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4-④ 濃いチーム

 <船上>


「ウィングホークよ……。とうとう来たな……。俺たちは、今日この日の為に修行を積んできたんだ……。」

 

「ぴぴ。」

 

「俺たち2人で……見つけるぞ……。今は亡き……父親の財宝、いや!世界の秘宝を……!」

 

「ぴぴぴ!」

 

「進め…………!ゴールデントレジャー号よ!!荒波を!!超えてゆけぇ!!わははははは!!」

 

「ぴっぴぃーーー!!!」

 

 フェリーの中で、風がよく当たる場所をあえて選び、アエツはタカトを右肩に乗せて、楽しくごっこ遊びをしていた。


 アエツは急遽団服を仕立てて貰い、黒の半袖のワイシャツに、スーツの様なズボンを履いている。「いやー!結局、サラリーマンっぽいのが落ち着くっていうかぁ?!」とアエツは言っていた。


 肩にタカトをのせて、爪とかは大丈夫なのかと思うが、どうやら団服の特殊な繊維の上からなら問題ないようだった。

 

 2人の寸劇をフェリーの室内のベンチに腰掛け、白けた顔で見ているイーネがいた。そのイーネの背後からユウトが近づき声をかける。ユウトは黒の長袖、長ズボンの上からロングジャケットを羽織っていた。ジャケットの中には拳銃やらの危険物があるようだが、傍目には分からない。また、タカトが手にとまれるように、両手に黒い厚手の手袋を嵌めていた。

 

「終わりそう?」

 

「お前の目、腐ってんのか?」

 

「君って、初対面の人には特に口悪いらしいね。なに?自己防衛か何かなの?僕もアエツさんみたいな反応すればいいのかな。」

 

「黙れよ。鷹の付属品。」


 

 ―キッズルールでの話し合いの後、夕方頃にタイヨウからこう通達された。


 『明日の明朝、本社より、テンジョウ家に向けてたつ。メンバーは、アエツ、タカト、ユウト、ナユタ、イーネ。テンジョウ家は、第二国羊の国(だいこくひつじのくに)の"ローズ"という場所にあるため、フェリーに乗って行ってチョモランマ。(飛行機の方が早いのに、ナユタが断固として拒否したから文句ならナユタへどうぞ♡)。フェリーまでは俺の秘書が。フェリーからは、向こうに運転手を待機させておくから。ま、頑張ってね♡』。


 そして、車で港まで来たはいいが、肝心のナユタは、いつもより乗客数が多いと聞いて、断固としてフェリーに乗るのを嫌がり、結局乗らず。


 フェリーにはアエツ、タカト、ユウト、イーネの4人が乗った。

 

 では、ユウトが何の事を言っているのかというと、フェリーまで向かう道中の車の中、アエツがイーネに話しかけた時の話しだ。


 いつもの調子でイーネがアエツに噛み付いた。

 

「黙れよ。くっせーんだよクソおやじ。その口閉じろ。自分の口臭、加齢臭、海で洗ってから出直せよ。」

 

「アハハハハ!俺もぉ40だから!君らからしたらオッサンだよね?!ワハハハ!いやぁ、俺も若い時は、これでも?尖ってたし?!わっかるぅ!俺も昔はさ、生意気なガキみると、なにくそー!って思ったのよ?んー。思ったんだけどさ、これでも2児の父親になっちゃってさー。なんてゆーか。こんな子達もさ。赤ちゃんの時があってさ。初めてハイハイしたり……初めて立ったり……初めて喋ったりして……。しっかり大っきくなってきたんだなぁって……思うんだよ……。それにさ。自分の子供達も……。ああ……。いつかパパと呼ばなくなってさ。大きくなってさ。親元を離れてさ…………。そ、ぞぉ思ったらざ…………。うグッ……うぅ……。ほんと……、ほんと……。よく……。うぅ……。よく大きくなったなぁぁああ!!うわぁぁぁん!!!」

 

 と男泣きするアエツにめいっぱい抱きしめられたイーネは、それはそれは面倒臭くてたまらないといった顔をして、それからアエツにはキツイ言葉をかけていないようだった。

 

 さらに、そこからフェリーに乗り込み、ユウトから皆んなに話があるから集まって欲しいと伝えると。

 

「まてよ!船に乗ったんだぜ?!ユウト!お前にはロマンが無いのか?!船に乗ったら、まずは……探検だろぉ?!なぁ!タカト!!」

 

「ぴぃーー!!」

 

 と言って、それほど大きいわけでもない船内を端から端まで観察して、今のごっこ遊びに至っていた。―



「ふぃぃー。いやぁ。やっぱ船っていいなぁ!なぁ!タカト!」

 

「ぴぃー!」

 

「お゙っ゙え゙ぇぇぇぇぇえ゙え゙え゙!…………よ、酔った……。」

 

「ぴ……ぴぴぃ……。」

 

 アエツとタカトが船の室内に帰ってきたと思いきや、入ってきた瞬間に1人と1匹は床に転がった。

 

「タカトさんは酔ってないでしょう?」

 

「ぴぴぴ。ぴぃー!」

 

「一緒に倒れた方が面白くはならいないです。アエツさん、大丈夫ですか?」

 

「お…………おお……。ちょ、ちょっとタンマ……。おえっ……。横に……ならせ……て……。」

 

「話もあるんで、下に畳の部屋ありましたよ。そこいきましょう。」

 

 そう言って、ユウトがアエツに肩を貸しながら船内の6畳ほどの畳のコーナーに行く。周囲に人はいなさそうだった。


 こそにアエツを横にならせ、横たわったアエツにとまるようにタカトが。ユウトとイーネが胡座をかいて座った。


「それじゃあ、僕からテンジョウ家の事についてお話ししますね。」

 

「お……おう……み、耳は聞こえてっから。あんまり、反応できないかもしれないけど……ご、ごめんな……。」

 

「むしろそれで丁度いいです。」

 

 そう言ってユウトは話し始めた。

 

「テンジョウ家はテンジョウ ユキハル一強の一家です。初代テンジョウ ユキハルは現在も存命し、テンジョウ家の長として君臨しています。ここから先の話は、僕がタイヨウさんに聞いた話も含めて言いますね。」


 ユウトはテンジョウ家の事について語る。

 

「タイヨウさん達のグループがジャンクから血清を生み出したとき、テンジョウ ユキハルはその血清の力に目をつけ、タイヨウさん達に血清を譲ることを迫ってきたそうです。


 ですが、タイヨウさん達も、はいどうぞ。と渡す訳にはいかず、テンジョウ ユキハルと取引をしたそうです。


 血清を譲るかわりに、金銭面の援助とマシロを倒すことに力を貸すように。と。


 そうした合意がなされ、タイヨウさん達はテンジョウ ユキハルに血清を渡し、テンジョウ ユキハルは変わりに、自身の能力を込めた護符をタイヨウさんに渡したそうです。


 テンジョウ家の護符、特にテンジョウ ユキハルの護符は表社会、裏社会の重鎮らも喉から手が出るほど欲する、とても人気の商品なんです。


 テンジョウ家自体もそれで反映した側面がありますが、タイヨウさん達がタイヨウカンパニーとして、自分達でやっていけるようになるまでの金銭的支えになったそうです。


 そして、血清を受け取ったテンジョウ ユキハルはどうしたか。


 その当時は血清の副作用で死ぬ人間も多く、血清への適合率がとても大きな課題でした。そこでテンジョウ ユキハルは、既に血清に適合している核師を娶ったのです。それも複数人。


 そこからどうしたかというと、既に血清に適合している核師で身内をかため、その子供達に、血清への適合を進めていった……。つまり、そもそも血清に適合しやすい人間でテンジョウ家というものをつくったんです。」

 

 そのタイミングでアエツが力無く口をはさむ。

 

「……そ……それは……愛が……無い……なぁ……。」

 

「そうですよ。テンジョウ ユキハルは、ただただ血清に適合しやすい人間が欲しかっただけなんですから。数年で急激に人数を増やし、大きな一族になりましたが、内情は……。どうなんですかね…。僕はテンジョウ ユキハルの名の下に集まった寄せ集めの集団だと思っています。」

 

 ユウトの声色は悲しいのか怒りなのか。何とも分からない声だった。ユウトが続ける。

 

「さらに、テンジョウ家は特殊なジャンクを抱えていました。」

 

「特殊なジャンク?……。」

 

 そう聞いたのはイーネだった。

 

「そうです。僕も知らなかったんですが、これもタイヨウさんから聞いた話しで、通常のジャンクとは違うジャンクがいるそうなんです。タイヨウさんが知っている中では3体。『麒麟』『九尾』『猫又』。


 『麒麟』はかつて、アエツさんが討伐し、イーネ君が血清に適合しています。そして、テンジョウ家にいたのは『九尾』。この九尾は未来を見る力があると、僕は聞いていました。


 テンジョウ ユキハルは、自身の護符の力を使って、九尾に、ある特定の未来を無理やり見せていました。


 それは、テンジョウ家の人間が血清に適合する未来です。その事もあって、テンジョウ家にいる人間は、ほぼ100%血清に適合している能力持ち。


 それだけの能力者がいれば、表社会からも裏社会からも仕事が舞い込む……。テンジョウ家はさらに大きな力を持ちました。」

 

 そこで、ユウトの言葉は詰まった。気にならない程度だったが、辛そうな表情にも見えた。ユウトは続ける。

 

「ある日、僕は自分が血清に適合し、動物と喋れる力を持ちました。ジャンクとは話せないはずが、その九尾とは話せたんです。テンジョウ家にとって重要な存在だったため、決して邪険には扱われてませんでしたが、九尾は日の下に出して貰えず、囲われた室内に閉じ込められ、無理やり未来を見させられる時には、それはひどく辛そうでした。


 幼かった僕は、誰にも黙って九尾に会いにいくようになりました。そしてある日。九尾を気の毒に思った僕は九尾を逃してしまったんです。


 それがバレた僕は、家から追い出されました。


 まだほんの子供だった僕は、その後にタイヨウ理事長に拾われ、タイヨウバイオカンパニーグループの核師として働くことになりました。


 タイヨウさんは、子供への血清の適合は進めていませんでした。周りは大人ばかりで、その時に良くしてくれたのが、アエツさんやタカトさんでしたね。」

 

「……お、おうよ……。あの時のユウトは……か、かわいげがあったよなぁ……。」

 

「ぴぴい。」

 

「で。何の話だよ。自分の不幸自慢でお涙頂戴ってか?誰も興味ねぇよ。1人で感傷に浸ってろ。」

 

「ぴぴぴ!ぴぴぴぃ!!」

 

「うるせ。」

 

 イーネの言葉にタカトが怒っているようだったが、何を言っているのかは分からない。タカトの言葉を訳す気もユウトには無いようだった。


 アエツが元気であれば何か言っていたのかも知れないが、アエツは船酔いで伸びていた。

 

「はいはい。私情をはさみすぎたね。僕が言いたかったことは、そういう一族だってこと。一応、タイヨウさんからテンジョウ ユキハル宛に僕たちの事を連絡しておくとは言っていたし、念には念をいれて、タイヨウさんから手紙もあずかってはいるけど。僕は簡単にテンジョウ ユキハルに会えるとは思わない。あと、僕はテンジョウ家の裏切り者だから、宛にはならないよって事を伝えようと思ってね。」

 

「あーそ。」

 

「……で。だ。ここからは覚えておいて貰いたいんだけど。……」

 

 そういってユウトはまた話しを続けた。

 

 ――――――

 <第二国(だいにこく)羊の国(しつじのくに) 港の町"シミア">


「うぇっ……ぷっ……。」

 

 夕日を背にして、船が港につき、ユウトとタカト、イーネ、アエツと順番に降りていった。


 船を降りてすぐ、場違いな高級リムジンが目に入る。リムジンの横には運転手であろう、タキシードをきた男性と、着物を着た女性の姿があった。


 ユウトとイーネには既に緊張が走っていた。


 後ろからヨロヨロとアエツが追いついてくる。


 着物の女性は4人に向かって話しかけてきた。

 

「久しぶり。ユウト。こんばんは。タカト様、アエツ様、イーネ様。」

 

 ユウトが女性に言葉をかえす。

 

「こんな所で会うとは思いませんでした。モミジさん。」

 

「挨拶も無しですか?相変わらず無粋な子。私は、皆さんをテンジョウ家にお連れする為に来ました。」

 

「フェリーからは、私達の団の者がテンジョウ家に案内すると聞いていますが。」

 

「せっかくこちらまで来て頂いているのに。案内も無しなんて失礼ですわ。私どもの方で車の手配は致しますと、タイヨウ様にもご一報入れてお迎えに上がったのです。皆様にはご連絡が届かなかったのですね。私どもの不手際ですわ。大変申し訳ございません。」

 

 そう言ってユウトがモミジと呼んだ女性は深々と頭をさけだ。黒髪を丁寧にまとめており、頭を下げたことで、赤い簪がみえる。モミジは頭を上げると、車のドアを開けていう。

 

「どうぞ中へ。テンジョウ家まで案内致しますわ。」


 ――――――

 <タイヨウバイオカンパニー本部 理事長室>


「はぁ?!ユウトらがフェリー乗り場から出てこん?!」

 

 タイヨウは理事長専用の高級そうな椅子に座って、電話の対応を行っていた。電話の向こうの相手は、ユウト達をフェリー乗り場からテンジョウ家まで案内する予定だった事務員だという。

 

 『は、はい……。フェリーは予定通りについてますし、一応、人気(ひとけ)が無くなるまで待ってはみたんですが、誰も……。職員の人に、他に人が残ってないかも聞いてみたんですが、乗客はもう誰もいないと言われまして……。』

 

「フェリーがついた時間から何時間たっとんねん?!」

 

『か、かれこれ1時間半……もう2時間くらいになりますかね……。』

 

「あほ!はよ連絡せんかい!!」

 

『す、すみません!!』

 

「あー。いや、悪い悪い。ありがとうな。とりあえず……そやな。そっちの事務所で待機してくれるか?」

 

『は、はい……。分かりました……。』

 

 そう言ってタイヨウは電話を切った。

 

 理事長室の来客用のソファには、三角座りで座るナユタの姿があった。ナユタがタイヨウに話しかける。

 

「…………イーネの勘があたったんじゃ……ない……?」

 

「ああああ!!くっそ!こんな時に!!!あっのクソチビヤリチン野郎が……。あー。くそ。とりあえず、もう一度テンジョウ家とコンタクトとるか………………。ナユタ、いつでも出れるように準備しとけよ?他の奴らにも……あー。いや、俺からゆっとくわ。」

 

「…………うん……。」


 

 ―ナユタがごねて結局フェリーから帰ることになった際、イーネは黙って、ナユタに物を投げ捨てるようにして渡した。

 

「ちょ!うわ!……。」

 

 ナユタはそれを落としそうになりながら受け取り、「落とすだろ?!あと、僕、泥棒の共犯になるの嫌なんだけど?!」と文句を言ったが、イーネは何も言わずにフェリーに乗った。―


 

 ナユタは理事長室のソファの上で、青い円盤型の機械。ジャックポットを大切そうに握りしめていた。

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