徴的で、レンズの小さい眼鏡をかけていた。


 その女性が言う。

 

「あの……。一般の方は……立ち入り禁止です。」

 

「ええ?!そーなの?!ごめんね!!」

 

 トラヴィスのリアクションに少し呆れながら、マリが言葉を返す。

 

「この人は、私の任務の対象者なんです。今ちょっと……。離れられなくて……。ご迷惑はお掛けしませんので……。」

 

「はぁ………………。そ、そうですか……。」

 

 マリが描いたシナリオはこうだった。


 ミコ、トラヴィス、鷹の死骸を持ち帰還。九尾との戦闘でタカトは死亡。タカトを再起させようとミコの元へ直接向かったが、そこでタトラスと混戦。タトラスはミコと、何故かよく分からない一般人を狙っており、マリとニコが、その2人を連れて戦闘から離脱。イーネ、ユウト、ナユタとアルバラは、タトラス達を深追いし、現在は行方不明になっている。というものだった。


 行方不明者を追う為に、他の核師の人員が裂かれないよう、休みの日の午後を狙って帰還し、案の定、行方不明者を追える人員は確保できず、明日以降で調節となったが、問題は今日だった。


 鷹の死骸は、今日中に死亡解剖に回されるとのことだったのだ。


 なんの情報もない今、いつどこで死亡解剖が行われるのか。また、その様子を誰にも悟られずに監視する方法を急ピッチで探さなくてはならなかった。


 現在、ミコは重要人物として、他の核師が護衛に付き、マリは上司達に、休め、帰れ、と言われるのを何とか説き伏せて、トラヴィスの護衛役についていた。

 

 マリが言う。

 

「あの……。核師がどこで死亡解剖されているのか……。もし、今日されるなら何時からとか……。分かりませんか?……。」

 

 それに、そばかすの女性が答える。

 

「それなら、生物研究科-γ班に聞いた方がいいと思いますよ。」

 

「あ…………。それが、さっき研究室に行ったんですが、誰も居なくて…………。」

 

「えぇ?珍しい。」

 

(ラスター課長には出来れば会いたくない……。探ってる事を、出来ることなら生物研究科-γ班の人には知られたくない…………。)

 

 するとまた、そばかすの女性が言う。

 

「じゃあ、こっちから連絡してみましょうか?」

 

「ああああ!!いいです!そこまでは!ご迷惑なんで!!」

 

 そこでトラヴィスが言う。

 

「俺、その、がんま班って人達だいっきらい!根掘り葉掘り色々聞いてきて、まじてうっぜー!次、顔みたらぶんなぐっちゃうかも!俺がここに来たことも、がんま班の人には言わないで欲しい!ちょーむかつくー!」

 

「………………。」

 

(何か、よく分からない設定追加された……。)

 

 呆気にとられているそばかすの女性に、弁明するようにマリが言う。

 

「あぁ。まぁ、こんな感じで……。γ班の人に、聞くに聞けない状況でして……。」

 

 こんな説明で大丈夫かと思ったが、案外女性は素直に受け入れてくれたらしく、「そうですか……。」と言って、少し考える素振りを見せて言葉を続けた。

 

「あ。じゃあ。もしかしたら、ジーベルさんなら分かるかもしれません。っあ。どうぞこちらに。」

 

「え?あ。ありがとう……ございます……。」

 

 そう言って、そばかすの女性はマリとトラヴィスを研究室の中に案内し、1人の研究員のデスクの前で立ち止まった。

 

(…………………………きっっったな……。)

 

 それは、誰がどう見ても汚いデスクだった。


 ゴミかゴミか分からない物が散乱し、職場のデスクなのに、足の踏み場が無いと表現できるほどだ。


 そんなデスクに齧り付くように1人の男性が作業しているが、その男性自体も、何日風呂に入ってないんだ。と言いたくなるほどに薄汚れていた。


 薄汚れた白衣にガリガリの体格、黒髪に緑色の髪が混じったテカテカの髪は、前髪だけがうざったいのか、頭のてっぺんだけを雑に一つに結んで、まるで噴水のようになっている。


 作業しながらもブツブツと念仏の様に何かを唱えているが、何を言っているのかは分からない。


 そんな男性に、そばかすの女性が声をかける。

 

「ジーベルさん。ジーベルさん!ジーベルさーーん!!」

 

「うるさい!聞こえてるよ!静かにしてくれ!今良いところなんだ!今このハウリングがうまくいって、あと一歩で……あと一歩で…………。」

 

 カチンッ

 

 何か金属が割れた様な音がする。


 それと共に、ジーベルと呼ばれる汚い白衣の男性の表情が断末魔のように変わる。

 

「あ……あ……あ……きぃぃええええええっ!!!まただぁ!!ああああぁぁぁぁあ!!!!」

 

「…………。」

 

「………………。」

 

 ジーベルの表情は3秒で無表情になったかと思うと、回る椅子をこちらに向けて話してくれる姿勢になったようだ。

 

「っで。なに?」

 

 ジーベルが言う。


 無表情のその顔は右の頬から左の額まで、帯状に火傷のような大きなアザがあった。


 そばかすの女性が言う。

 

「ジーベルさんって、核師事情にも精通してますよね。聞きたいことがあるらしくて、こちら、マリ……。」

 

「マリ・リルベラ。組織種ルーキー。他者の血液を摂取して能力をコピーする能力。っで、隣は…………。」ジーベル

 

「きおくそーしつのいっぱんじんです!!」

 

「………………。」

 

 トラヴィスの大きな声に、何とも言えない空気が流れる。


 ジーベルが「あ。そう。」と返した所で、そばかすの女性が言う。

 

「じゃあ、私はこれで。」

 

「あ。はい……。ありがとうございます。」マリ

 

 そう言ってそばかすの女性は退席してしまった。


 ジーベル、マリ、トラヴィスの気まずい3人になった所で、マリが話し掛けようとした時、ジーベルが口を開く。

 

「君達。僕が何者か知ってる?分かる?分かるよね?分かってるよね?」

 

「え?…………。」

 

「組織種マリ・リルベラ。君は幻種イーネ・フィズニアのユニットに所属。幻種ベリー・フィズニア、感覚種ニコ・リード、感覚種ナユタ・グリージス。随分偏った編成をよくマネージャーが許したな。噂ではイーネ・フィズニアが恐喝と障害で編成したチームだとか。だが、このユニットは結成してすぐに1体のジャンクを討伐。マシロ襲撃事件ではユニットメンバー合計で7体のジャンクを討伐。その後も100を超えるジャンクを討伐し、最短最高記録を叩き出している。」

 

「………………は…………ぁ……。」

 

「さらに、イーネ・フィズニアはジャックポットの無断持ち出し、無断使用……。さらにはテンジョウ家にもジャックポットの融資だとぉぉおお????君達はこの性能の良さがまるで分かってない……………………!シッピーボムにバインドワイヤーも、どれだけ僕が研究と改良を重ねて製品化していると思って……!それをバカバカバカバカ使いやがって……!聞いたところによると、テンジョウ・ユウトも一緒に行動してるらしいな……!あいつは………………もっと…………もっと…………僕の作品の良さをまるでわかってなぁぁぁああああいい!!!」

 

 ダンっと机を叩くジーベル。


 机の上のゴミか作品なのか分からない物がバラバラと落ちる。

 

(この人……もしかして……。)

 

 ジーベルが続ける。

 

「感覚種がジャンクを討伐できるのは何でだと思ってる!通常兵器が効かないジャンクに効果的な武器を僕が開発してるからだ!!どれだけそれが貴重か!!まだ全団員に普及出来るのが難しくて、アイツが強いからって支給されてるんだ!!なのに!テンジョウ・ユウト!!任務に行くたびにに片っ端から壊して持って帰って来やがる!!なんてやつなんだ!!君だってそうだぞ!マリ・リルベラ!君が持つ特殊な血液パック!血液を保存可能としたポーチ!!誰か1人でも僕に礼を言いにきたか?!むしろ誰も僕の事を知らない!核師ってやつらは本当に!!きぃぃぃえええええ!!!なんてやつらだ!!!」

 

 そこでマリが恐る恐る口を開く。

 

「………………じゃあ、アナタが。ジャックポットや、他の核師専用の武器を制作された……。」

 

「そーだよ!!僕はオライオン・ジーベル!僕の名前をもっと布教させろぉぉおおお!!」

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