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夢シリーズ

TS美少女戦士おっぱいちゃん!

作者: レスト

 時は世紀末っぽい何か。たくさんのゾンビっぽい何かが群がって人々を襲っていた!

 ヤツらに追われて命からがら逃げていた俺は、ビル群の袋小路に追い詰められた。

 奥には病院っぽい施設が見える。あそこへ駆け込めば少しの間は助かるか。


「よし。あそこに逃げ込めば――って、ああああああーーーー!?」


 突然、病院っぽい何かにシャッターが下りて入れなくなってしまった!

 え、入棟拒否!? 入れてくれないの!?

 くっ仕方ない。引き返すしか。向こうにはまたゾンビっぽい何かが大量にいるが。

 って。


「うおあああああああ!? 引き返す方もシャッターが下りたあっ!?」


 気付けば俺、進むも引くもできずに行き止まりである。


「くっそ。完全に閉じ込められた……。周りにどこか逃げ道は……」


 見当たらない。

 そうこうしている間にも、壁やら何やらをよじ登ってヤツら、こっちに降りて来ようとしてるっぽいぞ。

 やばい。かなりピンチではないのかこれは。

 どうする。どうする!?

 焦っていると、脳内に何かのシステム音声チックなのが聞こえた。


 ――因子注入完了。ようこそ、新世界(ニューワールド)へ。


 突然、その場の地面に穴が開く。


「今度はなんだああああああーーーーーーー!?」


 細い金属パイプの中を転がり落ちていく。

 落下の衝撃で、俺は気を失ってしまった。



 ***



「う……」


 気付けば、固い寝台の上に寝かされていた。

 ぼんやり明けた視界に、いかにもな白髭じいさんとハンサムお兄さんが映る。


「博士」「うむ。いけたか」


 成功……? こいつら、何をしたんだ……?


 立ち上がって、状況説明を求めたいところだった。

 落としたのがこいつらだとしたら、文句の一つも言いたい。


「おい。俺、どうなって」

「君」

「そろそろ、始まるぞ」


 ハンサムお兄さんが、子供教育番組ばりのバカみたいに良い声でシュバババジェスチャーを始めた。


「さあ、オレと一緒に声を出し! ポーズを決めるんだ!」

「え、え!?」


 いきなりわけもわからないまま。

 だが湧き上がる衝動に、なぜだか俺も無性にそれがしたくてたまらなくなってきたのだった。


「その腕に力を!」「その腕に力を!」


 グイン! 正拳を突き出すと、漲る力が溢れ出す!


「その足に速さを!」「その足に速さを!」


 シュイン! 一歩ステップを踏み出すと、足が軽やかになり、ジェットブーツが装備される!


「その頭に美貌と叡智を!」「その頭に美貌と叡智を!」


 グイッ! 顔を上げると、頭が割れるようなやばい感じがして、顔そのものが一気にぐねった!

 よくわからないが、とてつもない変化が起きた!


「その胸におっぱい(希望)を!」「その胸におっぱい(希望)を!」


 ボンッ! 胸を反らすと、突然ダイナマイトのようにおっぱいが膨れ上がった!


「(な)にいっ!?」


 声もおかしい。俺、こんなに高かったか!?


「その股にアレ()を!」「その股にアレ()を!」


 キュッ! 腕をクロスすると、ナニかが失われ、すーっと女の子の花園が開いた!


「さあ、今こそ立ち上がれ!」


 謎のお兄さんのテンションが、最高潮に達する。

 俺は高鳴る胸の鼓動と、湧き上がるエナジーを魂の叫びに変えた!


「「TS美少女戦士、おっぱいちゃん!」」


 ドーン☆


 清らかなるソプラノ。高らかに突き上げられた右拳に、どこからか桜吹雪が舞い上がる。


「おお、素晴らしい……!」「やったな!」


「って、人のカラダに何してくれとんじゃああああーーーーーーーー!」


 BACKOOooooooN!


 星のエフェクトがきらめき、博士とお兄さんはギャグ漫画のようにぶっ飛ばされてしまった。

 ピクピクしているが、命に別状はないようだ。


 わ、パワーすっご。これから気を付けよ。


 ややあってふらふら起き上がってきた博士とお兄さんは、俺を見てめちゃくちゃ満足そうに頬を緩めていた。


「やりましたね。博士」「夢が叶ったわい」

「あのな。勝手に人のカラダ使って実験すんなよ」


 恨めしいほど自分の声が可愛かった。

 しかもこの溢れんばかりの力。尋常ではない。


「こんなことして、俺に何させたいわけ」

「よくぞ聞いてくれた!」


 お兄さんは、グッと親指を立てた。


「オレたちはもちろん人間だが!」「わしらにやったようにだな!」

「外にいる連中も、お前が一発殴ればすっかり元通りって寸法さ!」

「そのカラダと拳には、夢と希望が籠っているんじゃ! バシッとこう、かましたれい!」


 なるほど。

 ……ふっ。そこまで言われちゃ仕方ない。

 俺もさ。できることならこの塞ぎ込んだ状況、何とかしたいとは思ってたところだ。

 たださあ。あの名前で脳が完全認識しちゃってるのだけは何とかしてくれないものかね。

 だが哀しきかな、俺の口はもうその名を高らかに叫んでしまうのだった。


「TS美少女戦士おっぱいちゃん! いきます!」


 実に豊かなおっぱい(夢と希望)が弾ける。


 さあ、ゆくのだ! TS美少女戦士おっぱいちゃん! 世界を救え!

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