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7-④ あれでも幻種の

 <理事長室前>

 

 理事長室の扉は無駄に重厚感と高級感のある作りをしていた。


 そこに向かってイーネ、ベリー、マリ、ニコが向かっていると、真向いからはユウトとタカトがやってきて、扉の前で落ち合う形になった。

 

『アエツさんハ?』

 

 ニコが聞いてユウトが答える。

 

「帰ったよ。泊まりがけで仕事してたんだ。家族大好きなあの人を家に帰してあげたかったし。」

 

 ユウトが喋り切るのを待たずにイーネは理事長室の扉を開けていた。そのイーネが言う。

 

「……あ?……お前……何でここにいるんだよ……。」

 

 先に理事長室に入ったイーネがイラついている声が聞こえる。


 イーネに続いて他のメンバーも部屋へと入った。

 

 理事長室は床が大理石で出来ており、基本は白を基調としているが、まるでカーペットをひいているかのように、来客用のテーブルとソファの下だけ黒の大理石に切り返してある。


 その上に正方形の黒の大理石のテーブルがあり、それを囲むように4脚の高級感のあるソファが置かれている。


 その奥に、黒を基調とした理事長専用のデスクと椅子。壁は高そうな絵などが飾られている。


 その理事長用の椅子に、テンジョウ ユキハルが座り、その横にタイヨウが立っていた。

 

「おぉ!邪魔すんにゃったら帰ってやー。」

 

「ぴっぴぃ!」

 

「え。『はいよー。』って僕が訳したら僕が肩代わりすることになりません?」

 

 そんなやり取りは無視してイーネはユキハルに言う。

 

「おい。無能クソチビビッチ。何でここにいる。」

 

 そこに茶々を入れるのはタイヨウだ。

 

「お!言ってくれ!イーネ!もぉおっと言ったてくれ!!こいつに!!」

 

「言ったことを反故にはせん。貴様の戯言に付き合ってやるまでだ。ただ。考える事だ。貴様の立場もな。」ユキハル

 

「家族に聞いてほしくない事があり過ぎて、こんなとこまでノコノコ来たのかよ。随分と肩身の狭い当主様だな。」イーネ

 

「馬鹿ほどよく吠える。」ユキハル

 

「…………え?俺、無視されてる?理事長、無視されてる?」タイヨウ

 

 そこに口を挟んだのはベリーだった。

 

「とりあえず座らせてよ。どーせ長くなるんでしょ。」

 

 ベリーがそう言った事で、各々が来客用のソファに腰掛る。

 

 全員が座ってから、最初に口を開いたのはイーネだった。

 

「じゃあ、戯言って事で。…………お前らの"神"とやらについて教えて貰えるんですかねぇ?」

 

 たった一言で部屋に張り詰めた空気が流れる。


 イーネが畳み掛ける様に言った。

 

「マリから聞いてんだよ。答えろよ。」

 

 少しの間があって、答えたのはユキハルだった。

 

「ログスが死んだだろう。それが答えだ。」

 

「答えになってねぇよ。その神様とやらの話しをしたら呪いか何かで殺されるってか?随分と殺生な神様だな。」

 

「………………。」

 

 ユキハルもタイヨウも何も答えない。

 

(ここがこいつらの最大のウィークポイントで、全ての元凶……。……………………胸糞わりぃ……。真正面から聞いても時間を無駄にするだけだな……。)

 

 また、イーネが口を開く。

 

「お前ら2人も、まだその神様信仰続けてるんですかねぇ?」

 

「………………。」

 

「だんまりかよ。タイヨウ。お前もだ。」

 

 するとタイヨウが答える。

 

「ユキハルが言ったやろ。ログスが死んだ。それが答えや。」

 

「舐めてんのか。………………まぁ、お前らが死を恐れて喋らないのだけは分かったよ……。」

 

 ユキハルとタイヨウは何も答えなかったが、2人のわずかな態度の変化から、イーネは何かを察したようだった。

 

「…………あ?…………違うな……。命をかけても……守りたいもの…………か?…………。」

 

「…………。」

 

 また暫くの沈黙が流れる。

 

「聞く。………………お前らは…………敵か?味方か?……。」

 

「イーネ……。それ、どいう意味……。」

 

 マリが口を挟んだが、それにはタイヨウが答えた。

 

「俺らの敵はマシロや。全会一致でそうやろう。ジャンクを生み出して、人々傷つけ、今なお暴れとる。さらに今回は、直接的に核師を狙って全面戦争と来やがったんや。俺らでマシロを倒す。どー考えても仲間やろが。」

 

(喋っても無駄だな……。)

 

 するとイーネは話しの切り口を変えたようだった。

 

「お前らの過去のお仲間ってのは。まだいるんだろ。ラランって誰だ。お前らの仲間は、あと何人いる。」

 

「ラランんん?!!何でそいつの名前がお前から出んねん!!」

 

 驚いて返したタイヨウに、ユキハルが説明を入れる。

 

「ナユタという奴が、俺にラランの名前を出して脅しをかけよったぞ。」

 

「ナユタが?!!あぁ?!あいつが、そこまでやるってことは!お前、そーとーなとこやったな?!!」

 

「僕達、ちゃんと死にかけてますよ。」ユウト

 

「いや、報告は聞いたけどな?!だっっから、お前のこと嫌いやねん!!何してくれとんねん!!」タイヨウ

 

「俺も貴様が嫌いだ。丁度いい。」ユキハル

 

「丁度いいちゃうわ!!早よ席どかんかい!!」タイヨウ

 

色色灯(しきしょくとう)をつけるんだろ?早くしろ。」ユキハル

 

「だぁぁあああ!!ムカつくぅ!!!」タイヨウ

 

 話しはどんどん逸れていったが、話しを戻して喋り出したのはユキハルだった。

 

「俺の知る限りになるが。こっち側の人間をハゲ側だとして、ハゲ側にいるのは、ハゲ、俺、ログス。ログスは死去したが、ログスの作った軍が、こちらについている。」

 

「ハゲハゲうるさいねん!ハゲぇ!」タイヨウ

 

「逆に、マシロ側についている人間もいる。そのうちの1人がラランだ。その他に、タト。ライナックス。ボルドー。がマシロ側についていると思われる奴らだ。それ以外に、ハゲ側でも、マシロ側でも無い奴がいるだろうが、そこについては把握していない。」ユキハル

 

「マシロの方が人気じゃねぇか。ハゲ。」イーネ

 

「ハゲで何が悪いんですかぁ?!立派なスキンヘッドですぅ!ってかな、マシロ側ゆーても、あいつらは協力しとるとかそーゆーもんちゃうねん!利害関係だけで、信頼とか全く無しや!」タイヨウ

 

「こっち側もそうだろう。ハゲ。」ユキハル

 

「あぁ!そーだな!クソチビぼけぇ!!」タイヨウ

 

 すると、何となく見かねたマリが口を開き、手に持っていた世界地図を広げていた。

 

「あと……。あの。これ……。世界地図と……。何でしたっけ色色灯(しきしょくとう)でしたっけ?……。マシロが渡してきたっていう……。」

 

 そこにイーネが言葉を重ねた。

 

「ああ。見せろよ。その色色灯(しきしょくとう)ってやつ。」

 

「そのハゲが持ってるぞ。こやつ。一回も灯した事がないけどな。」

 

 ユキハルは馬鹿にしたような薄笑いをしていた。それを見たユウトは内心(あんな表情されるんだ……無表情しか見た事なかった……。)なんて思う。

 

 タイヨウは何かを握っていた右手を広げる。


 そこにはマリがログスから譲り受けた六角形の平たい石があった。

 

「マシロのやろぉぉぉ。こんなもん送りつけて来やがって……俺が…………俺がこれ、めっちゃ不得意なんしってぇぇええええ……あぁ!腹立つ!!!」

 

 ゴンッ

 

 タイヨウは怒りに任せて石をデスクに向かって叩きつけ、鈍い音と共に跳ね返った石が床の上に転がる。

 

「ちょ、ちょっと!マシロを追う大事な物じゃないんですか?!」

 

 マリが慌てていうと、タイヨウが答える。

 

「あ?んなもんちゃうわ。これ、ほんま、どの大陸にもあるある、ありきたりな石で、まぁ、大陸を構築する岩の一種や。色色岩(しきしょくがん)って。ほら。小学校の理科くらいでやるやろ?」

 

「え?あぁ。そうですね……。聞いたことは……。」マリ

 

「それをちょっと特殊な加工したんが、この色色灯(しきしょくとう)で、まぁ、これが壊れても作ろう思ったら作れるもんやわ。」タイヨウ

 

「そうなんですか……。」マリ

 

 床に転がった色色灯をユウトが拾い上げて聞く。

 

「で。これ、何なんですか?」

 

 それにはユキハルが答えた。

 

「力を込めたら光る仕掛けだ。そこの鷹なら出来るだろう。やってみろ。」

 

 鷹呼ばわりされたタカトは、どこかムッとしていそうながらも、ユウトの肩にとまっていたのを、ぴょんぴょんと跳ねながら手首の所まで来て、ユウトの手の平に乗っている色色灯に翼を掲げた。


 すると、色色灯が黄色に光りだす。

 

「あれ?ログスさんがやった時は白く光っていたのに。」

 

 そう呟いたマリに答えたのはタイヨウだった。

 

「何かわからんけど、人によって灯る色が違うねん。5〜6色くらいは見たことあんなぁ。」

 

「出来ない奴が説明するか。」ユキハル

 

「うるっさいねん!!おら!ユウト!やってみろ!俺は分かんねん!お前は出来ひん部類や!!」タイヨウ

 

「そもそも、力をこめるって何なんですか……。」ユウト

 

 そう言って、ユウトは石を持ってる手と反対の手を石にかざす。暫く待ったが、石が光る気配は一向にない。

 

「え……。タカトさん。どうやってやったんですか?」

 

「ぴぴい?ぴぴぴ。」

 

「力が正しくコントロール出来る奴は大概できる。」ユキハル

 

「うるっさいねん!!!ぶっとばすぞぉ?!クソチビ!!」タイヨウ

 

「………………イーネできる?」ユウト

 

「…………。」イーネ

 

 ユウトがイーネに声をかけると、ユウトの手の平の石が白く光りだした。イーネとユウトの距離は少しだけだが離れている。

 

「ほお。」ユキハル

 

「え?今光らせるのってイーネ?」ユウト

 

「何でこんなことが出来ないんだよ。」イーネ

 

 その後、マリ、ニコ、ベリーも試してみたが、マリとニコは灯す事ができず、ベリーの時は緑色に石が光った。

 

 最終的には、マリが右手に色色灯を持ち、左手に世界地図を持ち、両者を見比べる。

 

「で……。これで何なんでしょう。」

 

「色色灯で地図を照らしてみる?」ユウト

 

「そうよね……。そんくらいしか分かんないし……。イーネ。光らせてよ。」マリ

 

「何で俺が……。」イーネ

 

 イーネはそう言いつつも、マリが右手に持つ色色灯が白く光る。マリは地図の後ろに色色灯を当てて満遍なく地図を見ていった。

 

「……。あ。これ……。」

 

 マリが何かに気づいたらしく、タイヨウがマリの席の後ろに回ってきて一緒に地図を覗き込む。


 するとタイヨウが呟いた。

 

「おい……。これ…………。ミコのマークやんけ……。あいつ……生きとんか……。」

 

 地図にはある一点に、小さくてよくは見えないが、丸の中に三角模様が入ったようなマークが光っていた。

 

「誰だ。ミコってのは。」

 

 イーネの問いにはユキハルが答えた。

 

「ミコもかつての仲間だ。だが、私達と違って、ログスのように通常年齢で老いる。生きていれば7.80代のババアだな。」

 

 さらにはタイヨウが説明を付け加える。

 

「代償の巫女。………………自分の居場所はミコに聞けって言うんか。あいつ……。」

 

「代償のみこ?なんですか。それ。」マリ

 

「ミコの能力や。代償さえ支払えば、願いを叶える……。」タイヨウ

 

「願いを……叶える……。」マリ

 

「どんな代償を払うかはミコに聞かな分からん。…………支払う代償がデカすぎて、ミコの能力で願いを叶えた奴の末路は…………いいもんは見た事あらへんけどな。」タイヨウ

 

 暫くの間があって、皆んなが考えるなか、最初に言ったのはニコだった。

 

『でも、それしか手掛かりガないなら、行くしかナイんじゃナイの?』

 

「…………そーだな。」イーネ。

 

「そやつは何故機会で喋る。」ユキハル

 

「ちょぉ!話し逸れるから黙ってくれへん?!後で俺が説明したるから!」タイヨウ

 

 すると、今度はイーネがユキハルに向かって話しかける。

 

「こんなもん見るために、わざわざここまで来たのか?」

 

「戯け。別件だ。」

 

 そう言ったものの、ユキハルが話す出す気配が無い。話したのはタイヨウだった。

 

「"チーミスタント"って小さい村があんのやけどな。数年前から、そこにお狐様信仰が見られてる。そのクソチビの情報やけどな。」

 

「"お狐様信仰"……。」マリ

 

「そんで、ここ数日で、そこに本物のお狐様が現れた。なんて噂が回っとる。」タイヨウ

 

 その言葉に反応していたのはユウトだった。


 イーネが聞く。

 

「そんな小さな村の情報をわざわざ監視してたなんて、手がこんでますね。当主様。……ある程度の目星がついてんな?」

 

 ユキハルが答える。

 

「………………テンジョウ家で管理を行なっていた『九尾』の可能性が高い。」

 

 それにタイヨウがつけ加える。

 

「本物の『九尾』やとしたらほっとく事は出来んし、そこらへんの核師を当てる訳にもいかんねん。『麒麟』並みのバケモノや。やのに、今は各地でジャンクが発生して人手も足らん。悪いけど、この案件を回すなら、お前らしかおらんねん。」

 

 すると、ユキハルはユウトの目を真っ直ぐに見る。ユウトも視線を逸さなかった。

 

「お前の責務だ。真っ当しろ。」

 

「……………………はい……。」

 

 部屋に緊張感のある空気が流れる。


 少し時間がたってから、再びユキハルが口を開いた。

 

「………………それと……………………。次に家に顔を出すことがあるのなら、ナズナに会ってやれ。」

 

「……………………………………パパ……。」

 

「「「は?」」」

 

 ユウトの言葉に、綺麗にイーネ、ベリー、マリの言葉が重なった。ニコは機会音声が間に合わなかったが、顔は1番驚いていた。

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