表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
red. -能力者が神様に挑む話し-  作者: テオネオ
第一話 主人公がいない編
1/134

1-① 白くて凶暴な

「見た瞬間から弱っちい奴らだと思ってたんだよ。案の定死に目みてらぁ。ざまぁねぇ。」

 

 彼は無邪気な子供の様に笑っている。

 

「こんな面白い事に引き合わせてくれたんだから、特別待遇で助けてやるよ。命を賭けた口約束といこうぜ。」

 

 彼は不敵な笑みを浮かべる。薄暗い森の中。満身創痍で地べたにへたりこんでいる私に選択権などなかった。

 事件は解決し、全ての手続きが済んだ頃。"生体研究科-γ班"課長に呼ばれ課長室のデスクの前に立っている。


 前に座っているのはデグス・ラスター課長。とても優しい人だ。一度、金髪に染めた髪は根本の黒い部分がだいぶ伸び、後ろで一つに束ねてある。随分とくたびれた白衣を着て、縁の無い丸メガネの奥は、心配しているような目をしている。

 

「団服を支給します。この団服は、それぞれの"力"に合わせてカスタマイズされています。この服も例外でなく、あなたに合わせて作られています。次回からはユニットを組んで実践……といっても、もう実践を経験したようなものですね。」

 

 デスクの上に畳まれた状態で置かれていた、真っ黒な団服を差し出しながらラスターが言う。それを受け取り、「ありがとうございます。」と返すと、少しの間を置いてからラスターが話し始めた。

 

「こんなこと言うのは大変に申し訳ないのですが、マリさん。先の事件の"ジャンク"を討伐したのは、本当にマリさんですか?…。」

 

「そうです。自分でも信じられませんが。」

 

 間髪入れずに返すと、ラスターは困った顔をしてみせる。

 

「討伐した"ジャンク"の死骸を見ました。それはもう綺麗な真っ二つでした……。マリさん。私は他の人間よりも少しだけ、あなたの"力"を理解しているつもりです。正直に言います。私はあなたが倒したとは思えません。これは、あなたの手柄をどうこうしたいとか、そういうものではないのです。ただ、周りの過剰な評価はあなたを苦しめてしまうかもしれない。私達は、"お2人"の証言を信じるしかありません。これは信用問題にも繋がります。何か言えない事情があるならば、あなた達がどのような状態に置かれているのかも含め、私は非常に心配しています。」

 

 ラスターの話しに、ただただ沈黙する。しばらく重たい空気が流れた後、ラスターは「はぁ。」と深い溜め息を吐いた。

 

「分かりました。これ以上は詮索しません。戻って貰って結構ですよ。」

 

 その言葉に「ありがとうございました。」と言い背を向ける。部屋を去ろうとドアノブに手をかけたところで、背後から再びラスターが話しかけてきた。

 

「マリさん。私、大学の教授も兼務してるんですが、最近、編入で2人の学生が来ました。とても頭の良い2人で、"核師(かくし)"を目指し、専用のカリキュラムに進んでいます。後々、血清適合に進むと思うのですが、マリさんの"力"の副次的能力を一度試してみたいのですが、力をお貸しして頂けますか?」

 

 少し間を置いた後、「是非。私の力が役にたつのなら、いつでも。」と言い部屋を出た。

 ――

 施設内を歩く。関係者であろう者達が


 「あれ、この前の事件で、いきなり"ジャンク"の討伐に成功した、マリ・リルベラじゃない?」「すごいね。若そうなのに。しかも女性だよ。」「しかもしかも、"血清適合"も早くて副作用もなし。天賦の才能らしいよ。」「知ってる!blood goddessブラッドゴッデスだってさ。」「え。なにそれ。怖ー。」


 なんて会話が聞こえる。

 

 人の噂は簡単に回り、尾鰭がついて、知らない間に、知らない異名までついている。そう噂される程の事なのだろう。それ程に凄い事なのだろう。それ程……。それ程……。


 それ程の事を簡単にやってのけたのは、私じゃない……。まだ鮮明に思い出すことの出来るあの日の映像が、フラッシュバックのように脳内で再生され、吐き気を催し右手でそっと口元を覆った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ