表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

第10話∶それもあり…

 

 ジャイアントを次々と撃退していると、いつの間に戦いは終わり、無数の死骸が転がっている。中にはまだ脚が動いているものもあり、これから動き出すのではないかと思わせる。


 戦いが終わったのはすっかり日が暮れた頃で、今ではゆっくりと食事を摂っている。

 今回の食事もなかなか豪勢なもので、見た者の食欲を掻き立てるであろうものばかりだ。

 どうやら翌日以降も依頼は続くようだ。そんなことも知らなかった為に、エールは心底しっかりしないと、と意気込んでいたが────


「エール!あっちのも美味しそうだよ!」

「あれ?今日の蟻、なんて名前だったっけ?モハメド?サンクチュ?あれ?」

「ジャイアントだよ?」

「くそっ…もっと冗談みたいな名前だったか………」

(うーん、ちょっと騒がしいかもな)


 ────周囲にその意気は届いておらず、浮ついた空気に、エールは馴染めなかったのであった。

 様子を伺いつつ、自分の考えを纏める為、エールはパンを片手に離席する。


 喧騒から離れ、静かな場所へと移動し、今日を振り返る。


(今日は死者無しか、このまま上手く終わるといいな)


 あれ程大規模な戦闘は予想していなかったが、死者が出ていないことに安堵し、この調子で終わることをエールは願う。


 エールは体を伸ばし、深呼吸をする。

 そうしているとゴソゴソと、物音が聞こえてくる。

 エールは何の音かと周囲を見回すと、どうやらその物音は、ジャイアントの死骸の山から音が聞こえる。


 日が落ちて、周囲は真っ暗である。

 どこまでが一匹なのかもわからない程、死骸の山は黒く、重なってあることしかわからない。


 エールは音の方へと、慎重に、一歩ずつ近寄る。

 エールは嫌な予感がしていた。しかし、ここで引き返したくはないと、エールは引き返せずにいた。


 ゆっくりと慎重に音が聞こえた場所へと移動し、死骸の山から数歩程離れた場所で、エールは目を凝らす。


(ここから………音が聞こえた?)


 物音は止んでいたが、何故だか目が離せない。

 エールはじっと、死骸の山を見つめる。


 しばらく時間が経ち、エールは理解した。


 これは………。


(…目が合ってるッ!?)


 物音の正体は、死骸に埋もれていたジャイアントの生き残りだった。しかし既に弱っていて、戦闘になっても勝つのは簡単そうだ。だが今、手元に武器は無い。


(さぁどうする…今、武器は無い、素手で勝てるか?)


 エールも、ボロボロのジャイアントも、お互いに様子を伺い、動けずにいる。


(…いや、そもそも戦う必要なんてあるのか?)


 緊迫したこの状況と、戦うことしか選択肢がないことに疑問を抱いたエールは、徐ろに持っていたパンを差し出し、一言。


「食べる?」


 伝わったのか、ジャイアントは死骸の山から這い出て、パンを顎で優しく挟む。

 そんなジャイアントの様子を、エールは何故だか愛らしく感じ、頭を撫でる。

 するとジャイアントは触角を伸ばし、優しく伸ばした腕に触れる。

 そうして、ささやかな和む時間をエールは過ごした。


 少し時間が経ち、伸ばした手をどけると、ジャイアントはじっとエールを見つめ、またねとでも言うような仕草をし、森へ帰っていく。

 ジャイアントはまさに蠢蠢と去って行った。

 それを見送り、元いた席へ戻ろうと振り返る。


「こんなのもありか………なんて…」


 自分の冗談に微笑み、何故かはわからない温かい気持ちが込み上げる。


「うわー!なんだか、戦いたくないな!」


 気持ちの切り替えも大事だなと、思いながら戻る。

 爽やかな笑顔を浮かべ、良い匂いが香る所へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ