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第18話∶Continue

 

 相手の虫は光に向かって進んでる。

 虫の行動は光に左右される…!初歩的なことだ…!そして相手の操作が効かない程、その性質は強い…!


 まずはこの部屋にある燃えるの物を燃やして、虫を散らす。

 この部屋から出たら、更に出口までの間の物を燃やして、時間を稼ぎつつ外へ出る…!


 外は森だった…外に出れば、相手の弱点が多い。必要な数だけ木を燃やして戦えば…きっと勝てる…。


 部屋に落ちてる木片など、燃えるものに火をつけていく。


 クロワは未だ燃えた布越しに競っている。もう少しの辛抱だ。


 燃やしては、出口へと投げる。火傷なんて、覚悟の上だ。


 かなりの量の火が、出口の近くで燃えている。もう…準備はできた。


「チア!」


 チアの方も準備はできているようだ。行こう。


「クロワ!」


 返事を待たず、言葉を継ぐ。


「突っ込む!」


 そう言って走り出す。

 エールとチアでクロワに体当たりした形になってしまったが、仕方ない…。


 そのまま押し進み突破する。

 狙い通り、虫は炎へ向かい、異形へ集中しきれていない。このまま…外へ…!

 しかし、少しだけ振り返ったが、異形の姿が見えない。

 いや…ずっと見えていなかった……。

 ずっと…勝手に虫たちの中にいると思っていた……虫たちで隠れてると思っていた……


 そう簡単に上手くは行かない…。


 出口からの曲がり角、中からは見えない場所で、待っていたと言わんばかりに異形は佇んでいた…。


 そしてチアへ、攻撃をしようとしている。


「危ない!」


 チアを押し飛ばす。

 チアは頭が追いついていない様子だ。


 無数の虫が身体に纏わりついていて、まともに進むことができないほど重い…。

 あまりの重さに、少しずつ足が動かなくなり、身体が沈む。


 チアとクロワがパニックになっている。

 あろうことか、チアは炎をこっちへ放ってきた…パニックになり過ぎ…とどめだろ…。


 火達磨になるが、虫たちはそんなことお構い無しに向かってくる。


 炎で防がれて、僕の体にずっと纏わりつくことは無いが…身体が喰われている…痛い…熱い…。


 し…ぬ…?のか?僕は………。


 激痛に藻掻くが、体力が持たない…。

 でも不思議と冷静な思考でいられる。


 徐々に痛みが感じられなくなってきた。

 鼓動が小さくなり、意識が遠のく。


 熱だけが残る…。


 タローが言ってた…精霊の話ってなんだったんだろう…。

 タローの話が頭に過る。こんな状況でも、ふと考えてしまう。


 …

 ……

 ………


 ここで…勇気を出したら…何とかしてくれるのかな………。

 縋る思いもあってそんなことも考えるが、現実はそう甘くない。


 …

 ……

 ………


 …いや…違うな。誰かに助けてもらえる夢なんか、見てないだろ…。

 どんな窮地も乗り越える。そんな存在に憧れていた。僕もそんな主人公に…。


 …

 ……

 ………


 …そうだ…僕は…勇者になるんだった。

 何回目だ…僕は勇者になるんだ…!

 …なら、こんなことで倒れている場合じゃないだろ…。


 自分の目標を再確認する。目の前の事態に追い付けず、夢から逸れていく自分に、憤りを覚える。こんなんじゃ駄目なんだ。


 …

 ……

 ………


 身体が熱い、体も夢も燃え尽きそうな程、暑い。でも、それじゃダメなんだ…。

 暑がってる場合じゃ…ない……そうだ…もっと暑く…!僕が…もっと熱くならないといけないんだ…!

 折れるな…!奮い立て…!!僕の話は始まったばかりだ…!

 こんなオチは…誰かの夢にもならない…!

 負けそうな僕に…!打ち克て…!


 弱まっていた鼓動が、熱くなる。

 心が再び燃え上がる。

 ここを越えなければ旅は終わる。おとぎ話なら語り継がれない。

 夢を叶えられず、旅が終わり、話も終わる、そんな終劇。


 僕の旅は…こんなところじゃ…終わらない…ッ!


 こんな窮地…立ち上がるかどうかで生死が決まるなら…僕は立つ…!

 常識なんて水に流せ、勇者になるんだ…!

 気付け…!挑戦だ…!普通じゃ…ダメなんだ!


 勝つぞ…!エール!火事場の馬鹿力だ!

 ここで勝たないと、夢は追えない。

 夢は夢のまま、覚めてしまう。


 まだ…終われない!!!


 ゆっくりと、身体を動かす。

 もう動かないと思っていた身体は、思っていたよりも、動かすことができた。


 心做しか炎は温かく感じる。

 そして心は熱い。いや、ワクワクしている。

 これからの自分の精神と成長の証明に。


 前を見るとチアが叫んでる…。クロワもだ…。

 ゆっくりと起き上がり、立つことができた。

 でもまだ、ここからだ。


 まだ…燃えてる…。

 炎で虫は何とかなりそうだ…。


 …今は、勝たないと…!


 チアもクロワも、信じられないものを見たような顔だ。


 敵がこっちを見る。

 燃えている今なら恐らく、剣でも攻撃が通る。触れるだけで良い。

 そうだ…エール!逆に考えろ…このまま突っ込むぞ!


 敵に体当たりしようと走り出す。

 すると相手は燃え移るのも覚悟の上で、体を掴もうとしてくる。

 それを剣で受け止める。

 炎があると、こんなにも対応が楽なのか…まるで太陽が味方でもしてるみたいだ…。


「何をした…!?どうなっている…!?」


 敵は、何が起こっているのか分かっていない様子だ…。


 何度も敵の攻撃を受け止め、燃やす。敵はまだまだ虫を増やすようだ、本体に攻撃するか、虫を絶やさないと終わらない…。


「クソッ!クソッ!!」


 敵はかなり焦っている。虫の数もかなり減ってきてはるが、まだ本体は見えない。


「始まったばかりなんだ…!まだ終われない…!」


 相手が感情を剥き出しに、言葉を発する。

 相手にも何か目標があるようだ。燃えるような眼差しをしている。

 この戦いに、悪なんてない気がする。

 ただ、生きるのに必死なんだ。

 だからこそ、慈悲や、情はかけない。


 少しずつ、数が減ってきたような気がする。

 でも、まだ多い。

 相手はまた、掴みかかってくる。

 それをまた剣で受け止めるが、今度は剣を逸らされた。それが目的だったみたいだ。


 相手は勝負に出た。

 本体が出てきて、噛み付こうとする。

 でも、相手が予想外なことをしてくるのは、もう知ってる…。

 出てきた本体に、追撃する。


「グッ…!」


 相手は呻き声を堪え、まだ果敢に挑もうとしてくる。


 もう…終わらせよう…。


 大きな目に、剣を突き刺す。


「ぐわぁぁぁ!」


 いつの間に、こんなにも流暢になっている。

 きっと相手にも、色んな話があるのだろう…。


 少しずつ、近寄る。

 相手はきっと、勝てるなんて思っていない。

 …でもまだ、挑んでくるだろう。

 …相手が諦めるような、心が折れるような事を言わないと…。



「…敗北の味は美味いか?」


 …美味いわけがない、きっと死ぬ程悔しい筈だ…。


「…悔い改めろ」


 そう言い加える。


「こ…れが…デザー…ト?」

「お前にやるデザートは無い、クソ喰らえ…!」


 相手は困惑した様に言った。どうやら、自分の限界を悟ったようだった。


「…私はまた現れる…今度こそ…喰い荒らしてやるぞ…!」


 ああ、きっと相手は…これで終わりなんだ…。


「その時は…上手く食べられると良いな…」

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