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8-⑤ お狐様のいうとおり

『ククク……。あああ。痛い。痛いねぇ……。』

 

 土煙の中から九尾の声がする。九尾の姿は煙のせいでハッキリとは見えない。

 

「タカトさん。」

 

「ぴぴぃ!」

 

 タカトは人よりも標的に対する攻撃の命中度が高い。


 ユウトの合図で、タカトは煙の中の九尾に攻撃を仕掛けに飛んでいく。


 そのタカトが、おそらく九尾がいるであろう所を素通りし、ユウトに向かって攻撃を仕掛けてきた。

 

「「「?!」」」

 

「タカトさん?!!」

 

 ユウトが咄嗟に、ナイフでタカトの攻撃を受け止める。

 

 ガチンッ

 ギリギリギリギリ

 

 刃物にも勝るタカトの爪がユウトの持つナイフと当たって激しい音をたてる。

 

「タカトさん?!僕です!!!」

 

「ぴ?!ぴぴぃ?!」

 

 タカトはやっとそこで攻撃を中断した。タカトも訳が分からないといった表情をしている。

 

「どうしたんですか?!タカトさん!」

 

「ぴ、ぴぴい。」

 

「『九尾に攻撃しただけだ。』って……。」ユウト

 

『おやおやおや。ダメだねぇ。そんなんじゃあダメだよ。』

 

「何かしらの九尾の能力か。」イーネ

 

「あら。それじゃあ。」ポッツォ

 

 今度はポッツォがしかける。


 煙は晴れてきており、九尾の足にイカの足を巻きつけて、勢いをつけて槍での一刺しを繰り出す。

 

「お前もかよ!!!」イーネ

 

「え?」ポッツォ

 

 ポッツォの攻撃はいつの間にかイーネに向いていて、イーネが能力を使って攻撃を回避したことで、ポッツォの攻撃は地面へと突き刺さった。

 

「ど、どうなってるの?!」ポッツォ

 

『あらあら。楽しそうだねぇ。仲間内でジャレて楽しいかい?』

 

 九尾は余裕たっぷりの笑みでイーネ達を見下ろしていた。

 

「遠隔での攻撃も……試す?……」マリ

 

 マリがジレの銃口を九尾に向ける。

 

「おいおい。まじかよ……。」イーネ

 

 そう思っているのはマリだけで、マリの銃口は最初からイーネ達に向いていた。

 

天使の射る矢(シューリア)。」

 

 ――。

 ドォンッ

 

 イーネが能力を使って弾道上にいたポッツォ、ユウトを避難させ、マリの放った攻撃は壁に当たって音をあげる。

 

「え?確実に九尾に向けて打ってたのに……。」マリ

 

「皆んな、攻撃が終わってから異変に気づいてますね。」ユウト

 

「…………やっぱり、人を騙くらかす系の能力、ちゃっかり持ってやがんじゃねぇかよ……。」イーネ

(この能力……。やばいな……。やばすぎる……。これじゃあ、仲間じゃなくて……。)

 

『賢い子は気づいたろう?……そうだ。ここにいるのは味方じゃない。全員敵だと思った方がいい。だって、仲間の攻撃をくらいたくはないだろう?ククク。安心しなさい。ちゃんと私はここに存在している。皆んなで掛かれば、誰かの攻撃は当たるだろうよ。フフフ。アハハハハ!!ああ。楽しいねぇ。楽しいねぇ。………………じゃあ。頂くとしようかぁ。』

 

「『九尾!お座り!!』」ユウト

 

「………………。」

 

 少しの静かな時間が流れた。

 

「やっぱダメですね。」ユウト

 

「このタイミングで試すお前の勇気な。」イーネ

 

『ああ。教えてあげるよ。私の第一言語はそれじゃあない。』

 

 九尾のその言葉で、イーネとユウトは気づいたようだった。


「お喋りな狐なこって。」イーネ

 

「テンジョウ家の言葉…………。」ユウト

 

「使えるよな?お前。」イーネ

 

「ごめん。数単語しかしらない。しかも、全部タカトさん用の他者を強化するような言葉ばっかり。」ユウト

 

「無能茶髪雑っぱ野郎が。」イーネ

 

 九尾の様子が大きく変わる。尻尾を逆立てて全身が青白く光り、尻尾の先の空間が蜃気楼のように揺らめいていた。

 

瑠璃羅燈妖(るりらとうよう)。』

 

 ドドドドドドドド

 

 尻尾の先から炎のような、弾丸のような、ビームのような、青い何かが周囲一体、余す事なく打ち込まれる。


 それを、それぞれが必死の思いで交わす。

 

 グワリ

 

 九尾の攻撃、瑠璃羅燈妖がまだ収束つかない中、九尾の大きな口がユウトを飲み込まんと近づく。


 しかし、そこは、身体能力と武器の扱いで、非戦闘系の能力にも関わらず、感覚種の序列7位内に入る異端児。空中でどうやっているのか、九尾の噛みつきを躱わし、躱わしながらも九尾に一撃を入れようと銃を構える。

 

 ――。

 バンッバンッバンッ

 

「?!……………………壁?!イーネか?!」ユウト

 

「マリに銃口が向いてんだよ!」イーネ

 

 ユウトはイーネの能力で壁に向くように転移されていた。


 すかさず瑠璃羅燈妖の攻撃が襲いかかるため、一旦はその場から逃げるしかない。

 

 別の場所ではポッツォが瑠璃羅燈妖の攻撃を掻い潜りながら九尾の間近にきていた。

 

(チャンスですわ。)ポッツォ

 

 ガチンッ

 

 ポッツォが振り下ろした槍は、イーネがユウトのナイフを使って受け止めていた。

 

「え?!」ポッツォ

 

(九尾の攻撃で場が荒れ過ぎて能力の発動が極端に制限された……!しかも、他の奴に構いすぎて、こっちに向かってきたコイツへの反応が遅れた……!)イーネ

 

 ドカンッ

 

 ポッツォの攻撃に吹き飛ばされてイーネが壁に打ち付けられる。

 

「ど、どうして?!確実に……!」ポッツォ

 

「馬鹿!逃げろ!!!」イーネ

 

 ポッツォが動揺した隙をつくように、九尾の爪がポッツォに振り下ろされる。

 

 ドカンッ

 

 九尾の攻撃をまともにくらったポッツォが吹き飛ぶ。

 

「ぴぃぃぃいいい!」

 

 タカトが九尾に向かって突っ込む。

 

 ――。

 

「え?」マリ

 

 突っ込んでいる最中のタカトがマリの間近に転移された。イーネの能力によって。


 イーネには、タカトがどのうよな挙動をとっていた様に見えたのだろうか。

 

 ガチンッ 

 

 マリはなんとかギリギリでジレを使ってタカトの攻撃に対する防御を張ったが、防御しきれずに、タカトの翼で大きく左腕を損傷する。

 

「?!…………マリ?!」

 

 イーネが混乱の声をあげる。

 

『瑠璃羅燈妖。』

 

 ドドドドドドドド

 

 一度止んでいた瑠璃羅燈妖が再び再開された。


 休む間もなく必死の思いで全員は攻撃を躱わす。


 洞窟内は見るも無惨なぐちゃぐちゃになり、土煙が巻き起こって空気が悪い。それによって、イーネの能力もほぼほぼ使えなくなっていた。

 

 グワリ

 

 イーネに向かって九尾の口が伸びる。それを何とかギリギリで躱わしたイーネに

 

天使の射る矢(シューリア)!」

 

 マリの攻撃がイーネの脇腹を貫いた。

 

「……!!くっそ……が!……。」

 

「……!!!い、イーネ!!」

 

 まだ瑠璃羅燈妖は終わってない。


 コンマ0秒の世界で動かなければ死が待っている。


 負傷など気にしてられない。


 しかし、仲間が仲間を攻撃する連鎖が止まらない。


 そうしていくと、九尾に攻撃を仕掛けることに躊躇いがうまれる。


 結果として、九尾の攻撃を一方的に受ける負の連鎖が続く。

 

 それでもやるしかない。


 やらなければ。


 待つのは死。

 

 バンッバンッバンッ

 

 ユウトの攻撃はポッツォに向けられていた。弾丸をいなすポッツォに、九尾の攻撃、さらには

 

(まずいですわ!)

 

 タカトの攻撃も迫っていた。

 

 ――。

 

 躱わす事ができない窮地に、ポッツォに対してイーネの能力が発動する。


 ポッツォはイーネに後ろから抱きしめられるような位置に転移していた。

 

「あらやだわ。ジェントル。」

 

「まだ無駄口叩けんのは才能だな。」

 

天使の剣(エンジェルキッス)!」

 

 そこに向かってマリの攻撃が飛んでくる。


 ポッツォがイカの足で遠くを掴み、体を引き寄せるようにして移動することで、2人で攻撃を回避する。

 

「どうしますの……。これ……。」

 

「…………。」

 

瑠璃天惺羅(るりてんせいら)。』

 

 九尾の声の後、九尾の真上で青白く光輝く球体から、まるで大量の彗星が落ちてくるような攻撃がこの場全体に振り注ぐ。

 

 ポッツォとイーネも抱き合って留まっている訳にはいかず、散り散りになって攻撃を回避する。

 

 ドドドドドドドド

 

 広範囲の攻撃を躱わしている間も味方と九尾の攻撃が迫る。


 誰もが混乱し、息つく間もないこの状況に急激に疲弊していた。

 

 ユウトにポッツォの攻撃が向く。その2人に、九尾の牙が迫る。


 それを躱わして反撃したユウトの攻撃はポッツォへ。


 ポッツォを守ろうとしたマリの攻撃はタカトへ。


 マリの攻撃を回避したタカトに九尾の爪が迫り、それを回避するタカト。


 攻撃後の九尾を狙うように繰り出したポッツォの攻撃はイーネの能力によってマリのもとへ。


 マリがポッツォの攻撃を防御している所に九尾の攻撃。


 その九尾を狙うユウトの攻撃も、マリとポッツォへ向い、窮地に立たされた2人をイーネの能力が救う。


 ユウトに再び九尾の攻撃が。それを阻止せんと動くタカト。


 それはまるで蠱毒。


 気味の悪い戦闘が続く。


 しかし、一時でも気を抜けば


 死が、今か今かと待ちかまえている。

 

『瑠璃羅燈妖。』

 

(まずいですわよ…………ほんとうに……。)ポッツォ

(どっちにしろ、このままじゃ、弾切れ、核切れでジリ貧になって全員死ぬ……。)ユウト

(…………これ……死ぬんじゃ…………?)マリ

(………………。)イーネ

 

『あああ。いい魂の音がするねぇ。』

 

 ドドドドドドドド

 

 でも、だれも集中を切らしていなかった。


 誰も諦めてはいなかった。


 何かの打開策を模索していた。


 けれど、焦っていたのは事実で、死を意識していたのも事実だった。

 

 ガブリ

 

 タカトが九尾に咥えられてしまった。

 

「タカトさん!」

 

 しかし、大きな外傷を負っているようには見えない。


 そこからタカトの反撃があってもおかしくなかった。

 

『あああ。この子も上質な魂だ。今日は本当についている。』

 

 -九尾は魂を喰らう-

 

 タカトの様子がおかしいことに全員が気づき、一度、攻撃の手が止む。


 九尾の猛攻も、この時だけは止まっていた。

 

 九尾は咥えていたタカトをゆっくりと地面に下ろす。


 タカトはピクリとも動かない。

 

「タカト……さん?……。タカトさん!!!!」

 

 ユウトが叫ぶ。

 

『あああ。死んでしまって可哀想に。』

 

「「「?!」」」

 

「……………………………………嘘だ………………。タカトさん!!起きて!!タカトさん!!!!」

 

『アハ…………アハハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』

 

 気味の悪い九尾の笑い声がこだました。

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