3-① 祭をしよう
「……と、このように。この2種類のジャンクは大きさこそ違うものの、全く同種である事が確認できました。また、森の複数箇所に、対象のジャンクが、脱皮したと思われる殻が点在し、一見すると、そこにジャンクが存在しているように見えるのが、他の団員の混乱に繋がったと思われます。また……。」
大きな会議室。教壇でラスターがスクリーンを示しながら説明をしている。大きな楕円形のテーブルの周りには、スーツ姿の中年の男性達が座っている。
「あーーー。ラスター。もぅええわ。その時、双方向通信型のジャックポットに不具合があったらしいな。それはどうなってん。あとぉ!幻種を探してたっちゅう大男!その話ししてくれ!」
ラスターの話を遮ったのは1番奥の席で太々しく座る、40代くらいのスキンヘッドの男だった。
線の細い体。尖った黒いサングラス。黒の革ジャンに黒の皮のズボンを履いている。
「あ…………。いや……あの……。タイヨウ理事長。僕はジャンクと核師の専門でして、その件は、他部署の管轄となっていまして……。」
「あー!ほな俺はこれで。な。次あんねん!次!」
ラスターがタイヨウと呼んだその男は席から立ち上がる。
「あ。それと、その大男が言った"マシロ"って奴に焦点当てろ。全部署やぞ!全部署!ラスターお前もや!なぁにが専門家や!柔軟に頼むで!」
タイヨウという男の無茶振りはいつもの事のようで、誰も反論せず、中には軽く首を振りながら項垂れている者もいる。捨て台詞のようにそれだけ言うと、タイヨウは会議室から出ていった。
会議室の外ではタイヨウ専属の秘書が白いローブを持ちながら待機していた。
抹茶色の髪に抹茶色の瞳。赤いフレームのメガネがよく似合う。高い位置で結んでいるポニーテールは、くせ毛のせいなのか、毛先がぴょんぴょんと跳ね上がっていた。
秘書はタイヨウが早歩きで廊下を歩いていく横を半歩遅れてピッタリとついていく。
「ハナちゃん……。やっとや……。やっと尻尾だしやがった。何としてでも掴まなあかん。いや、あいつの事や。確実に舐めた真似してくるで。いきって胡座かいとる所を。確実に……確実に仕留めたる……。」
「はい。タイヨウ理事長。」
「その大男と接触した核師と会いたいなぁ。どっかで会えるようにセッティングしてくれへん?」
「いいえ。それは出来ません。1ヶ月先まで分刻みの予定が詰まっています。」
「分刻みてっ!わしゃ花嫁かっ!」
「あっそれ。あっそれ。あっそれそれそれそれ。」
「はっなよっめか♩わしゃぁいったい、はっなよっめか♩いっそがしぃったぁらいっそがしぃ。あっそれ♩何ゆーてんねん!」
「欲してるのかと思いまして。」
「そう。正解♡あほか!」
「まぁ、何とかしておきます。とりあえず、早く準備して下さい。」
「あいよー。」
そう言ってハナと呼ばれた秘書はタイヨウの肩に白いローブをかける。タイヨウはそのローブを全身を覆うように大きく広げた。
「…………ほんまに…………。誰もがいつでも、じょおだん言うて…………。」
タイヨウの容姿が徐々に変化していく。
「胡座かきながら饅頭でもくぅて……。」
スキンヘッドは白髪の混じった黒髪になり、綺麗にオールバックに整えられ、体はローブの上からでも分かるくらいに少しふくよかに。顔に皺が入り、60代くらい丹精な出立ちの年配男性になる。
「会いたい人にあえる。そんな世の中にしないと。いけませんね。」
「はい。エレメント統治主総大。」




