11-② 都合のいい話し
ユウト、ナユタ、マリ、イーネが表情が強張った。
ミコの言葉に耳を疑い、誰も何も言えなくなる。
ユウトが呟くように言う。
「……な、何故……ですか……。」
ユウトのその言葉を、またマイケルが翻訳してミコに伝えると、ミコは何の抑揚もなく答える。
「何故?いえ。それは"慄華を消すための方法"には入りません。」
そこにイーネが口を挟む。
「…………その男は……何処にいる。」
マイケルが紙を渡す。ミコが答える。
「デグス・ラスターは"第五国龍の国"のガルダにある、タイヨウバイオカンパニーに居ます。」
「………………。」
「…………同性同名の別人って訳じゃないみたいだね……。」ナユタ
そこにタトラスが茶々を入れる。
「えぇ?!結局自分らのアジトに目的物あったの?!灯台下暗しってやつだねぇ。」
「黙れ。お前らの仕業だろうが。呪いを消す為の対象を、こっちの人員。しかも、核師の専門家を潰しにかかりやがったな。」
イーネが言うと、タトラスが明るい表情で答える。
「いやいや。俺なぁーんも知らんしぃ。身内1人殺して大事な能力者3人の呪いが消えるんでしょ?マシロにしちゃあ、まだいい方じゃないー?」
「…………お前とは会話しない方がマシだな。」イーネ
「ありゃりゃ。」タトラス
今度はユウトがミコに聞く。
「あなたは"粛清"という言葉を使いました。それは、殺せ。という意味ですか?」
マイケルが翻訳してミコが答える。
「殺すことが、最も確実で手早い方法です。殺すに至らず済む方法としては、四肢を切断し、拘束するなども良いでしょう。」
「……………………。」
「そんなの……代案になってない……。」
マリが呟いた。
暫く沈黙の時間が流れる。
またミコが抑揚なく話し始めた。
「では、これでお支払いは完了致しました。"残り"はお返し致します。」
するとミコは両手を合わせて前に差し出す。
その両手の平は、何かを包んで閉じ込めているかのようだった。
ミコが両手をゆっくりと開くと、また、目を開けていられない程の閃光が放たれる。
ミコを除く全員が、思わず目を瞑った。
ギシィ 「…………お、……っも……!」
目を瞑っている間に、何故かユウトの苦しそうな声と、木が軋むような音が聞こえる。
光が止んで、ゆっくりと目を開けた、そこには。
「ふぁぁぁああああ。よっくねたぁ!…………ん?あ!ユウト!おっはよー!あれ?なんかユウト……小さくなった?……。ま、いっか!あれ?!九尾は?!俺、どーしてたんだっけ?!ん?!おお!イーネ!マリ!ナユタ!おっはよー!え?君だれ?!こんちわぁ!」
「………………………………。」
身長190センチくらいのムキムキの男が、ユウトの膝の上で、ユウトと向かい合わせになるよう、すっぽんぽんで座っていた。
グレーの短髪はオールバックで、青い大きな瞳。
どこか見覚えがありそうな、屈託のない笑顔だった。
「………………。」
沈黙が流れる。また裸の男が言う。
今度は声をひそめて。
「あ。やっべ……。今喋ったらダメなやつだったか……。またユウトに怒られる。静かにしてよぉっと。」
「……………………タカト……さん……。」
ユウトが呟くと、男がユウトに笑顔を見せる。
「ん?なぁに?」
「……………………タカト……さん……。」
「え?なに?なに?なに?」
「タカトさん。」
「えぇ?!だからなんだよー!!」
「…………………………トラヴィス・ゼイリー・アッシュカスター……。」
「え……。何でフルネーム……?な、なんか悪いことした?……俺…………。」
ミコは変わらず無表情で空間を見つめている。
マイケルは驚いて男を見ている。
マリ、ナユタ、イーネも、驚いた表情のまま固まり、タトラスは「え……なに。この状況……。」と、つまらなさそうに顔をしかめていた。
ユウトは、呆然としていたが、次第に一筋の涙を流して言う。
「…………トラヴィス先輩……。」
「ええ?!は……はい……。な、なんでしょうか……。ごめんなさい……。」
「………………戻ったら、また元の名前で呼びましょうって……言ってましたよ……。」
「もどった……ら?…………ん?!んん?!!…………へ……へへ。へへへへへ。」
ユウトの言葉で裸の男は自分の両手を何度も確認すると、今度は自分の体をペタペタと確認するように触る。
男の顔は徐々に綻び、最後は満面の笑みで言った。
「もどったぁーーーーー!!!!」
大声と同時に、裸の男はユウトの膝の上から飛び降りると、ユウトが座っている横で、イーネ達の方を向いて大の字で立った。
「わ……。ちょっと……。」マリ
つまりは、アソコも丸見え状態な訳で、イーネ、マリ、ナユタは手で視界を遮って目線を逸らす。タトラスだけは「ほぉ。なかなか。」などと呟きながらガン見している。
そんなことに気づいていない裸の男は、その状態のままナユタに話しかける。
「ナユタ!!見ろよ!すっげぇ!もどったぁ!!」
「ちょ!……タカト!え?!いや、トラヴィス!ちょ、見えてるから!隠して!ねぇ!とりあえず!!」
「あ!いっけねぇ!マリごめん!………………よっこらしょっと。」
「え?」ユウト
裸の男。つまりは元タカト。本名トラヴィスは、巻き戻るかのように、再びユウトの膝の上に、ユウトと向かい合うようにして座った。
ユウトが言う。
「タカトさん。この体制で隠す気ですか?」
「いい感じに隠れんね!」
「いや。普通に重いです。今、鷹じゃないんですよ?190センチのムキムキ変態男ですから。」
「そっかぁ。人間に戻ったら服着ないといけないのかぁ……。」
「そんな鷹の方が良かったみたいなテンションで言わないで貰えます?」
そんなやり取りがされている中、イーネがナユタに話しかける。
「あれが。タカトの人間の姿か?どーゆーことだ?」
「いや……。僕に言われても……。ミコからは何も読み取れないし…………。確かに……。あれはタカトで……。人間に戻った……。戻ってる……。」
2人の話しにマリが入る。
「タカトさんって陽キャ。……なんですね。」
それに少しだけ間を置いてナユタが答える。
言葉に詰まりながら。
目に涙を溜めながら。
「うん……。そうなんだよ……。そう…………。そうなんだ……。」
そんな会話に参加しないタトラスは、ゆっくり歩き出したかと思うとテーブル横で歩みを止めて、指先でテーブルの模様に触れながら喋り出した。
「ふーん。……………………なんか、都合いいよねぇ。」
「あ?」イーネ
タトラスが言葉を続ける。
「代償を支払って。"残り"?は返って来たんだぁ。いったい、君達は何を支払ったんだろうね?」
「………………。」
タトラスの指摘は正しく、誰も現状を説明できる者はいなかった。
「君達は、慄華の消し方の情報を手に入れ、戦友の元の姿も手に入れた……。それって代償を支払ったと言えるのかなぁ?どう思いますぅ?」
タトラスはマイケルに話しを振ったようだった。突然問いかけられたマイケルは焦って言葉を出す。
「え?!あ!え?!。ちょっと私、どーゆー状況か分かりませんけど……。その!……こ、こんなことは……ま、まぁ、今まで無かった例……では、ありますかね?!」
「ですよねぇ?随分と、依怙贔屓されてるとしか、思えなくないですかぁ?」
タトラスの言葉にイーネが口を挟む。
「おい……。何がいいてぇんだよ。」
だが、イーネの言葉を気する素振りもなく、タトラスは言う。
「やっぱり、マシロの予想は当たりかなぁ?……。こまったなぁ……。とりあえず……。」
「イーネ!!」
ナユタが叫ぶ。
同時に、タトラス後ろの空間にファスナーが出現し、そのファスナーが開いていくと、何もないはずの空間が布切れのように開いていく。
「ミコは、僕達が貰って帰るね。」タトラス
――。
ドォォォオオオオオン




