6-④ 本気と書いてウルトラ
<アエツ、タカト、ユウト>
ズドドドドド
ドォォォンッ
バンッバンッバンッ
戦闘音がこだまする。
アエツとタカトの力は互角だった。
そこにユウトが加わることで、タカト側が優勢にも見えた。だが、単純な武装攻撃しか持たないユウトは、アエツの一撃が死に直結する。
ユウトが狙われることで、タカトはユウトを守る動きもしなければならず、戦況は完全に拮抗していた。
それぞれがジリジリと消耗していく。
(やばい……弾がつきる…………!僕に攻撃の手札が無くなれば完全にお荷物にしかならない……!…………)ユウト
(くぅ……!スキがねぇなぁ!流石、四六時中一緒にいる2人!息が合ってんなぁ!!…………)アエツ
(ぴぴぴぃ!ぴぴぃ!……)
ズザザザザッ
アエツとタカトが直線的に向き合う形となった。その間、約50メートル。
「ぴぃいいいいい!!」
「二対の天使の槍!!」
アエツとタカトの遠距離攻撃が真ん中の位置でぶつかる。
ドォォォンッ
(ここで一撃いれる!!…………)
(ぴぴ!ぴぴぴ!…………)
くしくも同じ思考に至った2人(正確には1人と1匹)は、爆発の中、お互いの位置を目指して飛びかかった。
2人が真正面からぶつかる。
その時だった。
「んんんーーー!!」
「「…………………………!!」」
本当にギリギリ。
寸止めとは正にこの事だった。
アエツとタカトがピタリと止まる。
その2人の間には、バインドワイヤーで拘束され、口元を紐で縛られた
モミジの姿があった。
モミジの表情は恐怖で染まっている。
目を見開き、涙と涎を出し、非常に情けないものだった。
「わぁーお。まじか。よかったなぁ。そいつらの反射神経が異常で。確実に当たるタイミングで転移させてやったのに。」
竹林の中から、ゆっくりとした足取りでイーネがアエツ達に近づいて来る。
「あっ…………………………………………ぶっな!!!ええ?!うそぉ?!鬼のようなことするなぁ!」アエツ
そこへユウトも駆け寄ってくる。
「何があったんですか…………ってモミジさん?!うわ!どうしたんですか、タカトさん!ひっくり返っちゃって!!」
「ぴ、ぴぴぃ……!」
「な…なんてこと……!血も涙もない人ですね……!」ユウト
「え?俺が悪役になんの?」イーネ
イーネはそう言いながら両手に持っていた物をアエツ達に見えるように持ち上げた。
片手にはバレーボールぐらいのサイズの鉄の四角い箱。正方形の穴が無数にランダムに空いている。反対の手には4体の布人形。
アエツは、その箱の方に見覚えがあった。
「お前の家族。助けてやったってのに。」
イーネの言葉でアエツは膝から崩れ落ちた。
地面に四つん這いになり項垂れる。
「……………………よかった…………。よがっだぁぁぁああああ!!!!」
本当のアエツの男泣きを見た気がした。
誰もそれが面倒臭いだなんて思わなかった。
――――――――――――
モミジを地面に座らせ、アエツ、タカト、ユウト、イーネはその周りに立っていた。
ユウトが可哀想だからと、モミジの口紐を取り、丁寧に顔を拭いてやったので、幾分かマシな表情に見える。
「あー。俺、もぉ、"核"を消耗しすぎたぜぇ……。もぉ戦えねぇ。」
そう言ったのはアエツだった。
「僕も弾切れです。」
「ぴぴぃ……。ぴぴぴぃ。」
「何だよ。"核を消耗した"って。」
イーネがそう聞くと、ユウトが答える。
「これ、結構人によるんだけど、僕達核師は、何かを消耗して戦ってるんだよ。体力みたいなもので、体力でないもの…………。科学班も解明できていなくて、個人差が大きいのと、不確定要素が多いので、名前も何も無いんだ。だから、核師達が勝手に言うようになっていって、"核を消費する"とか、"核を消耗しすぎた"って言ったりするんだよ。」
「完全に無くなったらどうなるんだ?」イーネ
「ぶっ倒れるな!気絶とかとはまた違う感じだよなぁ?!」アエツ
「ぴぴぃ!」タカト
「これで実質、戦えるのはイーネだけだね。」ユウト
「まんまと敵にしてやられてんじゃねーか。」イーネ
「本当に。笑えないね。……っで。だ。」
最後はユウトが締めた。
全員でモミジの方を見る。
「モミジさん。悪いですけど、色々説明してくれますかね。僕達に。」
「あなた達に教える事なんてありません。」
モミジのその言葉に、イーネがイダズラっぽいを顔をして言う。
「拷問でもするか?指先からスライスにするとか。」
「………………平気でそうゆうこと言えるんだね。君。それに、拷問しても喋らないと思うけど。」ユウト
「ああ?あの光属性馬鹿の間に放り込んだとき、泣きべそかいてやがったのに?」イーネ
「…………死を前にしたら、誰でも最低限あんな感じになるでしょ。」ユウト
「おお!イーネ!いいなぁ!光属性馬鹿!若い子はツッコミのレパートリーが柔軟だな!!」アエツ
「んじゃあどーすんだよ。取り敢えず、死なねぇくらいはやったらいいんじゃねーの?死なないんだし。」イーネ
「ちょっと味見したら?みたいな感覚で言わないでくれる?」ユウト
「……………………。」モミジ
すると、アエツ達の背後から足音が聞こえる。
足音の方を振り向くと、そこにはシキとサクヤが並んで立っていた。
サクヤが言う。
「僕達が言うよ……。だから、おばちゃんに乱暴しないで。」
「あなた達!!」モミジ
なんとかポーカーフェイスを保っていたモミジの表情が崩れる。イーネが子供達に声をかけた。
「お前ら逃げなかったのかよ。」
「ってか、あの子達どーしてたんですか?」ユウト
「あ?逃したんだよ。逃したのにわざわざ戻って来やがったっていう状況。」イーネ
すると今度はシキが言う。
「お前ら、ユキハル様のこと探してるんだろ?」
「やめなさい!!あなた達が話す必要はありません!!」モミジ
モミジが血相を変えて声を上げている。
イーネがユウトに聞いた。
「アイツらが、俺らに情報漏らしたらどーなんの?」
「…………まぁ、ある程度の罰はあるでしょうね……。」
「シキ君!サクヤ君!いい!大丈夫だ!おじちゃん達、困ってないから!!」アエツ
「困ってるだろーが。」イーネ
「……………………。」
すると、モミジの表情が変わり、ゆっくりとした口調で口を開いた。
「………………。いいです……。分かりました……。アナタ達の質問には、私がお答えします……。」
――――――――――
各々、立ったり座ったり、モミジの話しを聞く姿勢になる。シキとサクヤも、少し離れた所で大人しく並んで座っていた。
初めに話したのはイーネだった。
「まず、聞きたい。あのジャンクはなんだ。」
「………………そこからですか。」
少しの間が空いて、モミジは答える。
「……残念ながら。私達も知りませんの。テンジョウ家の中でも、ただのジャンクとして扱っていますわ。アナタが何を言っているか。分かりませんね。」
「じゃあ質問を変える。ユキハルって奴は随分偉いんだな。そんな奴が、俺らの為に、広大な土地と、直々の護符も大量に使って。ご丁寧な事で。……………………この場所は、俺らを閉じ込める為に用意したものか?…………それとも……あのジャンクを出さない為のものか?」
イーネの言葉に、ユウトだけがハッとした表情をしていた。モミジは少し思案した後に答える。
「…………。頭のよく回る人で。…………アナタの言う、後者の為の物ですわ。」
「それを、俺らに利用しただけに過ぎないんだな。」
アエツとタカトは話しについて行けず、首を傾げている。そこにユウトが小さい声で耳打ちしてサポートしていた。
「この場所は、最初の蜘蛛型のジャンクを閉じ込めておく為の場所で、僕らはそこの施設を利用して閉じ込められてたんです。」
「へぇ!」
「ぴぴぃ。」
イーネがモミジへの質問を続ける。
「ジャンクを殺さず、生かして捉えておく必要がどこにある。なぜこんな事をしてる。」
「ユキハル様の命で。…………ただ。」
ほんの少しの沈黙があった。
「…………これは、私が知ることは、正直に申し上げている証明としてお話しますわ。」
そう言って、モミジは続けて話す。
「数年前から、ジャンクの討伐に向い、現地で死した同胞の遺体が帰ってこない事が相次ぎました。」
「ほぉ!」アエツ
「………………死体が。」ユウト
「それから、ごく最近になって、同種のジャンクが確認されるようになった時、ユキハル様が仰ったのです。同種のジャンクは殺さず捕えよ。と。あの蜘蛛型のジャンクが捉えられたのもつい最近ですわ。アナタ達を殺すのに、ここのジャンクを使用するように言われたのもユキハル様です。」
「………………。」イーネ
(俺の勝手な想像になるが、おそらく…………あのジャンク亜種の材料は人間…………。こいつの情報からすると、死体ってことになるか………………。ユキハルは、同胞の死体が使われたジャンクを殺さず生かしておいた……。そして……俺らに始末させたのか…………。話しに聞いていたより、随分家族思いなこって……。)
イーネは続けてモミジに質問する。
「第二の矢として子供使ったのは何故だ。」
「…………あなた達、フェリーに乗ってからの事、本当に何も知らないのね。」
「あ?」イーネ
「ここ数十時間で、大変な事になっているわよ。世界が。」モミジ
「どういう意味ですか。モミジさん。」ユウト
「世界十二大陸で同時多発的なジャンクの出現がおこっているの。」モミジ
「!!!!」
アエツ、タカト、ユウト、イーネは驚きを隠せなかった。ユウトが言う。
「それ、本当なんですか!」
「本当よ。あなた達も知ってるだろうと思うけど、ジャンクの討伐を担っているのは、この世界にたった3箇所。タイヨウバイオカンパニーグループ。と、そこと同盟にあたる、テンジョウ家、バランシア軍。ここの3箇所で世界のジャンクを狩っていた訳だけど。まぁ、ジャンクなんて存在、レア中のレアだったから。今いる核師で充分事足りていた……。けれど……。まさかのジャンクの大量出現。ウチの家の者も、殆どが駆り出されているの。ジャンクは通常兵器じゃ太刀打ちできない事が殆どだからね。世界中が今、核師に頼っているのよ。」
「…………そんな事が…………!」ユウト
「今はまだ、ジャンクに対して核師を総動員する事で何とかはなってるそうよ。………………これで収束がついたら、だけど。もし、ジャンクがまだ数を増やすようで、核師の死者が増えれば…………。どうなるんでしょうね……。」
「………………考えたくも無い話しですね。」ユウト
それに対しても冷静にイーネが返す。
「そんな家が大変な時に、ここまで俺らに時間使ったのは何でだ。」
「それも知らないわ。アナタ達を殺せと……。そういう命令だもの。でも、アナタ達、マシロの件で来たのよね?」
「ああ。お前らテンジョウ家の人間はマシロの事を知ってるのか?」イーネ
「当然でしょ?伝え聞いているわ。どこかのお気楽テキトー理事長とは違うの。…………そのマシロなら、ユキハル様に会いに来たって噂が立っているわ。本当かどうかは知らないけど。」
モミジは続けて話す。
「それからよ。アナタ達を殺す命が来たのは。時系列が、私じゃちょっとわからないけど……。テンジョウ家はマシロの件でタイヨウグループと協力する盟約があるわ。タイヨウグループ、テンジョウ家、バランシア軍の同盟は、テンジョウ家の言葉を使って、明確に書面に残された物とされているの。口約束なんかじゃなく、その契りを破る事には大きなリスクを伴う……。なのに、アナタ達を殺すなんて…………。私もおかしいと思っているの。でも、ユキハル様はそう仰った。まるで、アナタ達と会う事がないように……。ね……。」
「あぁ。なるほど。そー考える訳ね。」イーネ
「んん?!どーゆー意味だぁ?!さっぱり分からん!」アエツ
イーネだけがモミジの説明に1人納得しているようで、他のメンバーは置いてけぼりの表情だ。アエツにも分かるようイーネが説明をする。
「その女の勝手な妄想を訳すとだな。テンジョウ ユキハルはマシロとコンタクトをとった後に、盟約を遂行出来ないよう、俺らを殺そうとした。つまり、マシロに何かしらの指示や脅迫、条件なんかを突きつけられた。だが、俺らに会って話しを聞いちまったら、同盟の契りを破る事になって、手痛いしっぺ返しがくる。だから、会う前に意地でも殺す必要があった。子供を使ってもな。」
「ほほぉ!!なるほどな!!」アエツ
またモミジが話す。
「シキとサクヤをこの作戦にいれたのは………………。これも私の勝手な妄想だけれど。そこは…………信じたんじゃないかしら。」モミジ
モミジの言葉に「信じた?」と疑問で返したのはユウトだった。モミジが答える。
「………………タイヨウ理事長を……。その仲間達を……。私は、そういう所のある人だと思っているわ。ユウト、あなたは分からないでしょうね。」
「…………………………。」ユウト
「それと、私達は暗殺の依頼も仕事としてこなしているの。その子達も、いつかはそういった仕事をやることになる。今回のはイイ経験ね。あら。殺人なんて道徳に反する、とかいった説教はご無用よ。私自身、この世には死んでしかるべき人間がいると思っているし、子供達にもそう教えているわ。人の家の教育方針に口を挟まないで頂戴ね。」モミジ
「んん!!親の立場として、その話しは複雑だがなぁ!!よそはよそ、うちはうちかぁ…………!」アエツ
「その通りよ。」モミジ
その話しはここで区切りがつき、再びイーネがモミジに聞く。
「じゃあ、本題の本題だな。テンジョウ家。テンジョウ ユキハルはどこにいる。どーせ、そう遠くないんだろ。こんな整備された竹林が、どこでも、どこまでもあるなんて思えねぇよ。」
「……………………そうね。ユキハル様は……。」モミジ
「ちょちょちょ、ちょおっとまったぁぁああああ!!!」




