第10話∶それもあり…
ジャイアントを次々と撃退していると、いつの間に戦いは終わり、無数の死骸が転がっている。中にはまだ脚が動いているものもあり、これから動き出すのではないかと思わせる。
戦いが終わったのはすっかり日が暮れた頃で、今ではゆっくりと食事を摂っている。
今回の食事もなかなか豪勢なもので、見た者の食欲を掻き立てるであろうものばかりだ。
どうやら翌日以降も依頼は続くようだ。そんなことも知らなかった為に、エールは心底しっかりしないと、と意気込んでいたが────
「エール!あっちのも美味しそうだよ!」
「あれ?今日の蟻、なんて名前だったっけ?モハメド?サンクチュ?あれ?」
「ジャイアントだよ?」
「くそっ…もっと冗談みたいな名前だったか………」
(うーん、ちょっと騒がしいかもな)
────周囲にその意気は届いておらず、浮ついた空気に、エールは馴染めなかったのであった。
様子を伺いつつ、自分の考えを纏める為、エールはパンを片手に離席する。
喧騒から離れ、静かな場所へと移動し、今日を振り返る。
(今日は死者無しか、このまま上手く終わるといいな)
あれ程大規模な戦闘は予想していなかったが、死者が出ていないことに安堵し、この調子で終わることをエールは願う。
エールは体を伸ばし、深呼吸をする。
そうしているとゴソゴソと、物音が聞こえてくる。
エールは何の音かと周囲を見回すと、どうやらその物音は、ジャイアントの死骸の山から音が聞こえる。
日が落ちて、周囲は真っ暗である。
どこまでが一匹なのかもわからない程、死骸の山は黒く、重なってあることしかわからない。
エールは音の方へと、慎重に、一歩ずつ近寄る。
エールは嫌な予感がしていた。しかし、ここで引き返したくはないと、エールは引き返せずにいた。
ゆっくりと慎重に音が聞こえた場所へと移動し、死骸の山から数歩程離れた場所で、エールは目を凝らす。
(ここから………音が聞こえた?)
物音は止んでいたが、何故だか目が離せない。
エールはじっと、死骸の山を見つめる。
しばらく時間が経ち、エールは理解した。
これは………。
(…目が合ってるッ!?)
物音の正体は、死骸に埋もれていたジャイアントの生き残りだった。しかし既に弱っていて、戦闘になっても勝つのは簡単そうだ。だが今、手元に武器は無い。
(さぁどうする…今、武器は無い、素手で勝てるか?)
エールも、ボロボロのジャイアントも、お互いに様子を伺い、動けずにいる。
(…いや、そもそも戦う必要なんてあるのか?)
緊迫したこの状況と、戦うことしか選択肢がないことに疑問を抱いたエールは、徐ろに持っていたパンを差し出し、一言。
「食べる?」
伝わったのか、ジャイアントは死骸の山から這い出て、パンを顎で優しく挟む。
そんなジャイアントの様子を、エールは何故だか愛らしく感じ、頭を撫でる。
するとジャイアントは触角を伸ばし、優しく伸ばした腕に触れる。
そうして、ささやかな和む時間をエールは過ごした。
少し時間が経ち、伸ばした手をどけると、ジャイアントはじっとエールを見つめ、またねとでも言うような仕草をし、森へ帰っていく。
ジャイアントはまさに蠢蠢と去って行った。
それを見送り、元いた席へ戻ろうと振り返る。
「こんなのもありか………なんて…」
自分の冗談に微笑み、何故かはわからない温かい気持ちが込み上げる。
「うわー!なんだか、戦いたくないな!」
気持ちの切り替えも大事だなと、思いながら戻る。
爽やかな笑顔を浮かべ、良い匂いが香る所へ。




