10-① 愛情とは最も醜い何か
<駐車場>
いつもの装甲車のような車の前。
ナユタがずっと駄々を捏ねていた。
「ななな何でそんなに受け入れられてるの?!おかしくない?!僕が正常な反応だと思うんだけど?!」
それにユウトが答える。
「だって。武力で負けるんだから、仕方ないじゃないか。」
それにイーネが付け足す。
「それに、こいつ、全く嘘ついてないんだろ?お前が見て言ってんじゃねーか。」
「そそそそそそーだけど?!そーだけども?!」
そこにタトラスが加わる。
「はっはーん。なるほどな。まぁ、ナユタ君よ。顔でもセンスでも力でも劣る僕が相手だと……まぁ、なんてゆーか。災難だとも思うけど。まぁ、仲良くやっていこーよ。」
それに何故かイーネが賛同する。
「あーな。大丈夫だ。お前はいい奴だ。負けが決まった訳じゃねーよ。」
「はい?!何の話し?!そーゆー話しじゃないから!!え?!なに!その可哀想な奴を見る目!違うから!」
そんなこんなで、チェッキスへ向かってなかなか出発しないメンバーを、一歩引いた視点でアルバラを抱えたマリはボーッと見ていた。
結局、ニコは合流していない。
タトラスが一緒にチェッキスへ向かうことが決まったことで、作戦が変更となった。
現時点でタトラスはマシロ側の人間であり、敵とみなされている。
イーネが言うには、「わざわざ手の内晒してやる必要はねぇ。ニコには全く別ルートでチェッキスに向かって貰う。何かあった時の助けにもなれば、あいつの能力だと、いざという時のこっちの切り札にもなる。」とのことで、少なくとも、チェッキスにつくまでは別行動となった。
頑なにタトラスと行動を共にすることを嫌がってるのはナユタで、その理由については言っているようで言ってない、中途半端なやりとりが続いていた。
するとどうやら、意を決した表情のナユタが口を開く。
顔を真っ赤にしながら。
「だ……だ……だ……だだだ……だってそいつ……。ま、ま、ま、マリさんを見て…………。や、ヤりてぇとしか思ってないんだよ?!!!」
「………………。ああ。」ユウト
少しの間の後、タトラスがナユタに近づいたかと思うと、ナユタの両肩をガシリと掴んだ。
タトラスを怒らせたのではないかと、メンバーに緊張が走ったのも束の間、タトラスが言う。
「馬鹿野郎……。ナユタ……。恥じるな!!!それが…………漢だろう!!」
「………………はい?…………」ナユタ
「………………。大丈夫そうだね。」ユウト
「……ん?どれのことだよ?戦闘回避したことか?やっとチェッキス行けるってことか?ナユタの童貞思考に終止符打てることにか?」イーネ
「僕はそこまで考えてなかったよ?」ユウト
ヒソヒソと話すユウトとイーネをよそにタトラスは言う。
「いい女の体!いい女のケツ!いい女の胸!いい女の顔!それを見て、漢のなかの漢が言うそれは、決して恥じることじゃない!いや、むしろ誇りに思っていい!そうやって、ご先祖様も繁栄してきたんだ!!いや、むしろそれはディスティニィ!であり、フォーチュン!!セクハラだぁ?!はしたないだぁ?!馬鹿野郎!!これが無くて、どうやって人類は前にすすむ!!愛を育む?!この時代だが俺は言わせてもらうぞ!!俺は!いい女と!やりたい!!!」
タトラスのキメ顔が決まっていた。
ナユタは圧倒されて言葉も出ない様子だ。
タトラスはナユタと肩を組む。
「しゃーねぇな。……お前、最近の若者だな?こーみえて俺、歳取ってるからさ。それって、最近はやりの草食系ってやつだろ?まぁ……なんだ……。チェッキスまで時間はあるんだ。おれのオススメのあれ。教えてやるよ。」
「……………………結構です…………。」
そんな2人を見て、「いこうぜ。」とイーネが。「いこいこ。」とユウトが、それに続いてマリも乗車する。
最後にタトラスとナユタが乗り、一同はチェッキスに向かった。
――――――
<車内>
タトラスの横にマリが。反対側のシートに、イーネ、ユウト、ナユタが腰掛けていた。
タトラスはしつこくマリに話しかけている。
「じゃあさ、ブブラバ美術館は?なんか、期間限定で近代部族の写真展示があるらしいよ?」
「いや……。場所の問題ではないです……。」
「いや、まじで後悔させないよ?俺、好きな子には尽くすタイプだから。」
その様子をナユタは心配そうに、ユウトは関心しながら、イーネは興味なさそうに見ていた。
ナユタが言う。
「ああああ、あれ、と、止めなくていいの?!」
それにユウトが返す。
「まぁ。本人達の自由じゃない?むしろ、ナユタいいの?ナユタも積極的にいかないと。とられるよ?」
「結構ハッキリ言うようになったよね?!!そ、そ、そーゆー問題じゃなくて!!」
そこにイーネが口を挟む。
「マリも適当にいなしてんじゃねぇか。ほっとけよ。心配なら、俺らに聞かねぇでお前が動け。」
「せせせせせ、正論!正論だけどぉ!!……ちょ、ちょっと、もぉ無視決め込まないでよぉ!」
またタトラスとマリの会話に戻ると、タトラスは諦めずにマリをデートに誘っている。
「えぇ。じゃぁあ。マリさん的には、どーなったら、俺とデートしてもいいかなぁって気持ちになる?」
「えぇ………………。はぁ……。そうですね……。じゃあ、タトラスさんの能力の事、教えてくれるなら……。」
「え?!まじ?!教える教える!んじゃあ、ブブラバ美術館デートね!」
「………………え?教えてくれるんですか……?」
「もちー。俺ってさ、好きな子のお願いはつい聞いちゃうタイプなんだよねー。あ!じゃあ、ブブラバ美術館の後は一緒にディナーはどお?マリさん、お酒飲める?」
「まぁ……。ほどほどには……。でも、ディナーまでは行きませんよ?」
「えぇ……。あ!じゃあ、俺さ、実は、最初からチェッキスに向かってたんだよねー。マシロに言われて。その理由も教えてあげるから、一緒にディナーどお?」
「行きます。」
「まじで!俺、絶対めっちゃ美味しいとこ連れていくから。あ!よかったら、その後は夜景の見えるバーでお酒の続き……なんてのは?」
「行きませんよ。」
「えぇ……。あ!じゃあさ、今度はマシロとタイヨウが喧嘩してる理由について教えてあげるからぁ!」
「それは知ってるので結構です。」
「え?!そうなの?!じゃあ……。」
「まてまてまて。」イーネ
タトラスとマリの会話にイーネが割り込む。
「情報でマリのこと釣ってんじゃねぇよ……。マリも乗るな……。」
それにマリが何食わぬ顔で答える。
「え?でも、タトの能力とか知りたくない?」
「いつの間にタトって呼んでんだよ……。いや、危ねぇから。ほいほいついていくな……。」イーネ
「イーネの言う通りですよ!ダメです!そんな男とデートしたら!」ナユタ
「男の嫉妬は醜いよぉ?君たちぃ。」タトラス
「違う!!!」ナユタ
すると、車が急に減速したかと思うと暫くして完全に止まってしまった。
予定では、まだチェッキスまでは距離がある。
ユウトが小さな声で「止まったね。」と言うと、マリが運転席の方を見て言う。
「どうかしましたか?」
それに答えた運転手の声は、何かに怯えているようだった。
「核師様……。か、囲まれました……。3台の車に……。ゾロゾロと男達が降りてきます……。」




