7-③ あれでも幻種の
<タイヨウバイオカンパニー本部のあるガルダから数キロ離れたベッドタウン"ルナテシア">
俺はケイト・ジョージアス。
誰だって?ほら。アエツさんの部下の。大学の事務に配属になった核師志望の男!
俺、実家暮らしでルナテシアからガルダに通ってる。
家から駅もちょっと距離あるし、自転車で駅までいって、そこから電車乗り継いで1時間半くらいはかかる。だから朝も早い。
『ここ数日、各国でジャンクの姿が多数目撃されています。本日は専門家の方にスタジオに来て頂きました。デグス・ラスター教授です。ラスターさん、本日はどうぞ宜しくお願いします。『お願いします。』』
なんて、最近のニュースはジャンクの話題で持ちきりだ。
俺も核師志望だけど、合う血清がなくて、事務の仕事をしながら座学とフィジカル強化してるって感じ。
でも、一生合う血清が見つからない人もいるらしい。核師って以外と狭き門。
今日も駅まで自転車で向かう。朝日と風が気持ちいい。
ルナテシアはベッドタウンとして結構人気で、駅の近くにもなると、多少なりとも高い建物やマンションが見える。
もう少しで駅だ。最後の大きな交差点で信号待ちをしていた。
ウゥーファンファンファンファン
「下がって!下がって!!」
突然何台ものパトカーがきて道を閉鎖したかと思うと、警官がこの場から離れろと言う。
「みなさん、落ち着いて聞いてください。現在、この場所に大型のジャンクが接近しています!駅には向かわないで、この場所から出来るだけ離れて下さい!!みなさん、落ち着いて聞いてください!繰り返します!」
なんて、スピーカーで大音量で流し始めた。
周りはパニック包まれる。
逃げる者もいれば、興味本位で動画をまわすもの。誰かに電話しだす者、様々だ。
俺は、興味もあったし、急な事で頭が混乱して動けずにいた。
閉鎖されて、車がどけられた車道と交差点は、ただただ広い空間になった。
そこへ、黒い装甲車のような車が一台来て止まった。
車の後ろの扉が開いて、3人の人間が降りてくる。
「…………核師だ……。」
俺は核師志望として座学もやったから分かった。
その3人は黒い特殊な繊維で編まれた核師専用の服装を身に纏っていた。1番目を引いたのは白髪に白い眼をした少年。次が、緑の髪に緑の眼をした女の子。もう1人は、黒髪ボブで、大人っぽいお姉さんだった。
「空港に2台で迎えに来て、一台はこの車にマリが乗ってた時点で嫌な予感したんだよ。」イーネ
「仕方ないじゃない。会社中の核師が出払ってて、帰ってくるあなた達しか頼れないって言ってたよ。まさか、イーネしか戦える状態じゃないって知らなかったけど。」マリ
「いいじゃない。ユキハルに逃げられてイラついてたから、ストレス発散に。」ベリー
「思い出させんなよ。あいつ、帰ったら家にいねぇとか……。ジャンク狩ったら話しするって言ってやがったのにトンズラこきやがって……。」イーネ
「そんな話しだったかしら。」ベリー
「あとマリ。次からお前も来いよ。じゃねぇとナユタの奴、意地でも飛行機乗りやがらねぇ……。」イーネ
「行きは飛行機で行ったんでしょ?帰りはフェリーでもいいんじゃないの?ってか、私いたら変わることなの?それ。」マリ
「さっさと終わらしてお風呂入ろうよぉ。ジャンク亜種だと、サクッと狩れるんでしょ?」ベリー
「何だっけ。本物?のジャンクは成体構造がややこしいけど、ジャンク亜種だと意外と単純って話しだったよね?」マリ
「なんでお前らが語ってんだよ……。俺が倒すんだから黙ってろ……。」イーネ
その3人は何かを話しながら、何かを待っているようだった。
バサッ
急に夜になったのかと思った。
周り皆んなが上を見上げる。そこには、巨大な。ほんとに巨大で、見た瞬間に恐ろしいと感じて、人間の本能が逃げろと叫ぶくらいの。
巨大なコウモリがいた。
[ギィィイイイイイイ]
凄い鳴き声だった。耳が痛くなるくらいだった。
警察が来た時とは全然違うくらいの、もの凄いパニックが巻き起こって、周りのみんなが一斉に逃げ出す。
けれど、俺はこの場に残ろうと思った。
見たかったんだ。自分が目指す核師がどんなものなのか。
「おい……。あのジャンクをこの通路の幅で収めろってか?」イーネ
「そーね。」マリ
「せめてニコもこっち来るべきだろうが……。」イーネ
「なんか、『核ぎれだから』とかいってたけど。」マリ
「んな訳ねぇだろが……。あいつ……。昨日の昼間に一曲歌っただけだぞ……。」イーネ
[ギィィイイイイイイ]
なんか、ジャンクの口元が光ってて、あれって、なんか、怪獣映画で怪獣が口からビーム打ったりするやつなんじゃないの?!まじやばいって!逃げないとまずい?!でも……!
「お前がノロくて救われたわ……。」イーネ
白髪の少年はジャンクに向かって指をさしてた。
なんか、指でバーンってやるポーズみたいなの。って。え?武器とかは?拳銃とか、いや、なんか、ロケットランチャーとかそんなのは?!後ろの2人の女の子も黙って見てるだけ?!
「………………観世水。」イーネ
白髪の少年が何かを呟いた後だった。ほんの少しだけ、音の無い時間があったように感じた。その後に。
ドサッドサッドサッドサッ
「え?」って訳が分からなくて周り見たり、空を見たりした。でも、結果的には、ってか、結果しか俺には分からなくて、道路に山になるように、バラバラになったジャンクの死骸?体の一部?破片みたいなのが積み重なっていた。勿論、巨大なコウモリは居なくなっていた。
「あー……。もぉ、マジで……頭使い過ぎて脳バグるわ……。」イーネ
「お疲れ様。」ベリー
「おつかれ。って、今から会社行くけど。」マリ
「とりあえず一旦解散にしてくれ。夕方以降な。集合は。」イーネ
「そう言っとくわ。」マリ
なんか喋って3人は車に乗り込んで、車はどっかに行ってしまった。野次馬が道路の状況を写真にとったり、警察が慌ただしく作業したりしていた。
でも、俺が思ったことは。
「…………………………かっこよすぎんだろ……。」
あと、こんなんになれるのかよって思った。自分にはぜってー無理だろって。
でも、憧れも、より一層強くなった。
「え。まって。あの白髪の子、会社にいるよな?え?…………会える?………………アエツさんに聞いてみよっかな……。」




