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6-② 本気と書いてウルトラ

「ぴぴぴ…………。」

 

 ユウトの質問にアエツが答える。

 

「…………………………。タカト…………。ユウト…………。俺はお前達の事が好きだ!大切な仲間だ!」

 

「………………。」

 

「でもなぁ…………………………わりぃ…………。俺にはさ……本当にわりぃけど…………。仲間より大切なもんがあるんだよ………………。」

 

 ユウトとタカトはアエツの言葉を黙って聞く。

 

「………………。テンジョウ家に、俺の家族が捕まっちまった……。」

 

「…………!!!」

 

 アエツの言葉に、ユウトとタカトは驚きを隠せない。アエツは続ける。

 

「………………家族を助けるには……お前達を殺さななきゃなんねぇ…………。」

 

「アエツさん!まって下さい!どういう状況でそのことを知ったんですか?!さっきも言いましたが、モミジさんの能力は幻覚です!必ずしも、家族が捕まってるとは……!……。」

 

「知ってる!俺もバカだけど、バカじゃねぇよ……。でもさ……。本当に捕まってるか、捕まってないか……。今すぐここで、確かめる術はねぇ……。それに……。その可能性が1%でもあるだけで…………俺は…………おらぁダメなんだよ………………。そんなの…………。家族を守れる動きしか選べねぇよ…………。」

 

「………………アエツさん……。」

 

「タカト、ユウト……。数少ない、俺が核師1年目の時からの仲間達だ……。俺もお前達のこと、よーく知ってるし、お前達も俺のこと、よーく知ってんだろ?…………俺の強さも……お前らの強さも……。」

 

「…………。」

 

「だからよ…………。だからこそなんだ。俺が我儘言えるのは……。」

 

「………………何をするつもりですか……。」

 

「……………………俺はお前達に本気で挑む。だから、本気で殺ってくれ……。」

 

 それに答えたのはタカトだった。

 

「ぴぴぴぴ。ぴぃー。」

 

「タカトさん……本気なんですか?…………。」

 

「ぴぴぴ。ぴぃー。ぴぃー。」

 

「……………………だから……。昔から。アナタ達2人には振り回されてばかりなんだ……。」

 

「何言ってるかはわかんねぇけど!伝えたいことはよーく分かるぜぇ!タカトぉ!」

 

「ぴぃぃいいい!いいいい!!!」

 

 タカトの甲高い鳴き声が鳴り響いた。


 アエツがジレを操作しやすいよう、両手を前に構える。


 ユウトは右腕を前に差し出し、その手にタカトが止まる。


 タカトは大きく翼を広げ、体全体が青白い光を放っていた。

 

「だいたいの手の内われてんだぁ!昔、技名も一緒につけたもんな!派手にいこうぜ!」

 

「…………なんでしたっけ……僕達、本気(ほんき)と書いて……。」

 

「ウルトラだろ?」

 

「ぴぴぃ!」

 

 戦闘開始。

 

大天使の裁き(ギルティ)。」アエツ

「ギーツアイアーク。」ユウト


 ――――――

 <遡る事数分前>

 

 アエツは意気揚々と子供達の示した方向へ飛んでいた。勿論、周囲の警戒を怠る事なく。


(やっぱり、お野菜レンジャーシルバーの練習もしないとなぁ……。)

 

 そんなことを思っていた矢先だった。


 アエツは飛ぶのをやめて地面に降り立つ。


 言いようのない胸騒ぎが体中を支配していた。とぼとぼと力なく、進んでいた方向へ歩く。

 

 竹林は少し開けたかと思うと、一部分が不自然に明るく照らされていた。


 この先は行き止まりのようで、高く続く岩肌が見える。


 その手前に、整備された竹林には、どう見ても不自然な鉄の塊が見えた。


 それは大きな大きな檻のようでもある。大きな鉄の四角い箱に、無数の正方形の穴がランダムに空いていて、中が何とか見えているような形だ。

 

「…………まて…………待ってくれ…………嘘だろ…………。」

 

 アエツは力なく呟き、ゆっくりとその鉄の檻に近づいていく。


 鉄の檻まで、あと5mくらいの距離に来た時、中から聞き覚えのある声がした。

 

「ぱぱぁ!!」

 

 それはアエツの娘の声だった。


 アエツの娘、息子、妻は檻の中央で身を寄せるようにしてかたまっていたが、娘がアエツに気づいたことで、3人はアエツのいる方向の檻の端へと駆け寄ってくる。

 

「ぱぱ!ぱぱだ!ぱぱが来てくれた!!」

 

「あなた!」

 

「ぱぱぁ!こわいよぉ!ここからだしてー!!」

 

「…………………………ま、まってろ、今、今助けるからな!…………。」

 

 アエツは絶望の表情をしながらも、頭のどこか冷静な部分が思考をやめない。

 

(…………違和感。違和感しかない!……幻覚の能力…………。本物か?!偽物か?!)

 

 すると、我慢の限界きたのであろう子供達がメソメソと泣き出す。

 

「ぱ……ぱぱ……こ、こわかったの……!ぱぱぁ!!」

 

「うわぁぁぁああああ!」

 

 泣き声を聞いて、アエツは冷静ではいられなかった。


 家族の元へと駆け寄ろうとした時、檻の前に1人の男が立ちはだかる。


 テンジョウ家の家紋の入った、袴を着た男だった。

 

「アエツ・ダイヤモンド。家族を返して欲しければ、お前の仲間を殺してこい。」

 

「…………そこどけ。」

 

 アエツは立ち止まり、その男にジレの銃口を向ける。その時。

 

「きぁぁぁあああああ!!!」

 

 妻の悲鳴がこだました。


 男は持っていた槍のようなものを檻の中に突き刺し、妻の肩からは血が流れていた。

 

「ま、ままぁぁあああ!」

 

「うわぁぁぁあああああ!」

 

「だ、大丈夫よ!大丈夫だからね。ほら。もう少し中にいなさい。」

 

「ぱぱぁ!たすけてよぉぉおおおお!!ぱぱぁあ!!」

 

「…………………………やめろ………………。」

 

 男は檻の中から槍を引き抜く。槍先には妻の血がべったりとついていた。

 

「家族を助けたければ、仲間を殺してこい。」

 

「………………。」

 

 アエツが黙っていると、男は再び槍を大きく振りかぶる。

 

「やめろぉぉぉおおおお!!」


 ――――――――

 <イーネ、シキ、サクヤ>

 

 タカトの鳴き声が聞こえたかと思えば、遠くの方で強い光が炸裂し、その後に爆発音。その後も遠くの方で戦闘音が連続して聞こえていた。

 

(合図がねぇと思ったら、今度は盛りだくさんだな……。どーするか……。)

 

 イーネは座ったまま、自分の身の振り方を思案していた。

 

「おい。変な髪。」

 

 ふいにシキがイーネに話しかけた。

 

「………………。」

 

「おい!しらがジジイ!」

 

「…………なんなんだよ。」

 

「………………いいのかよ。助けに行かなくて。」

 

「お前が気にする事じゃねぇだろ。黙ってろ。」

 

「………………。」

 

 暫くたった後、イーネはちらりと子供達の方に目をやって声をかけた。

 

「怖いだろ。」

 

 どうやら、シキの方が少し気が強く、前に出るタイプで、サクヤはシキに比べると慎重なタイプの様だった。イーネの声かけにシキが答える。

 

「こ、怖くねぇよ!」

 

「……………………俺にも、お前らくらいの年の妹がいる。敵に特攻して、敵に捕まって拘束されてんだ。怖くない訳ねぇよ。俺の妹だったら確実に号泣してんな。…………お前らは、よく頑張ってるよ。」

 

「……………………。」

 

「家族のことは好きか?」

 

 シキとサクヤがお互いの顔を見合わせる。答えたのはサクヤだった。

 

「…………うん。」

 

「そーか。でも、俺らのこと倒せなくて、捕まって、家に帰っても怒られるんじゃねぇのか?」

 

「………………怒られる……かも……。けど………………。」

 

 サクヤは答えながらも少し泣きそうな顔をしていた。

 

「…………安心しろ。ケガなく家族の所へ返してやる。約束するよ。」

 

「………………。」

 

 2人の表情は泣きそうなのを堪えているようにも見えた。


 沈黙の時間が流れる。


 暫くして口を開いたのはシキだった。

 

「しらが頭の変なにーちゃん。多分…………あいつらのこと、助けに行った方がいいぜ。」

 

 イーネは黙ってシキの話しを聞く。


 シキは少し迷った後、続けて話しをした。

 

「………………多分だけど……。あいつら、仲間同士で殺し合ってる。」

 

「へぇ……。何でそんな事がいえんだよ。」

 

 次に答えたのはサクヤだった。

 

「モミジおばちゃんの力は、そういうのに向いてるんだって……僕達、聞いたことがあるんだ……。」

 

「なるほどな。………………教えて良かったのか?」

 

 それに答えたのは口を尖らせたシキだった。

 

「だって………………まだ、おっちゃんに、お野菜レンジャーシルバー…………見せて貰ってねぇし…………。」

 

「はは。そーかよ。」

 

 そこでイーネはもう一度思考をまわすが、その情報を貰ったとしても状況が良くなる訳ではなかった。

 

(アイツらの所へ助けにいく……。無駄だろうな。敵がそんなことさせる訳ねぇ……。同士討ちさせるには種がいるだろ……。混乱?錯乱?それとも何かの弱みを握ったか?……。どれであろうが、そのモミジの能力を解かねぇと話しになんねぇ……。モミジの能力を解く……。どうやって……体臭クソババアって話しだったが……。ってことは、この場所からそう離れた所にはいねぇはず……。テンジョウ家の護符…………。これは何の役目だ?……出られなくする?俺らを?……それとも……。囲む…………。匂い………………。)

 

 考えても良い打開策が出るような感じではなかった。


 ダメ元でいいやという気持ちで、イーネは子供達に問いかける。

 

「……そのモミジおばちゃんの力。随分と範囲が広いよな。効果時間も長いのか?」

 

「………………香りを吸ってるかぎりはモミジおばちゃんの能力にやられてるんだ。でも、香りを嗅がなかったら……。どんぐらいだろう?……」

 

 シキは確認するようにサクヤに話しかけた。サクヤが答える。

 

「うーん。5分くらい?で、効果きれちゃうよね?って、シキ。これ言っていいの?」

 

「ばか!モミジおばちゃんには内緒だかんな!」

 

「………………よく勉強してんな。あんがとな。」

 

 するとイーネは立ち上がり、子供達に近づく。


 一瞬子供達は、必要な情報を話したから殺されるんではないかと身を固めた。

 

 シュルッ

 

 子供達を拘束していたバイドワイヤーが切れて地面にパラパラと落ちる。

 

「え?……。」

 

 子供達はイーネの表情をみる。


 イーネは拘束を解くと、また立ち上がって少し距離をとった。

 

「攻撃してくんなよ?お前達じゃ、俺に勝てねぇよ。」

 

 シキとサクヤは訳がわからないっといった表情で、まだその場から動かずにイーネを見ている。シキが言う。

 

「なんで外したの?」

 

「俺がここから移動するからだよ。お前ら連れていくほどの余裕ねぇの。あとは好きにしろ。」

 

 そう言われてもまだ子供達は動こうとしなかった。サクヤが言う。

 

「どーするの?」

 

「…………お前らに教える必要ねぇけど。まぁ、色々教えてくれたからな……。」

 

 そう言ってイーネはサクヤの問いに答える。

 

「俺。諸事情で、息を止めとくのは。まぁ多分、得意な方なんだよな。」

(『うふふふふふ♡』『あはははは♡』…………嫌なこと思い出しちまった……。)

 

 イーネは勝手に脳内で再生された声にゲンナリしながら説明を続ける。

 

「まぁ、10分はいける……。5分たったら、おっちゃん達のこと、助けに行ってみるよ。」

(まぁ、アエツらの所じゃなくて、狙うのは"テンジョウの護符"。意地でも1枚消滅させて護符の囲いから出れることに賭ける……。モミジを殺していいならモミジを狙ったけどな……。もし5分粘られたら振り出しに戻される……。)

 

 シキとサクヤが動く気配はなかった。


 どうやらイーネが行くところを見届けてから動くつもりのようだ。


 イーネは数回、大きく深呼吸をする。

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