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8-① お狐様のいうとおり

「あらぁ。可愛い顔してるじゃなぁい。才能のある子って、顔はイマイチだったりするから期待してなかったんだけど……。もう少し大人になったら、オネェさんが、あーんなことや、こーんなこと、色々教えてあげて、あ・げ・る♡」

 

 ボンキュボーン。腰からイカの足が生えたグラマラス美女にイーネが言い寄られているのをマリが横から眺めていた。

 朝の便の飛行機に乗り、現在昼過ぎ。


 空港内にある昼間からやっているバーが指定の待ち合わせ場所だった。


 ここまで来たのはイーネ、マリ、タカト、ユウト。


 ベリーやニコは別任務となり、アエツは一旦、事務の仕事に戻っている。娘の誕生日プレゼントを買わないと!なんて言っていた。ナユタはそろそろフェリーで会社に戻れている頃だろうか。


 イーネ、マリ、ユウトは機内で食事を済ませたが、タカトはまだの為、ユウトとタカトは空港のテラスに行ってしまった。主食がナマ肉だから、外で与えるのだという。

 

 イーネとマリの2人でバー独特の高い椅子に腰掛け、小さな丸テーブルを囲んでいた。


 これから任務の為、2人ともジュースを飲んで待ち合わせ相手を待っていたのだが。

 

 ここで冒頭に戻る。


 紫色のカールした髪は肩まで伸びていて、ノースリーブにショートパンツの団服はピッタリと体にフィットしている。


 ふくよかな胸元は大胆にあいていて谷間が見え、くるぶし丈のブーツの履き、スラットした生足見える。

 

 腰からは薄紫色をした5本のイカの足が、まるでドレスかのように伸び、床には引きずらないように足先がクルンと外側に巻いている。

 

「………………。」イーネ

 

「あの……。ポッツォ・グラニアさん……ですよね……。」マリ

 

 すると、イーネしか眼中になかったポッツォがマリの方を向き、まるで品定めでもするかのように下から上まで舐めるように見る。

 

「………………60点ね。顔もそこそこ。スタイルもいいけど。…………なんか地味ね。モブって感じ。あら。タカトとユウトは?どこにいるのかしら。」

 

 そう言ってポッツォは辺りを見渡す。

 

(すんごい人きちゃった……。ってか、いつものイーネの初対面ディスが無いけど……。イーネといえど、男の子だし、男の子って、やっぱりオッパイおっきいお姉さん好きな……。)

 

 なんてマリが思っていると、ほんの少しだが、マリの後ろに隠れるようにしてイーネがマリの方による。表情を見ると。


 心の底からドン引きしている顔だった。

 

 タカトとユウトを探すポッツォにマリが言う。

 

「えっと……。今、タカトさんの食事中で……。」

 

「ああ。そうなの。だったら先に行きましょ。外に車の手配。出来てるから。」

 

 ポッツォのセクシーな投げキッスがマリとイーネの方にとんできた。


 ――――――

 いつもの装甲車のような車に乗り目的地へと向かう。

 

 マリの横にイーネが座り、対面の座席にポッツォが座っている。その隣にユウトが。ユウトの肩にタカトがとまっていた。


 ポッツォが最初に話し出す。

 

「改めてまして。私が組織種の序列一位、ポッツォ・グラニアよ。"チーミスタント"はここからそれほど遠くないわ。夕方になる前にはつくかしら。タカトとは一緒に仕事したことあるけど、それ以外の幻種ちゃんって初めてなの。とってもワクワクするわぁ。宜しくね。坊や♡」

 

 イカの足が邪魔だろうに、器用に腰掛けるポッツォは足を組んで前屈みになっている為、胸の谷間がよく見える。

 

 その姿勢でイーネに向かってウィンクしていた。

 

 イーネはというと。

 

(………………やけに距離……。近いんだけど……。)マリ

 

 椅子からずり落ちるんじゃないかと思う程にだらしなく座席に腰掛け、鼻から下をパーカーを引き上げて覆い、マリの後ろに隠れようとでもしているのか、随分とマリに寄って座っていた。目元しか見えないが表情も険しい。


(イーネは……えっちなお姉さんが苦手…………っと……。)マリ

 

 ポッツォはイーネに向かって話しかけているが、イーネが返す様子がなく。見かねたマリがポッツォに聞く。

 

「……ポッツォさん。組織種の序列一位って……。そんなのあるんですね。」

 

「ええ?あなた知らないの?私の事も知らない訳?」

 

「…………すみません……。」

 

「呆れたわぁ。」

 

 マリの質問に答えだのはユウトだった。

 

「遂行任務数やジャンクの討伐数などで算出して、感覚種、組織種、幻種、別に上位7名は公表されるんだ。ちなみに、過去の感覚種一位はアエツさんだったし、幻種はずっとタカトさんだよ。まぁ、幻種はタカトさんくらいしか居なかったってのがあるけどね。」

 

「ぴぴぴぃ!ぴぴぃ!」

 

「あぁ。はい。そうですね。組織種の序列にタカトさんを入れても、いつも上位ですね。」

 

「ちなみに、私のこれまでのジャンク討伐数は21よ。まぁ、今回の突発的なジャンクの増加で、さらに討伐数が伸びたから、30を超えてしまって……。もう数えてないわぁ。」

 

 ポッツォの自慢らしかった。困った顔をしながらも、どこか誇らしそうに話す。

 

(………………この前、イーネ。100体くらい狩ったんじゃなかったっけ?……。)マリ

 

 いつもならこのタイミングで、イーネから『そんなことで自慢してんじゃねーよカス。』くらいの野次が飛んでもおかしくないなとマリは思ったが、相変らずイーネが口を開く様子は無い。


 代わりに話していたのはユウトだった。

 

「ポッツォさん。この前イーネ、100体以上討伐してますよ?まとめて。」

 

「何それ?なんの冗談よ。」

 

「いやいや。冗談じゃないですよ。」

 

「面白くないわぁ。」

 

「ぴぴぃ。ぴぴぴぴぃ。」

 

「ジャンクの塊があったんですよ。こんな感じの。谷底に。」

 

「やめてよ。他人に話したら正夢になるのよ?」

 

「いや。夢じゃなくて。」

 

 ユウトとポッツォが話している隙に、マリはイーネに向かって小声で聞く。

 

「…………何で喋んないの?……」

 

「ああいう人種が普通に存在している事実に吐き気がしてんだよ……。」

 

「………………初対面でそんなに嫌わなくても……。」

 

「嫌ってねぇよ。」

 

「………………じゃあなに?……すんごい人見知りしてるの?」

 

「うるせぇ。」

 

 (…………。すんごい手のかかる反抗期の弟が出来たみたい……。兄弟いないから分かんないけど……。)

 

 するとまた、ポッツォがこちらに向かって話しかけてくる。こちらと言うのは、おそらくイーネにだ。

 

「お互いの能力を共有しましょうよ。先に私の能力から説明するわね。私の能力名は"遊宴烏賊(ゆうえんうぞく)"。見てわかる通り、腰から生えているイカの足を扱うわ。この5本の内の両端の2本は、他の足とは違って伸縮するの。最大約8メートルまで伸びるわ。それでいて、この足も、私自身も、とっても力持ち。200キロくらいの物なら、箸を持つように扱えるわ。そ・れ・と……。」

 

 ポッツォはおもむろに立ち上がるとこちらに向かってくる。(走行中の車で立ち上がるのは宜しく無い。)

 

 目の前まで来たポッツォは壁ドンで顔を近づけてきた。


 おそらくイーネに向かって近づけているのだが、イーネがマリの方に寄り過ぎて、イーネよりもマリの方が顔が近い。

 

 ポッツォの全身の肌をよく見ると、表面がしっとりと濡れているようだった。

 

「"パーフェクトボディ"。この技の発動中は、とーっても私、硬くなるの♡防御能力が飛躍的にあがるっていうのかしら。それと、体の表面の粘液には微弱な毒が含まれていてね。ちょっとだけじゃ効果は薄いんだけど、何度も触れたり、ずっと触れたりすると、相手は毒に犯される……。試しに、触ってみる?♡」

 

「…………。」イーネ

 

「…………あ……。いや……。触るのは無しで……いいんだと……思います……。」マリ

 

「あら?そう。」

 

 ポッツォは意外にも簡単にひいて、元の自分の席へと戻って行った。

 

「私の能力の説明は以上よ。次、聞かせて頂戴♡」

 

「………………。」イーネ

 

「あ……。あの……。私の能力は……。」マリ

 

「あなたは結構よ。他人の血液を摂取して、他人の能力をコピーする力でしょ?血の女神(ブラッドゴッテス)。一時期有名だったわよ。あなたの能力は聞いた事があるからいいわ。」

 

「……あ。……はい。」マリ

 

「私はね。イーネ。あなたの能力が知りたいわ♡教えて頂戴?♡」

 

(……さすがにもう助け舟出せないわよ……。あと、どんどんこっちにめり込んできてない?……。)マリ

 

 すると、暫くしてやっとイーネが口を開いた。

 

「視覚情報を基本とした3次元世界への介入。」

 

「……ん?」

 

「俺らの周囲空間には3つの次元があり、どんな物体でもその位置はパラメータまたは座標と呼ばれる3つの数字を使用して記述することができる。これらの3つのパラメータを指定するには様々な方法があるが、その為のルールは座標系と呼ばれ、最も一般的な座標系は直交座標系。俺らが身の周りの物の幅、高さ、深さについて話すときは、直交座標系を使用している。いくつかの座標系があるが、すべての3D座標系に共通しているのは、3つの独立したパラメータがあり、表面かどうかにかかわらず、空間内のどの点の位置も明確に記述することができること。単純だが、ここを基本として、そもそもどうやって俺らが3D情報知覚しているのか、遠方の物体に関するほとんどの情報は、光の助けを借りて俺達にとどく。光は、可能な限り速い速度で宇宙を駆け抜ける、単純な電磁放射だ。主に太陽から来る光は表面で跳ね返り、表面で吸収または反射され、吸収されない限り前進し続ける。光には、多くのことが起こり、反射、屈折、散乱、吸収することができ、その行き先にある物体に当たった後は、色、強度、方向などの特性を変更することさえできる。人間の目は、可視光の方向、強度、色を検出できる感覚器官で、目には水晶体があり、そこを通過する光を網膜に集束する。網膜には、約1億2000万個の棒と、600万〜700万個の錐体で構成される、特殊な光感受性細胞が含まれ、これらの棒は俺たちに黒と白を知覚させ、錐体は俺たちに色を見せる。これらの色を見るために、俺たちの目は周囲からの光線を集め、網膜に向ける。俺達の目はすべての距離で同時に焦点が合っている物体を見ることができないため、近くの何かを見ると、遠くの物体はぼやけて見え、逆もまた同様だ。「調節反射」と呼ばれれ、ほとんどの場合、調節は反射のように機能するが、意識的に制御することもできる。遠近調節の1つの側面は、異なる距離で焦点を合わせるために対応する筋肉が目の水晶体に必要な調整を行う場合……。」

 

「ちょっ!!!っと……待ってくれるかしら……。」ポッツォ

 

「………………まともに説明する気無いでしょ……イーネ……。」マリ

 

「聞いて理解できないなら喋りかけてくんな。自惚れ触手系変態女。」イーネ

 

(イーネの初対面キラーがクリーンヒットしてる……。)マリ

 

 口を開いたかと思えば辛辣な言葉しか発さないイーネに、ポッツォは口をあんぐりと開けて呆然としていた。


 見かねたユウトが声をかける。

 

「……まぁ。幻種って変な人しか居ませんし。気にしないで下さいね。ポッツォさん。」

 

「おい。しれっとこっちディスってんじゃねーぞユウト。」イーネ

 

「ぴぴ。」

 

 すると、暫く固まっていたポッツォは軽く微笑んで話出した。むしろ、ちょっとエッチな表情をして。

 

「ふふ。なるほどね。そーゆー感じなんだぁ。ふふ。嫌いじゃないわよ?むしろ……。ゾクゾクしちゃうかも?」

 

「…………!」イーネ

 

 イーネがさらにマリにめり込んで小声で喋る。

 

「……こっちはゾワゾワするわ……。気色わりぃ……。だがら無駄に自信家のあーゆー女って嫌なんだよ!……。」

 

「…………ああ。そう。そーゆー……。」

 

 一向はその後もポッツォのペースで話しながら、お狐様信仰があるという"チーミスタント"に向かった。

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