夜を越えて
東の空、耳を澄ませた三日月は星の足音掬うようです
虫の心拍が星々の瞬きのような鈴の音の夜
なによりも 詩が好きな あの瞳の輝きは
幻みたいで、それでも、どこまでも
暗闇の中の道しるべみたい光っているんだ
この胸に橋を架けられたあの日から
捉えて離さない幻だけど
ゆらぐあの瞳のような輝きでわたしを照らしてくれている
白昼の記憶は陽炎のように浮ぶ
草の香りが陽に照らされムンムンとした熱気となり、わたしは鼻腔から夏と戯れあった
幻ではなく
たわわに実ったヤマモモの紅い実は
楓の青葉と重なり合っていた
わたしはひとつひとつの紅い実を手に取り甘酸っぱさを口にふくんだ
幻ではなく
見上げれば、建物の合間に見える四角い空にも
その向こうの丸い空にも
わたしが誰かを想う心が立ち昇る雲とひとつに溶け合う
幻ではなく
東の空、小指を曲げたまま耳を澄ませた三日月は星の呟きを掻き集める
虫の心拍が星々の瞬きのような鈴の音が響いてくる
わたしはそれをポケットにいれてチリンチリンとならしながら自転車に乗ってあなたを迎えにゆく