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第27話∶古株


 木々が風で怪しく揺らめき、奥へ行くほど日が陰る。

 エール達は暗い森の中を進んで行く。

 そんな森の中を進むことに、どこか懐かしさを感じていた。


(村を出たのは最近の出来事なのに…ずいぶん時間が経ったみたいだ…)


 最初とは違い、今では仲間がいるのがどこか新鮮で、目新しさを感じていた。


(…なんか…振り返りがちだな…大丈夫か…?走馬灯とかでは…?)


 エールは頻繁に繰り返す、この懐かしく思う気持ちと何度も認識する駆け出し始めたころとの違いに、身に危険が迫っているのではないかと少し不安になる。


「また来そうだよ」


 タローの声に、エールは気を張る。またトレントが近くに姿を現したのだろう。


 トレントの数は最初と比べたらかなり減っており、今では疎らに現れ急いで逃げ回る必要もなくなっていた。


 先手必勝、エール達は相手が何かする間もなく距離を詰め、トレントを仕留める。

 何度も戦っている内に、トレントは髄と呼ばれる中心部が弱点だとエールは感じていた。


「それにしても…かなり暗くなってきたな…」


 戦闘を終わらせ、エールは思ったことを呟く。

 森の奥に進むにつれ辺りは暗く、不気味な雰囲気を醸し出していた。


「なんかめっちゃトレント暴れたしね…帰って適当に報告しておけば良いかな」


 タローはもう帰る気持ちでいるらしい。


「え…!もう帰る気なのか…?」


 それにはいつも振り回されていて慣れているはずのユージも驚いている。


「いやだって、トレントを止めろ的なやつじゃなかった?ある程度倒したし、帰っても良いんじゃない?」

「確かに…?それもそうか…?」


 タローの説明されたが、ユージはまだ納得してないようだ。エールも自分でも分かっていないが、納得していない。


「ま、でもまだ、もうちょい進もうか」

「どっちだよ…!」


 まだまだ全員はタローの一挙一動に振り回されているが、それを可笑しく感じてなのか、クロワは吹き出して笑う。


「こんな雰囲気ある森なのに、なんだか愉快になっちまったな!」


 太陽のように場の雰囲気を明るくしたクロワだったが、その時カサカサと巨大な何かが動いている音がする。


「前言撤回、めちゃくちゃ不快…」


 クロワは肩の力を抜き、いつでも反応できるようにした。


「誰もが嫌いそーな音したけど?またそっち形?」

「誰もが嫌いそうって…?」


 未だ音の正体の掴めていないエマは、困惑しながらもタローから話を聞こうとする。


「…リビングインセクトかな…」

「え…?リビング…?何の話してるの…?」


 タローの不思議な発言に、エマは真っ当な疑問を投げかけるが、タローは急に何も話さなくなる。


「え…?タローくん…?」

「ほら!来るよ!」


 結局エマは、わけもわからず正体を目の当たりにした。

 木々の間からは、先ほどのトレントよりも、さらに図体の大きいトレントが現れた。


「え?どういうこと…?」


 タローは困惑した顔を浮かべ、辺りを見渡す。


「…どっから出てきた…?」


 少しだけ前触れがあったとはいえ、こんな巨体が木の間のから姿を現すまで気が付けなかったのだ、タローが困惑するのも無理はない。

 一際大きいトレントは、何かが破裂する様な音を出しながら揺れ、近付く。


「エルダートレントってやつかな?貫禄が違うね」


 調子を取り戻したタローは武器を構え、相手がどう動くのか、様子を伺う。

 エルダートレントは大きな蔦を撓らせ、手足の様にエール達へと伸ばす。

 エールは伸びてきた蔦を切り落とし、辺りを見渡す。タローはすんなり対処していたが、他の仲間はタローのように上手く行っていないようだ。


「くっ!」


 クロワは為す術無く蔦に絡まれ、上手く身動きを取れなくなっている。

 ユージは構えた盾に蔦が絡まり、今にも盾を超えてユージに蔦が届きそうだ。

 他の仲間も同様に蔦の対処に追われている。


「やっぱ帰ったほうがよかったかもね」


 調子を戻したのか、タローは振り返り仲間達を見て呟く。

 その姿はエールにはまだまだ余裕そうに見えた。


「帰ったほうがよかったかもね、じゃねぇ!やっべぇ!」


 余裕がありそうな発言をするが、ユージの顔にはかなり焦りが見える。

 エルダートレントはユージの体を貫こうとしているのか、鋭く尖った枝を勢いよく伸ばす。

 蔦で絡まれ盾で防ぐのは間に合わない。


 鋭い枝がユージを貫こうとする瞬間、ユージは伏せなんとか回避したが、安心するにはまだ早い。今度はその枝を撓らせ、ユージを叩きつけようとしていた。

 ユージは瞬時に盾の下に移動し、なんとか防ごうとする。


(それじゃ、押し潰される…!)


 エールはそう思い駆け寄ろうとするが、タローの姿が見えない。

 少し周囲を見ながらユージへ近付くと、エルダートレントの枝が地に落ちる。


「どう?優志、絶命寸前?」

「んな黒ひげみたいに言われてもな…」


 なんとか助かったユージは体を起こしながらタローへ反応し、土を払う。


「エルダーなだけあって、賢さもあるな…どうする?」


 タローには理解できた賢い行動があったらしい、そんなことはエールには理解できなかったが、一先ずエールは対処することだけを考えることにした。


「…どうするって?」

「どうやって倒すかってことだよっ!」


 そう言って、タローはエルダートレントへと飛びかかる。

 相手の注意がタローへ行ったのを見て、エールは他の蔦に絡まれてる仲間達を助けに振り返る。


「…えっ」


 エールは振り返り、その瞬間目に映ったものに驚いてしまう。なんと蔦に絡まれていたはずのチアが平然と立っていたのだった。


「どうしたの?」


 何事もなかったようにエールの絶句を心配する。


「い…や…助けに行こうと…よく抜け出せたね…?」

「うん!燃やした!」

「な、なるほど…とりあえず他の人達を…」


 流石の力技にエールはそれ以上何も言えなかった。どうやったのか、熱くなかったのかを疑問に思ったが、忘れることにした。


(きっと根性があるんだ…根性…?根性でどうにかなるのか…?)


 雑に解釈する度に何か引っかかるが、それをなんとか振り払い、チアと共に他の仲間を助けに行く。


 ユアサは持っていた短剣で蔦を切り、自力で対処した様だ。チアは近くにいるクロワを助けに行った。

 それを見たエールは、エマと名乗っていた少女を助けに行く。


「おい…待て!来るな!チア!?それぎり死ねる量燃えてるぞ!!!無事なわけがねぇ!ちょっ…!熱っつ!!タンマ!タンマタンマ!一旦な!?待てって!どうした!落ち着け!こんな事で盛り上がってる場合じゃないだろ!無言で近付けるな!!それを!!!」


 後ろではかなりの盛り上がりを見せているようだが、エールは見ないことにした。


「大丈夫?」


 エマに駆け寄り、エマに絡み付き身動きを封じている蔦を切る。


「う…うん…なんか…あっちの方が大丈夫じゃないような…?」

「ぐおおおおおおおおお!!!!」

「ははは…」


 エマを助けたが、騒がしい後方にエールは苦笑いしかできない。しかしこんなにも緩んでいるが、まだ戦闘中である。タローとユージの2人が注意を引いている事を思い出し、エールは気を引き締める。


(…タロー達、よく考えたら結構バランスの良いメンバーだな…タローは魔術も使う剣士で、ユージは守り固めの戦士かな…?エマは回復術士…?ユアサは…?弓とかもあるし、狩人かな…?)


 エールは冷静にタロー達の得意としている戦い方を分析する。


(相手は恐ろしく大きい木の魔物だ…どうする…?チアは炎で戦うだろう…クロワは…?あの破壊力のあるガントレットでどうにかするのか…?)


 今度はクロワはチアのエルダートレントとの戦い方について、エールは考える。


「優志!手数が多いよ!」

「わかってる!減らすんだろ!?」


 戦闘中であるタローとユージの会話が聞こえてきた。

 エールの目に少し遠くでタローがエルダートレントの攻撃を躱し、ユージはなるべく注意を引き攻撃を捌いている姿が映る。


(2人とも凄いな…特にタローは戦い慣れてる…僕は…どうする?)


 タローのように攻撃を全て躱しながら相手の手数を減らすことや、ユージのように注意を引き、攻撃を防げる自信もなく、自分が今、何をすべきなのか、エールは考える。


 突然、エルダートレントの体が震え始める。

 何をするのかわからず様子を見ていると、エルダートレントに付いている葉が勢いよく、無差別に飛び始めた。

 エルダートレントは葉を飛ばす為に体を震わせていたのだった。


 幾つもの葉が地面に突き刺さり、当然エールの体にも当たり体に傷を付ける。

 エルダートレントの近くにいたタローは無事な様で、ユージは盾で防いだが、少し体に傷が付いている。いつの間にエマはユアサの元へ移動し、有効な攻撃手段が少ないと判断したのか、二人で木の陰で防ぎ、事なきを得たようだ。


(チアとクロワは…燃やした…!?火力どうなってんだ…強過ぎる…でも疲れてるような…?)


 どうやらチアは迫りくる木の葉を全て焼き尽くした様だ。周囲には灰が舞っている。そしてその真偽はクロワの表情が物語っている。

 限度のない力技の様にも見えるが、チアの表情から、かなり体力を使った事が伺える。そう連続では撃てないとエールは考えた。


「あっぶな…めためたヤる気じゃん」


 やる気のない声とはタローは裏腹に、木の葉を出し終えたのか、少し間があるエルダートレントへ、素早く攻撃を仕掛ける。


「お土産の木刀にしてやんよっ!」


 タローは迫るエルダートレントの攻撃を何度も躱し、枝を何本も切り落とす。

 そして幹へと剣を突き刺すが、奥まで届いていないのかエルダートレントは暴れるだけで、今までのトレントとは違い、すぐに力尽きることはなかった。

 しかしよく見ると、突き刺した場所から煙が出ている様に見えた。


「チア!この剣に熱を込められたりする?ちょっと燃えてる感じで!」

「できるけど…どうするの?」

「ちょっと内側から燃やしてくる!」


 自分も熱を込めて内側から燃やしていけば倒せるのではないかと、なかなか惨い事を思いつき、剣身に魔術で熱を込めてもらう。そうしてそのままタロー達へと加勢する。


「エールもお土産の木刀欲しかった?全部燃やすとこなんだけど…」


 タローは戦闘中とは思えない雰囲気を出しているが、かなり力強く剣を奥深くまで突き刺そうとしているようだ。それほどまでにエルダートレントの幹は硬く強い。

 エールも、そんなタローに負けじと剣を突き刺すが、なかなか上手く刺さらない。

 そうしていると、今度は地面からエルダートレントの根が、鋭くエール達へと向かう。

 その攻撃を避け、ふとチアの方を見るとチアも炎の魔術で応戦しているが、炎は枝に弾かれ、燃えることはなかった。


「優志〜斧とかない〜?」

「あったら苦労してないだろっ!」

「それもそうか…」


 タロー達もなんとかエルダートレントを倒そうとしているが、なかなか手段が無いようだ。


 この場の全員が思案する。この場を切り抜ける方法を。

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