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第2話∶悪いスライム

 


 この世界の名前はセレモクラスィア。

 一日は二十四時間。

 緑豊かな自然が広がる。

 一見平和な世界だが、あらゆる場所に魔物が蔓延る。それは魔王の影響とされ、各国が魔王を倒そうと千思万考している──────




 村を出てから、少し時間が経った。

 エールはまずは村や都市など、人が住む場所に行こうと思い、森の中を進んでいた。

  そして現在、エールは────


「どこ行ったらいいかな………」


 ────なんと途方に暮れていた………。

 勢いで村を飛び出した為、森を迷っていたのであった。


 迷いながらも森の中を進んでいると、草を掻き分ける音が聞こえてくる。

 エールはなんだろうと、音の鳴る方へ顔を向ける。

 するとそこから、透明な水風船に似たものが飛びかかってきた。


「スライムだ!!」


  仰天と感動が半分ずつある様な声を出して魔物の存在を確認する。

 スライムは体当りをしてくるが、エールはそれを難無く躱す。

 次々と、自分に向かって何度も体当たりをしてくるスライムに、違和感を抱く。


 この世界のスライムは、基本的に水風船のような形をしており、半透明の皮の様な粘膜で覆われている。

 それを裂くと中は透明の液体や、移動する時に取り込んだものが入っている。

 粘膜はとても破られやすく、針や刃物等の鋭利なもので切れやすい。

 少しの傷ならすぐさま再生するが、大きな傷になるとその傷が付いた場所から液体が流れ出し、活動ができなくなる。

 そして基本的には、害のない魔物である。


  エールは、何度も自分を狙って攻撃を続けるスライムを躱し続ける。

 そうしていると更に、森の奥から続々とスライムが出てくる。


  エールは、先程まで攻撃してきていたスライムから一旦距離を置き、スライム達全体を見渡す。

 すると、スライムの中に一際目立つ体内に真っ赤な核の様な物があるスライムを見つけた。


「あいつは………!」


 この魔物は、ボムと言う魔物で、地域によって呼び方は様々だ。

 スライムと同じ形をしているが、中に赤い核の様な物があり、群れで行動する。

 スライムと群れを成す場合もあり、その場合その群れの中心となる。

 ボムが中心にいる群れのスライムは、攻撃的になり、他の生き物を襲うとされている。

 そして、倒すと絶大な威力の爆発をする。


 要は、倒すと爆発するスライムである。


 ボムが体をぶるぶると震わせる。すると群れのスライムが示し合わせたかの様に、一斉にエールへと飛びかかる。

   エールは、素早い身のこなしで、スライムの攻撃を何度も躱し、軽い拳を入れる。

 そして一直線にボムのもとへと駆け出す。


 ボムは自分のもとへ駆けてくるエールに、飛びかかり攻撃しようとする。


 エールは腰に携えている剣を按じ、「ごめんよ」と言い放つと────


 一閃


 ────ボムは縦に割れ、爆発する。

 エールが鞘に剣を納める。

 すると残りのスライム達は、四方八方に散るように逃げて行く。


 戦闘が終わり、エールは溜息を吐く。

 少し疲れたのか、先に見えた池の近くで休憩をしようと、そこへゆっくりと歩いて向かう。

  すると────


「みてたよ」


 ────背後から声がする。

 エールが振り返ると、そこには黒髪の青年がいた。

 整った顔立ちをしており、どこか気怠そうな雰囲気を出している。

 エールは何の気配もなく背後にいる青年に不気味さを覚え、様子を伺っていると、青年は口を開く。


「派手だね、君」


 エールは突然出てきて、何の話をしているのか分からない青年に戸惑いながらも、会話をしようと口を開く。


「え…?ん?君は?」

「………」


 青年は何故か黙り込み、エールは様子を見ている。そうすると当然、しばらく沈黙が続く。

 そして────


「俺は偶々通りかかっただけ、そんなことより君、エールっていうんだね。」


 ───突然名前を言い当てられ、エールの戸惑いは恐怖に変わる。

 突然現れ、自分の質問には何も答えず、碌な会話もしていないのに、何故名前を言い当てられるのか、エールからしたら恐怖でしかない。


「えっと…?何で…?」

「………」


 またもや青年は黙り込み、エールの声の後には沈黙が続く。

 そしてエールからして少しの苦しい沈黙のあと、青年が口を開く。


「………うん、君なら大丈夫そう…行き先に困ってるなら、このまま真っ直ぐ森を抜けると、街があるから…そこで…」


 青年は更に、じゃ、またね、と言い放ち、街があると言った方向へと進んでいく。

 何とも一方通行な、会話とは言えない青年との時間に、エールは唖然とする。


 青年の背中が見えなくなって少し経つも、未だに混乱するエールは、やっとの思いで口を開く。


「…なんだったんだ………?」


 エールの声は届かない………。

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