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異世界恋愛作品

復縁なんてすると思いますか? (ニッコリ

作者: 日之影ソラ
掲載日:2023/03/08

「オルトリア、君との関係も今日で終わりになる。婚約を、破棄させてもらうよ」

「――」


 あの日、いきなり告げられた言葉を、今でもハッキリと覚えている。

 元婚約者だったアルベルト様に、私は愛されていなかった。

 家同士が決めたことだから仕方がなくそうしていただけ。

 わかっていたことだ。

 予想はしていた。

 覚悟はしていた。

 けれど、悲しみが消えるわけじゃない。

 小さくとも確かな繋がりを失って、喪失感に苛まれた。


 だからこそ、許せないものもある。


「オルトリア、君とまた婚約者に戻りたいと思っているんだよ」

「……え?」


 それもまた、唐突に何の前触れもなく話をされた。

 私が宮廷と騎士団隊舎を繋ぐ廊下を、一人で歩いている時だった。

 名前を呼ばれて呼び止められ、振り返った先で彼は笑っていた。

 作り物の笑顔だ。


「何を……言っているんですか?」

「だから、縒りを戻そうと言っているんだよ」


 理解に苦しむ。

 本気でそう言っているところが特に。

 もう忘れてしまったのだろうか?

 あの日、彼から言ったんだ。


 私のことなんて愛していなかった。

 新しい婚約者は私の妹、セリカ・ブシーロだ。

 続けてセリカからは、ブシーロ家から私を追放するという話もされた。

 私は一人になり、平民になった。

 あの日、私は十八年間過ごした居場所を完全に失ったんだ。

 それなのに……。


「馬鹿げたことを言わないでください。アルベルト様の婚約者は、セリカのはずです」

「ああ、今のところはね? けど考え直したんだよ。やっぱり長年一緒にいた君のほうが、僕の婚約者にはいいんじゃないかって」

「何を……」

「それに、今の君はとても活躍しているじゃないか」


 アルベルト様はニヤリと笑みを浮かべる。

 この時点で察した。

 同じ理由だ。

 少し前に、セリカも私にブシーロ家へ戻る様にと言ってきた。

 その理由は単純だった。

 役立たずの邪魔者平民だと思っていた私が、王国の英雄であるフレン・レイバーン公爵騎士様が率いる特殊分隊、ヴァルハラの一員になったからだ。

 誰もが認め、憧れる騎士。

 貴族としての地位も、権威も他を超えるフレン様とお近づきになりたい。

 私はそのための餌に使われそうになっていた。

 アルベルト様も同じ考えなんだ。

 本当にこの人たちは……。


「権力しか見ていないんですね」


 呆れるほどに。


「おいおい、人聞きの悪いこと言わないでくれ。僕だって男だよ? まったく好みでもない女性を口説いたりしないさ。君はとても綺麗だよ」

「……」


 響かない。

 この人の言葉は何も。

 

「ごめんなさい。私にその気はありません」

「悲しいことを言わないでよ。君だって一人は寂しいだろう? 僕が一緒にいてあげるよ」

「必要ありません。私には――」

「俺がいるからな」

「――!」


 そろそろ来てくれると信じていた。

 私の帰りが遅いと、彼は心配になって様子を見に来てくれる。

 騎士団隊舎のほうから歩く音が響き、アルベルト様が驚きと共に振り返る。

 そこに立っていたのは、噂の英雄騎士様だ。


「レイバーン公爵!?」

「まったく、前も同じようなことがあったな」

「そうですね」


 彼はアルベルト様を無視して私のほうへと歩み寄り、彼は私に微笑みかける。


「大丈夫だったか?」

「はい。そろそろ戻ろうと思っていたところです」

「そうか。なら一緒にいこう」

「はい」


 私はフレン様と並んで歩き、アルベルト様の横を通り過ぎる。

 しかし彼が呼び止める。


「待ってくれ! まだ話は終わっていないよ」

「……なんだ? 何の話をしていたんだ?」

「個人的なお話ですよ、男女の……ね? 大切な話です。間に入って邪魔するなんて、いかにレイバーン公爵といえど失礼なのでは?」

「ふっ、失礼はどちらだ? 他人の婚約者を口説こうとした男がよく言うな」

「――は?」


 アルベルト様はキョトンと呆ける。

 知らないのも当然だろう。

 この話はまだ公にされていない。

 知っているのは当事者である私たちと、その場にいた元妹のセリカくらいだ。


「婚約者……? 誰が、誰の?」

「オルトリアは俺の婚約者だよ」

「なっ……」


 アルベルト様は目を丸くして、私の顔を見る。

 私はニコリと笑い、小さく頷く。


「そ、そんな……嘘はよくありませんね」

「嘘じゃないぞ? 公にすると周りがうるさいから黙っているだけで、もう正式な手続きも済ませてある。俺たちは正真正銘の婚約者だ」

「っ、……どういう趣味をしているのですか? 平民を婚約者にするなど」

「あんな提案をしたあなたが言うのか? アルベルト公爵」

「くっ……」


 今回も、フレン様は途中から話を聞いていたらしい。

 聞いたうえで、私が断ることを信じて待っていてくれたのだろう。

 その無言の信頼に、心が温かくなる。

 と同時に、アルベルト様の考えの浅はかさが露呈する。

 断られるとは思っていなかったのだろうか。

 無理に押せば通るとでも?

 あれだけ盛大に切り捨てておいて、よくも簡単に私の心を掴めると思ったものだ。

 呆れと同時に、少し腹立たしい。

 だから私は、精一杯の表情を作る。


「アルベルト様」

「オ、オルトリア?」


 こういう時こそ、この作り笑いはピッタリだ。

 こんな男に本物の笑顔を見せる必要はない。

 偽物には偽物で返そう。


「私はフレン様と一緒にいられて幸せなんです。だからもう、邪魔しないでください」

「っ……し、知らなかったんだ」

「そうですね。でも、仮に私がまだ一人でも、アルベルト様とやり直すなんて考えませんでした。私はあなたのことなんて、愛したことは一度もありませんから」

「――!」


 これはあの日の意趣返し。

 同じセリフを、アルベルト様は私に言い放った。

 だからお返しだ。

 実際、私は彼のことを好きだと思ったことは一度もないのだから。


「復縁なんて一瞬たりとも考えたことはありません。こうして会うまで忘れていたくらいです」

「オルトリア……」

「ですからさようなら。もう二度と……関わらないでくださいね」


 私たちは他人だ。

 最初から、これからも永遠に。

 互いの道が、心が交わることはないだろう。


「行こうか。オルトリア」

「はい」


 私はもう、心の安らげる居場所を見つけている。

 偽りなき場所に生きている。

 だからどうか邪魔をしないで。

 偽物はこれ以上……いらないから。


 最後まで私は笑顔を貫き通した。

 大恥をかいた彼は、生涯私の笑顔を忘れないだろう。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

楽しんで頂けましたか?


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― 新着の感想 ―
[一言] 因果応報ってありますよね…。 最後幸せになれてよかったです(*^^*)
[良い点] すかっとしました。 すてきな作品ありがとうございます。
[一言] 公爵の、当主の地位にいる人間がまだ結婚してないのか?しかも2家も? 公爵の妻になるなら、他の公爵家の当主と関わらないで済むと思ってるのか?最後のセリフは何を考えて放ったんだ?? この…
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