表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

寒い夜

作者: 秋葉竹



「古く止まった時をいま動かしたい」


そんなことを云って

破天荒な人生を

とてもかっこよく生きたひとは

そろそろ

「落陽」なんてうたを

歌いはじめても

よいかもしれないね

オレンジ色の人生の黄昏を

すこし眩しそうにそれでも

なんとかみようとしている

みたいな憂愁のひび割れた声で。



夜は

いつだって寒い


真夏だって

寒くしないとダメなんだ


夜は

いつだって

寒くなければ

ダメなんだ


夜はいつだって雨が降る

満月の夜だって雨が降る


夜は

雨が降らなければ

ダメなんだ


そして

凍えてなければ

ダメなんだ


そして小声で

震えながら

泣きだす人生を振り返り


そして

夜は


そして

暗く

黒く

寒い


吐く息はすき透りながらも艶っぽく


それが私の

心の自由さをあがきながら重くしてしまう

みたいだから嫌だ


夜に吐く息は

みえないあたたかさの色の

白っぽいしあわせなのがよいね


夜に

こそ

生きられる


私は

そこでしか

息ができないんだ


海のそことか

地のそことか

あるいは宇宙の最果てとか


夜になると

白桃を食べたくなるんだ


口の周りを

甘露でベタベタにして

しゃぶり尽くすすこしいやらしいくらい


くちびるでもいいから

夜の栄養になるものなら

悲しみでもいいから。



夜は

いつだって

寒い。



いつしょうぶんの

カレンダーを

ゆっくりと

めくりたいな。



その寒さに

震えながら。




「あたたかい息で凍った夜をあたためたい」


そんなことを云って

孤独な人生を

とてもしずかに生きたひとは

そろそろ

「寒い夜」なんてうたを

歌いはじめても

よいかもしれないね

暗い青色の宇宙の成り立ちを

すこし寂しそうにそれでも

なんとかさがそうとしている

みたいな鉛色の正しさよりも純な声で。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ