第12話∶蟷螂流し
どうやら先に遭遇し、既に戦っている勇士達も、こちらの存在に気がついたようだ。
「た、助けっ…」
その言葉を最期に、その男は縦に二つになり、息絶える。
辺りを見渡すと、ちらほらと倒れている人がいるが、気絶しているのか絶命しているのかわからない。どうやらその場で食べる気は無く、殺戮が目的の様子だ。
(これは逃げられない…)
戦はなくてはならない。エール達は魔物を囲うように広がる。
巨大な蟷螂は、絶えず小さな顔を左右に傾げている。その間、じっと見つめられる。
そして顔の動きが止まる。
(来る………!)
蟷螂が前脚を振り下ろす。見切れるものではないが、直線的な動きで、エール達にとって避けるのはそう難しくない。
「俺が引き付ける!」
クロワがそう言い、エール達は散らばり各々の距離を取る。
前のグループの生存者はチア達が避難させるようだ。エールとタローとクロワの三人で戦う。
とんでもなく素早い鎌の振り下ろし、これが何度も続くのは流石に体力の消費が激しく、力尽きてしまいそうだ。
エールとタローは背後から、腹の辺りを斬るが全く斬った心地がしない。
するとその刺激に反応したのか、蟷螂は背後に勢いよく飛ぶ。
エールはもう少し近ければ衝突し、戦闘不能になるところであった。
巨大な体に鋭い鎌と、俊敏な動き、明確に強力な武器を持っており、一瞬でも気を抜いたら死んでしまうほど強力ではあったが、エールには負ける気などない。
タローはどうやら、魔術と剣を使う戦い方で、クロワは、打撃での格闘を得意としているように見える。
初めてにしては、奇跡的に三人の相性は抜群に良かった。
クロワは、蟷螂の攻撃を回避する。よくそんなに連続で避けれるものだと、エールは感心する。
不意に蟷螂はエールに向く。そして今度は前脚を研ぎ始めている。
その隙に腹部を攻撃する。
すると今度は前脚を振り上げ、一気に振り下ろす。
既の所で躱すエールであったが、やはり何度も続くと体力が持たなそうだ。
するとクロワが石を投げつけ、またもや引き付ける。
そしてエールとタローが腹部を斬りつける。
何度も斬りつけていると、少し裂けてくるが効いているのかは分からない。
何度も攻撃を繰り返していると、蟷螂は弱ってきたのか、動きが鈍くなる。
そして、蟷螂の姿勢が低くなる。
(((今だ!)))
エールは誰かと思考が同期した様な気がした。それと同時に、タローが蟷螂の首を刎ねる。しかし、まだ蟷螂は動く、それでも離れていれば攻撃が当たることはない、と少し離れるが───
「何か出てきてるぞっ!」
───クロワの大声に全員が蟷螂の方へ向く、すると蟷螂から尻尾のようなものが生えてくる。
「触手?」
そう思うほど激しく、自由自在に動いているように見えた。
「エール、あれは寄生虫だ」
タローがそう答える。
「………ハリガネムシ」
追加でタローはそう呟く。
呆気に取られるエールであったが、周りを見る。するとあんな巨大な針金があってたまるかよと、誰もが言いたそうであった。
一匹の巨大なハリガネムシが完全に這い出る。すると更に蟷螂から尻尾のようなものが生えてくる。
「二個入りだなんて、お得で素敵な福袋じゃん」
タローの発言に、そんな呑気なっ、と全員が心の中で思ったであろう。
二匹のハリガネムシが、這い出て暴れている。なんとも奇妙に這い暴れている。蠢き、暴れているのだった。そして、それは見ていて気分の良いものではない。
ハリガネムシが蟷螂の腹から完全に出る。
すると蟷螂は、出産した動物の様に衰弱していく。
その様子にこの場の全員が、こいつはもう死ぬと、標的をハリガネムシに切り替える。
「ぐっ!?」
エールは吹き飛ばされる。
突然のことだった、ハリガネムシが胴体で薙ぎ払って来たのだ。攻撃らしい攻撃ではなく、動き回っているだけであるため、予想外の攻撃を受けてしまう。
エールは何とか防御できたが、かなりの威力だ。
仲間達は集中を切らさない。
何とか無事なエールであったが、これは剣での攻撃は効果が無さそうな相手である。
「タロー!何かっ、弱点は!」
何か弱点は無いものか、エールは聞いてみることにした。
その質問に、少しの沈黙の後、タローは答える。
「知らない!」
これはまずい、そう思っていると今度はクロワがエールの元へ吹っ飛ばされる。
「ぐっ、はっ」
何とか受け身は取れたようだ。
しかし、クロワは見た目以上に傷ついており、かなり息が上がっている。
「大丈夫!?」
「いやぁ、全然、はっ、もう無理」
クロワのこれ以上の戦闘は危険そうだ。このままでは全滅だ。
「タロー!何か!何かこいつの情報を!」
エールは必死である。これ以上の戦闘は危ない。先程の蟷螂から続いた、連続の強敵との戦闘で、体力的にもかなり厳しい状況である。
「…こいつは普通、宿主から栄養を奪い、水中へ行くように操作する、そして脱出した後に、栄養は摂れないらしい…」
「…それじゃあ…」
「嘘みたいな話だけど、やることは決まったね」
タローは仲間達を見渡す。
「よし!逃げろ〜!」
エール達は逃げ出した。
刺激はしないよう、迂回して目的地に行くらしい。
(水中で蟷螂から脱出するのが目的なら、最初から戦う必要なんて無かったんじゃ………?)
何故戦うことになったのか、何故好戦的なのか、そんなことを考える。




