転生
「.....んぅぅ....
ある日の深夜、一人の少年が目を覚ました。
(なんだろう....いつもこんな時間に起きないのに。
んぅ...おかあさん?いつも朝帰りでこんな時間にいないのにどうしたんだろ...
それに笑ってる...?なんでだろう、いいことでもあったのかな。)
「フフッ...ごめんね、私のために...いや、私たちのために死んでちょうだい?」
(えっ?なにいって....)
そういって、少年が母と呼ぶ人は片手に包丁を持ち大きく振りかぶった。
(包丁....?なんで...!!避けられない!)
少年の母親は片手に持った包丁を両手に握り直し、少年の体を確実に殺さんと
深く刺した。
「ッ!! 痛いよ...な..なんで...おかあさん...」
少年は刺されたところから大量の血を流しながら、なんでと繰り返し母親に
問い続けた。
「なんでって....何を当たり前のことを聞くの?あなたが邪魔だからに決まってるじゃない」
そういい母親は少年を見下ろしながら言った。
少年はその言葉を聞いて涙が止まらなかった。頬から零れ落ちる水滴が
止まることなく、流れ続けている。
「ッッ!!!ぅぅ....!」
(声が出ない...苦しい。息もできない!!痛くて体も動かせない!
なんで..なんで....なんで!!なんで僕はこんな痛い思いをしなくちゃいけないの?いい子にしていたのに!)
少年は刺された痛みで言葉を発すことも耳で聞くことも、体を動かすこともできなかった。
それに加え、少しずつではあるが、呼吸もできなくなり苦しかった。
呼吸ができない苦しみから動けば、刺された箇所から激痛が走り、血液が
絶え間なく流れ出てくる。
少年はこの世で最も痛く、苦しく辛い、数十分を体感している。
(苦しい...なんで僕がこんな目に...なんで...)
少年の視界が少しずつ暗くなっていく。少年の心の中にはこれから
自分は死ぬんだと。そんな気持ちで溢れかえっていた。)
「殺してやる...もう信用しない...誰も!誰も!!昔は優しかったお母さんも
今では僕を手にかけるほどクソになった!結局は子であろうと自分しか
考えてない!!偽善だ。もう俺は...誰も信用しない。)
少年の視界がすべて暗黒に染まろうとした時。ふと自分を包丁で刺した
時に言われた言葉が頭の中をずっと残っている。
「邪魔だからに決まってるじゃない」と。きっと走馬灯だろう。
その言葉が過り、少年の中ではすべてが壊れた。
刺した母親は自分の子を包丁で刺した後邪魔、と吐き捨て逃げるように
去っていた。
だが。誰もいないはずの少年の亡骸の横には一つの影があった。
「いいじゃねぇかぁ!!その殺意!!だが、可哀想だなぁ。
実の母親に邪魔と言われ殺されるとは。これほどの殺意を逃せば、こんな機会
今後来ないだろう。あのクソ野郎共がいる限り俺は何もできないが、
このガキを転生させるだけの力はある。
そうすればいずれは....そうと決まればやるか。いい拾いもんをしたぜ。)