9-③ 弱き者
車はまた走り出した。
「ユウト。意味が分からないですわ。」ポッツォ
「いや。僕も分からなくて。」ユウト
「お前の説明きしょすぎ。」イーネ
「あの……。もっかい言って貰ってもいいですか?
……。」マリ
「ええ?いや。だから。知らない人が契約書持ってきて、サインしたら九尾が貰えた感じ?」ユウト
「訪問販売かよ。」イーネ
「クーリングオフできるのかな……?」マリ
「いや。オフしない方がいいだろ……。」イーネ
「え?でも、持ってるのも怖くない?」マリ
「こうやって見ると、なんだか可愛いですけれど。」ポッツォ
「最低でも20人以上殺してんだぞ。」イーネ
『騒ぐな小僧ども。不愉快極まりない。』
車にはイーネの横にマリ、その横にポッツォ、反対側の座席にユウト、その横に小型犬くらいのサイズの九尾が座っていた。
タカトはユウトの膝の上で眠るように横になっている。
「従属契約……魂……肉体……。その人は何者なんですかね?」マリ
「九尾はお前の命令を聞く訳でもないんだろ?」イーネ
「聞いてくれるなら、とっくにタカトさんの魂ってゆうのを返して貰ってるよ。」ユウト
イーネが九尾に向かって言う。
「おい九尾。そいつは何者だ。」イーネ
『私の名はアルバラだ。そして貴様らに話すことなど何も無い。』
「アルバラ……ね……。ま、答える訳ねーわな。」イーネ
「ユウトさんは、その契約?の内容、知らないんですか?」ユウト
「あー。うん。あんまちゃんとも見てなかったし……。とりあえずサインしちゃったって感じかな。」ユウト
「詐欺師に騙された被害者みたいなセリフやめろ。」イーネ
「九尾は分かっているんじゃないの?その契約の内容。」ポッツォ
「あぁ。確かに。」ユウト
そう言って、アルバラに契約内容を聞こうとしたが、アルバラは無視を決め込むように丸まって眠りはじめた。
「素直には教えてくれなさそうですね……。」マリ
武力でアルバラに勝てない今、アルバラに対して何かをするのは得策では無かった。それが全員一致で分かっている為、メンバーは早々に諦めをつける。
話しを切り替えて話したのはポッツォだった。
「っで、これからとりあず、本部に戻るわよね?九尾の事もだし、その状態のタカトもほってはおけないし。」
ポッツォの言葉に返したのは意外にもアルバラだった。
『ククク……。あんまりのんびりしない方がよいぞ?魂は肉体から長く離れすぎると元に戻れなくなるからな。』
「…………こいつ……。」
ユウトが怒りのこもった声を漏らす。
全員が暫く黙り込んだ。
アルバラの言葉が本当なら、今すぐにタカトに対する策を講じなければならない。
暫くして口を開いたのはイーネだった。
「…………だったら、2つ同時に試す。…………とりあえず目指す場所は"ユーテリア"だ。元々の予定で、こっちにナユタが向かってる。"ユーテリア"でナユタと合流して、後からニコをこっちに送ってくれれば、ユニットとしてはまずまず動けるだろ。ポッツォは本部に戻って、この事を報告してくれ。報告書だけじゃ無理ありすぎるからな。」
「でも、それでどうしますの?」
「まずはナユタの能力でアルバラの中が覗けるか試す。思考が読めたら万々歳だが、望み薄だろうな。ニコが合流次第、俺らはそのまま"チェッキス"に向かう。」
「イーネ…………それって……。」マリ
「…………代償の巫女。そいつに、魂をタカトに戻す願いを提示してみる。…………ただ、それに対する代償が、どれくらいデカいかが分からねぇ。だから、それは作戦Aとして、作戦Bは。……ポッツォ。お前に頼みたいんだが"―――――"。」
――――――――
<小話>
チーミスタントの人々はタイヨウカンパニーによって告発され、後々警察の捜査が入ることになった。イーネは言っていた。
「一生、父親と母親に会えなくなるんじゃなくて、少し会えない期間があっても、正気に戻った家族と、また一緒に暮らせる確率に。かけてやった方がいいだろ。」と。
――――――――
<ユーテリア>
ユウトは動物用のスリングという物を購入した。斜めがけの抱っこ紐のようなものだ。そこにタカトを寝かしつけるように入れて移動する。
ユーテリアは宿場町として有名な場所だった。メインとなるのは円状の大きな通りで、道の両端には沢山の店や宿泊施設が並ぶ。
その中の1つの中規模な宿泊施設を予約し、明日、ここに来るニコを待つ事になった。
「ナユタさん、ここの前についたそうだよ。」ユウト
「お前、荷物多いな……。」イーネ
「だって、タカトさん置いていけないし。九尾を野放しにするのも違うかなって。抱っこするに落ち着きました。抱っこしてくれるの?」ユウト
「嫌。」イーネ
「私、抱っこしましょうか?」マリ
「やめとけよ。手に爆弾抱えてるようなもんだぞ。」イーネ
そう言いながら、宿泊施設の前に出ると棒立ちのナユタと合流した。
会って早々にナユタが大きな声をあげる。
「なにそれ!なにその格好!思ってたよ!すんごい旅行気分じゃんって!九尾うんぬんの報告聞いたんだけど?!緊張感あるの?!ないの?!どっち!!」
「……………………。」
「説明めんどくさいからって頭で喋るのやめてくれる?!僕、聖徳太子ではないから!!」
イーネ、マリ、ユウト、全員が手持ちのダル着を着ていた。
「いいんじゃない?だって、今日一日はする事無いんだし。明日、ニコと合流してから移動だしね。」ユウト
「私、温泉入りたいです。入りませんか?」マリ
『私も入るぞ。』アルバラ
「え?動物いけるところなんであるのかな……。」ユウト
「それ?!九尾それ?!なに?!ほんと、ちょっと、温泉入る前に色々あるでしょ?!!」ナユタ
「そうそう。温泉入る前にコイツの思考が読めるのかやれよ。」イーネ
「はい?!雑!雑すぎ!死にかけたって聞いてんだけだど?!」ナユタ
「死にかけてるよ。ほらここに1人。いや。1匹。」ユウト
「え?!まって?!なんでそんなフランクに言えるのユウト?!その感情なに?!ちょっとだけ面白くなっちゃってるのおかしいでしょ?!」ナユタ
「一気に明るくなりましね。」マリ
「うるせぇの間違いだろ。」イーネ
「うるさくないよ!正常な反応だよ!!君達、自分らの異常さにホント気づいてないよね?!」ナユタ
「それ、私も入ってますか?」マリ
「え?!……あ。えー。え?!」ナユタ
「最低男ー。」イーネ
「なんなの?!」ナユタ
そんな会話の後、ナユタは荷物を置きにいったのだが、ナユタを待たずに他のメンバーは温泉に入りにいったそうな。




